煙の匂いがする。スマホを握る手が汗ばんでいるのを感じる。胸に、喉の奥に、何か詰まっているように感じる。今は一時二十分である。
 べつに何をしようと思ってここにいる訳でもなく、なんとなく思い出して、これ、テキストライブってのをね、あるとね、思い出してね、やっている。夜中の真っ暗な部屋で、布団に横たわり、厚手の布団をかぶり、スマホを両手で持ち上げて入力している。左手の小指にかかる負荷が高そうな、そんな姿勢である。
 明日になるのが嫌でここにいる気もする。早く、早く早く早く、五千兆円。五千兆円さえあれば全てなんとかなるのに、そういう気持ちである。しかし、五千兆円。日本の国家予算が五百兆円らしくて(チャットGPTの回答なので当てにならない)、なので、五千兆円もあれば日本を数年は養えるのだと思ってチャットGPTに聞いたところ、それはダメなんだそうだ。なんか経済のバランスが崩れんねんて。まあ銀行が金刷りまくったら貨幣価値下がるみたいな、そんなもんか。
 しかし、君、五千兆円ですよ。なあに、なにかを計算して、これこれ、こういうことをするのに必要な金額が五千兆円とかそういうことをした訳ではない、単純に私は私のやりたいことを自由にするために十分な金が欲しくて五千兆と言っているのだ。金でなくても良いのだが、金はなんかなんでも交換できる切符で簡単なもので一円のうちの一円の価値と、五千兆のうちの一円の価値が変わらない、そういうやつだからわかりやすくて良いので五千兆円と言っている。ドルでもいい。とにかくね、理想を言えば自由にやりたいことをやる、だ。そうでなくても、口を糊するのに苦労する、口を糊するために、私の時間を切り売りする。生活を、健康を、尊厳を、精神を、削る。私の一番新鮮な時間と感性を捧げ得る日々の食卓、貧しい暮らし。そういうのは嫌なのだ(しかし、考えれば生き物はみなそれをやっている訳で贅沢な願いだね)
 今日、帰りに昔バイトしていたスーパーのレジのパートの人をみたよ。働いていた時は綺麗なおばさんと思っていたのに、なんだかすっかり老けていて、痩せている人は老けるとなんとも悲しい様相になるものだと思ったりした。テキパキ働き、ピリピリしていた。なんかシフト表とかを事務室で作っていた。当人は、一日に十一時間とかシフトに入ってたりした。「だれか、私に休みをください!」と貼られたシフト表に書いてあった。スーパーのレジに居た、私よりもずっとテキパキ働いていた大学生と主婦の人たち。特に主婦の人たちは、私より長時間を安い給料でテキパキ働いてるんだろうなと思う。「だれか、私に休みをください!」と言っていた綺麗なおばさん。ああ、すごい。みんなすごい。私はそんな悲鳴と真面目さから逸脱したい。
 なので五千兆円が欲しいのだ。みんな、みんな、すごい。渦を巻くような、真面目な人の、悲鳴があちこちにあるのだろう。私だって真面目ではあるが、私はしかし私の逸脱を願っている。
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