お風呂から上がって脱衣所の扇風機をつけて、その風を浴びつつ部屋着に腕を通して、私は深いため息をついた。
「…………暑い」
風呂で茹だった熱い体にぬるい風が吹き付けられて、それが吹き出す汗を乾かしてくれるが、内側の熱までは下げてくれなくて、結局風呂で流したばかりなのに汗だくになってしまう。
今日は、最低気温25度を超える熱帯夜である。
昼の厳しい日差しに暖められた空気が夕方に降った雨の湿気に絡め取られてまだ停滞していて、不愉快極まる。
まだ4月下旬のはずなのに、本当に春なのかと疑いたくなるその様に深くため息をついて、しばらく扇風機の風を浴びていた。
しかし、周りの不快な空気が去ってくれるわけでもなく、もう一度ため息をついて立ち上がって、そうだ、アイスを食べよう。と、京都にでも行くようなテンションでそう決めて、冷蔵庫まで軽い駆け足で向かって冷凍室を覗き込んだ。
が、
「アイス……無い……!!」
昼間に珍しく私の家の方で国士と宿題を片付けた時に2人でアイスを食べた覚えがあるが、まさかそれが最後だったとは……。
仕方ないと代わりに氷をグラスに入れて作り置きのお茶を飲んでみるも、完全にアイスの舌になってしまっていて、どうにも落ち着かない。
少しの間悩んで、悩んで、よし、と立ち上がって部屋着を脱いで、風呂に入る前に畳んだばかりの洗濯物から適当にTシャツと短パンを引っ張り出してそれに着替える。これも部屋着ではあるけど、まぁ、さっきの完全に寝巻き、みたいなものよりは外に出て行っても大丈夫だろう。
携帯と財布を小さなハンドバッグに押し込んで、アイスを求めて近所のコンビニへ向かうべく家を出た。
火照った体がコンビニのひんやりとした空気にさらされて気持ちがいい。
入ってすぐに真横のアイスコーナーに目を向けた私は、そこに陳列された様々なアイスを見て、どれにしよう、と腕を組んだ。
箱アイスは取り敢えず買っておくとして、今買ってすぐ食べる予定のアイスはどうしようかな。
なーにーにーしーよーうーかーなー
と指を動かして考えていると、このコンビニ独特の軽快な入店音が聞こえて、なんとなくそちらに目をやって、ちょうど入ってきてたまたまこちらを向いていた人物とばちりと目があった。
「(欲になんか負けるんじゃなかった…!!!)」
目が合ったのは、今日は残業で少し遅くなる、と国士相手に連絡が入っていたまさにその残業帰りであろう古今だ。
少し疲れたような顔をしていた彼は私が誰なのか認識してすぐに眉根を寄せて、こちらへ向かってくる。
対する私は想定外の出来事に逃げる事もできずに目の前に立った古今相手に小さくなるばかりで。
「可憐、」
「はい……」
「おれが何を言いたいかわかるか?」
「これから怒られるんだろうなってことは分かります……」
小さくなった私が思わず敬語で返すと、古今は小さく息を吐いて違う、と言う。
「怒っているんじゃない、心配しているんだ、こんな夜にそんな格好で1人で出かけてはダメだ。せめて海内か国士に連絡を取って一緒に行くとかだな」
「近いし、これぐらいならいいかなって……」
「良くない。次からは本当に気をつけてくれ」