ワンドロ開始時間となりました。
お題:シルバーリング。
21時~22時までとなっています。
タグをつけてUPをよろしくお願いします。
タグ:#MH60分ワンドロワンライ
現在時刻21時15分 やや遅刻気味ですねえ
シルバーリング リング なぜかえっちなやつしか想像できない
いや まあ うーん
まつはぎお揃いのリングとかするのかな
「お揃い」というもの自体は 何となく 萩原が好きそうですが
お揃い おそろのリング
 昔、姉の持っているおもちゃのコンパクトミラーが、欲しくてたまらなかったことがある。
 本当に小さなころの話だ。姉がまだ少女らしくスカートをはき、お人形遊びなんて可愛らしいことをしていたころの話だ。祖母だかほかの親戚だったか、とにかく誰かが姉に贈ったピンク色のコンパクトミラー。別になんてことはない、ただの鏡に、萩原はなぜだか夢中になった。
「俺も欲しい」
「お姉ちゃんと同じのが欲しい」
 そう言って両親を困らせた。姉は『そんなに気に入ったなら研二にあげようか?』と子どもらしくなく言ってのけたが、それはそれで嫌だった。姉のものを奪いたいわけではない。むしろそのまま持っていてほしい。
「お姉ちゃんとお揃いがいい!」
 そう言った萩原は、多分、別に何でも良かったのだと思う。結局ミラーは買ってもらえず、だが後日、姉とお揃いのパジャマを買ってもらってご機嫌になった。そのうちに本当にミラーに飽きた姉が『あげる』と言ってミラーをくれたが、さほど興味が続かなかったので、やはり『お揃いがいい』だけだったのだ。
 中学生にもなって何故そんな昔のことを思い返すかというと、今、無性に欲しくてたまらないものがあるからだ。
「なあ陣平ちゃん、そのペンどこで買ったの」
「さあ。その辺のスーパーとか……覚えてねえよ」
「ふーん」
 放課後、日誌を書く松田の前の席に座り、萩原はその手に握られたシャーペンをじっと見つめた。何の変哲もない黒いシャーペンだ。芯の硬さはHB。強めの筆跡は一直線で乱れなく、綺麗な文字とは呼べないが不思議と整って見える。
 萩原は知っている。そのシャーペンは近所のスーパーでは売ってない。文房具屋でも売ってない。探して見つからなかったから聞いているのに、返って来た言葉は期待外れだ。
 内心の落胆は滲ませず、軽く頷いた萩原に松田は目線を向けた。
「シャーペンがどうした?」
「いや……俺も同じの欲しくてさ」
「同じの? なんで?」
「何でだろうなあ」
 不思議そうに尋ねる松田に笑顔を向ける。実際、特に理由はない。ただ、松田が握っているそのシャーペンが、同じものが無性に欲しいと思って、実際に探し回って、見つからなくて落胆している。そんなこと松田に言うつもりはないが、ふと『昔もこんなことあったな』と思い出したのだ。
「昔も姉ちゃんが持ってるおもちゃの鏡がやけに欲しかったことがあってさぁ……人が持ってるのと同じものが、やたらと欲しくなることってねぇか?」
「さあ。俺は別に」
「そうか」
 松田は少し眉を寄せ、考えるように自らが持っているペンを見た。指先でくるりと回し、再び握りこむ。何度か繰り返されるその軌道をつい目で追っていると、不意に松田がそれを萩原に差し出した。
「そんなに気に入ったんならやるよ。別にペンくらいほかにもあるし」
「え? いや、いいよ。それはお前のだろ」
「欲しいんだろ」
「そういう意味じゃねえって。ごめん、変なこと言って悪かった」
 松田のペンを奪いたいわけではない。椅子ごと身体を引いて拒否した萩原に、松田は不可解そうな顔をした。
「萩原?」
 その顔が急にぶれて、十歳ほど年を取って、重なって、遠い記憶の海に消えた。目の前に松田が立っている。就職して配属先の職場にも慣れ、そろそろ手狭な独身寮を出たいな……なんて言い始めた成人済の男が。中学生のころと変わらないまなざしで、不可解そうに萩原を見つめている。
 ふと我に返り、泡がついたままの皿を水につけた。洗い終えた皿を拭いては棚に戻す作業をしていた松田は、次の皿がなくなって手持ち無沙汰のようだ。すっかり止まっていた手を動かし、愛想笑いを浮かべる。
「どうした? 陣平ちゃん」
「どうしたじゃねえよ。何ぼーっとしてんだ」
「ちょっと考え事」
「ふーん?」
 差し出した皿を、松田は特に追求せず受け取った。二人分の食器なんてたかが知れている。最後にコップを洗って松田に渡し、萩原は手を拭いた。
 片づけを終え居間に戻ろうとしている松田を呼び止め、その手を掴む。
「萩原?」
 指を絡ませる。カチリと触れ合う音がする。互いの指に光るシルバーリングは、昔、無性に欲しかったものに似ている。
 就職してすぐひどい事件に巻き込まれ、入院生活を余儀なくされた萩原が、職場に完全復帰を果たしたのはつい先日のことだ。復帰祝いだと言って松田が差し出した指輪を、何を今さらと茶化す余裕なんかなかった。泣かなかっただけ褒めてほしい。そう思うくらいに嬉しかったのだ。
「陣平ちゃん」
 目を閉じる。昔から、同じものが欲しかった。誰から見ても『同じ』だと分かる、そんなしるしが欲しかった。特別に仲良しで、特別に想い合っていて、同じ気持ちを共有している、そんなしるしが。何も言わなくても分かるように。
 唇に触れた温度に嬉しくなって、ことさら強く、絡めた指を握りしめた。
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20210925MHワンドロワンライ_枕木音
初公開日: 2021年09月25日
最終更新日: 2021年09月25日
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