・現代パラレルくにちょぎ
・書道家くにひろ×会社員ちょぎ
・ちょうぎくんが過去にくにひろ以外のひととお付き合いしてます
・草稿書き出し誤字脱字気にしない未来のわたしががんばります
 待ち合わせ場所に現れた国広のすがたに、長義は幾ばくか目を見開いた。年齢は知っていた。だが、普段教室で会う国広は必ずといっていいほど和装だったため、年齢以上の落ち着いた印象がどうしても先立っていたのだ。現れた国広はフード付きのジャケットにカーキのパンツ。スポーツシューズに軽く××を掛けたカジュアルな服装だった。
 落ち着いた色合いでまとまっているので、そこはかとなく品がある。けれども、普段の彼からは想像できないほどの若々しい格好で現れた国広に、長義の心臓がとくりと高鳴った。
「すまん。待たせたか」
 腕時計から顔をあげ、国広は言った。
 駅の改札前。まばゆい金の髪が秋晴れの空に輝いていた。
「まさか。俺が楽しみで早く来すぎてただけだよ」
 寄りかかっていたポールから腰をあげ、長義が偽りなくそう言った。
 実際、約束の時間より10分も早い。
 楽しみにしていたのはどうやらお互いさまらしい。細やかに笑い合い、駅の改札をくぐった。
「普段と雰囲気がすこし違ったから驚いた」
 隣り合って電車のシートに揺られしばらくしたころ、国広がそう口を開いた。
 まったく同じ感想を抱いていたので、長義はすこし笑った。教室に行くときは自然とワイシャツやスラックスといったきっちりとした恰好が多かった。それはあの場所の雰囲気がそうさせるものでもあったし、年上の恋人との距離を物理的に縮めたいという背伸びしたここちも無意識のうちにあったのかもしれない。足元のスニーカーに落としていた視線を、隣の国広へと向ける。
「そういう先生こそ」悪戯に唇を吊り上げる。「見慣れない恰好だから驚いたよ」
 それに国広はぱちりと目を見開いた。
 見聞するように自分のすがたに目線を這わせる。
「おかしかったか?」
「ううん。似合ってる。いつも和服すがたばかり見ているから新鮮だったってだけだよ」
 そこではじめて国広は私服で長義と対峙するのが初めてだったと気づいたのだろう。どこかおかしそうに目を細めた。ガタン、と車体が大きく揺れ、国広の笑いを冗長したようだった。車体は雑木林のあいだへ滑り込んだ。片側から差し込む太陽のひかりが連なった窓からさしこみ、ふたりの足元を流れていった。
 奇妙な高揚感。けれども、付き合いたてのふたりが初デートに出掛けるのだから、それはむしろ自然なことだった。
 その行き先を遊園地をしたのはどうしてだったのだろう。
 提案したのは自分なのに、長義はそのことを不思議に思う。チケットを片手に遊園地のゲートをくぐる。
「遊園地なんて子どものとき以来だ」
 国広がそう言った。
「俺も久しぶりだな……5年……もっとか?」
 大学生の頃サークル仲間と行ったのが最後だったか、当時付き合っていた彼女と出掛けたのが最後だったか。記憶は曖昧だが、まあそれぐらいだろう。派手な遊園地ではない。地元の人間で賑わうようなこじんまりとした遊園地だった。おそらく地元の人間以外は名前も知らないだろうといった。それぐらいの規模の遊園地が、子ども時代を遠く感じ始める大人ふたりにはちょうどよいと思ったのだ。
 休日なので人は多い。案外賑わっているのだなあと意外に思ったと言ってもよい。国広も同じことを思っていたらしく、「結構しっかりしているんだな」なんて失礼な感想を述べている。長義は笑った。
「乗り物券を買おうよ」
「? これじゃないのか?」
 そういって、国広はチケットを揺らす。
「それは入園料。アトラクションはまた別料金なんだよ」
 国広は口元に手をあてて、思案顔になる。
「そういえばそんなシステムだったか」
 古い記憶を呼び起こしていたのだろう。
「そうそう。どれに乗る?」
 軽い調子で相槌をうち、長義がマップを広げる。かわいらしいきつねのマスコットキャラクターがいたるところにちりばめられた、ポップな色合いのマップだ。その色合いだけで、気分が高揚するような。
「絶叫系とか平気?」
「結構好きだ」
「ならよかった。挨拶がわりにコースターに乗ろう」
「挨拶?」
「遊園地に来たから……軽いジョブ的な?」
 国広の軽やかな笑いごえが青空に抜けた。
「あんたの発想はたまに物騒だな!」
 よく、恋を吊り橋効果なんていう例えがあるが、物理的な浮き沈みや高揚感といったものが心に与える影響はばかにできないと長義は考える。実際、ジェットコースターを乗り終えたころには気持ちは自然と弾んでいた。
「さっき、落ちるときに後ろに乗っていたやつ、思いきり叫んでたよな」
「正直、落ちるよりそいつの叫びごえのほうに驚いた」
「お前も?実は俺も」
「後半叫びごえが気になりすぎてアトラクションどころじゃなかったな」
「それならちょうどいい。リベンジだ」
 結局、そのあと
 
 
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