くにちょぎワンドロ遅刻をやります。
現パロ
いったん終了。
あとで諸々手直しします。
恋人と過ごすはずのクリスマスだった。
付き合い始めてから、はじめて迎えるクリスマスで、ふたりとも大層浮かれていた。
台無しにしたのは、たった一通の至急の仕事を知らせるメールだった。
疲れて棒のようになった足を引き摺り、長義はマンションのエントランスのロックを解除した。玄関には間接照明に照らされたスニーカーが一足。その奥に、まっくらな廊下がしんと続いていた。溜息を吐き、腕時計を見れば、午前の三時を指していた。タクシーを捕まえ、何とか家には帰ってこられたが、それだけだ。ツリーのイルミネーションも、甘いシャンメリーも、真っ赤なイチゴの乗ったショートケーキも0時を過ぎてしまえば何の意味もない。クリスマスの魔法は解けてしまうというのに。
リビングのドアを開ける。
暗い部屋の奥に、夜景の広がる大窓が見える。そこから見えるビルの明かりが今は忌々しい。荒々しく息を吐き、ネクタイを緩めて冷蔵庫を開ける。そこにはふたりで食べるはずだったケーキの箱が押し込められていた。ミネラルウォーターを嚥下し、何気なくキッチンを見渡せば、普段そこには無いはずの鍋が鎮座していた。おそらく、国広が今夜のために腕を振るってくれたであろう料理。
「……疲れた」
無意識に呟いたとたん、からだが重くなる。
空腹であるはずなのに食欲は湧かなかった。
寝室へ行くのも億劫で、コートも脱がずソファに倒れ込もうとしたところに、先客が居た。
「国広、」
そこには恋人である国広が、大きな身体を横たえて縮こまるようにして寝ていた。
――待っていてくれたのか。
その事実が、ささくれていた心をほんの少し和らげる。
ソファの前に膝をついて、じっと寝顔を見つめる。長い前髪の下で閉じられた両の眸。真っすぐに伸びた鼻筋に、うっすらと開いた唇からあえかな寝息が零れていた。
「……ばか。風邪ひくぞ」
毛布を取ってこようと、立ち上がる。
ふと、視界に入ったテーブルの上――蒼白い陰影のなかに、見慣れない楕円の包みが鎮座していた。なんだろうと、よくよく目を凝らしてみればそれはシュトレンだった。
いつぞやのデート。ふたりで交わした会話の中で登場したものだ。
(ふうん。詰まるところ、砂糖とドライフルーツの塊か)
あの日、あんなに雑に言い放った癖に。
久しぶりに食べたいと言った長義の言葉を覚えていてくれたのか。
寝室から持ってきた毛布を、起こさないようにそろりと国広に掛けた。そうしてもう一枚の毛布に包まり、長義は国広の隣に横たわった。窓から差し込む夜景のあかりに伸びる部屋の影をじっと見つめて耳を澄ませる。夜明けまで三時間。そうしたら、ふたりで過ぎ去ったクリスマスを後ろから無理やりハグしてやるのだ。