「正義、それは?」
「えーと」
「……あなたは無自覚だったのでしょうが、昔からさぞ魅力溢れる人であったのでしょうね」
「いや……そんなわけは」
「では、それは何と?」
「ええーと……」
発端は、ひろみから届いた一つの小包だった。
年末が一日一日と近づくこの師走、まとまった時間ができたので大掃除をしたら出てきたのだというものを押し付け——わざわざご丁寧に送ってくれたというわけだ。大半は子どもの手で書き写したらしい手書きのレシピだったり、よく分からない作品だったり。捨ててくれても構わなかったのにと思いながら取り出していったその中に、お菓子の缶が押し込まれていた。流石にこのだだくさに入れた中に食べ物はないだろうと思ったのだが、少なくともその缶には見覚えがない。中身は何だろうとぱくりと開いた中に入っていたのは、いくつもの封筒だった。
無地だったり、カラフルなものだったり、キャラクターがついていたり、なんだかやたらとキラキラしていたり。
一番上のものを手に取って、中の手紙を開いてみるとその頃流行りだったらしい小さな丸っこい文字が並んでいる。
まあ、いわゆる、そういうお手紙だ。
今読めば明らかにそうなのだが、あの頃の自分はそれを全くそのつもりでは受け取っていなくて。
何かを呻いた声が聞こえたのか、のしりと背中に何かが乗り上げた。
間を置かずに肩に置かれる形の良い顎。
頬をくすぐる柔らかな金の髪。
顔のすぐ横で自分のものではない長い睫毛がしぱりと上下するのが見える。
今更見られて困るものがあるでもないので、そのまま書かれていたものを何となく最後まで読んでしまったところにかかった声が冒頭。
「あの頃はラブレターなんて思ってなかったんだよな。書いてくれた相手には本当失礼な話なんだけど」
「これほど熱烈な文面を見て、当時のあなたが何を考えていたのかは非常に気になるところですが」
「ですが?」
「……」
こちらの肩に顎を乗せたままの上司様は、何とも言い難い雰囲気を発しながら口を噤んだようだった。目線が向いているのはお菓子ではなく手紙の詰まったスチール缶。先ほどの手紙をもう一度口を閉じてからその缶に戻して、そうだなあと考える。リチャードの顔がある方にわざと首を傾げれば、一緒にこてりと倒れる顔。
「なあ、リチャード。お願いがあるんだけど。年末の大祓いに付き合ってくれないか」
「……よろしいのですか」
「よろしいも何も」
流石にその辺には捨てられない、とそのまま笑ってみせればぐぐぐっと倒れた顔が起きる。今度は逆向きに倒されて、回された腕は腹の前。
「ならば、私からもお願いが」
「うん。どうぞ」
「今年のバースデーに、あなたからのラブレターを頂けませんか」
「え」
「そうしたら、とっておきのスイーツの缶に入れてしまっておくのです」
「……」
「いけませんか」
「喜んで!」
よろしい、と頷く顔を振り返ることはできなかったけれど。
銀色の缶の蓋の端、美しい天使が笑うのが見えた。