「なにをするの?」
「なにをしようか」
小説を読みました。
小説を、一本読みました。小説を一冊、最初から最後まで。ちゃんと読めました。ところが、その本がつまらなかった、という話。
つまらなかったのに、ちゃんと、最後まで読めてしまいました、という話。
つまらない小説に当たってしまったとき、私の場合は最後まで完走できないことがほとんどです。読んでいる途中で「ああ、もう、これはだめだ」となり、もうそれ以上読むことができない。無理やり読もうとしても、何も頭に入ってこなくなってしまう。ごくわずかな例外を除いて。
その例外が昨日読んだ本でした。ちゃんと最後まで読めたのに、振り返ってみるとびっくりするほどつまらない。このパターンは、正直なところ初めてでした。
……ということを昨夜青い鳥に向かって呟いたところ、「読ませる力」はあっても、合う作品ではなかったのではないかとの助言を頂きました。「面白さ」とは、別の力。いったい何なのでしょうか。
そのへんのことを、今日はぐだぐだ書いていきます。
そもそも面白い小説って何なのでしょう。「そんなの、個人の好み次第じゃないの」というのが私の主張です。つまるところ、好きか嫌いか、合うか合わないか。では私の場合、どんな要素をもって、合う、合わないが決まっているのか。
好きな作品を挙げて、そのなかの好きな要素を抽出する、という方法で考えてみます。
中島敦氏の名作。これはもう文体がひたすら好き。テキストとして「ここはしっくりこない」とか「ここはちょっとよくわからない」といったネガティブな感情を抱く部分が一切存在しない。私にとって「名文」という形容が最もあてはまる小説。
たとえばこれと同じストーリーを他の作者が書いたとしても、こんなに好きにはなれないでしょう。
森絵都氏の短編。これは読後感が一番好き。とても読みやすいのも高評価点。キャラクターも好きだしストーリーも……おやあこれは全肯定だぞ。
強いて一点に絞るとすればやはり読後感でしょうか。心がぽかぽかするんです。
主上こと小野不由美氏の傑作ファンタジーシリーズ、の一篇。これはストーリーと、長編シリーズ物ならではの他のエピソードとの絡み方とか、あとは世界観でしょうか。
緻密に作り上げられた世界。そのものが好き。なのだと思う。だから、その世界に生きているキャラクターのことも、彼らの紡ぐストーリーも好きになれる。きっと。
ここからWeb小説のターン
小日向冬子氏の完結済み長編作品。小説家になろうにて掲載中。激推し。最推し。
……どこが好きかって考えると難しいな。でも最初に読んだ時は夢中になって最後まで一気読みしてしまった。そういう意味では、読ませる力が強い作品だった、のかも。
あえて一点に絞るなら、主人公、かもしれない。ちょっと言語化できない。
マイソフ氏のWeb架空戦記の傑作。これはもうストーリー一点。はじめて29話を読んだ時、すべての感情が主人公のおっちゃんとシンクロしました。また、これこそが史実ネタのIFを扱うフィクションの真の醍醐味だったのだな、と感激しました。あの感動は今でもはっきりと覚えています。
異世界に来たけど至って普通に喫茶店とかやってますが何か問題でも?
風見ろ……風見鶏氏が理想郷で連載していた作品。わが青春。この作品に関してはもう全肯定するしかないかも。
ティセのエピソードが好きでした。ストーリーも、キャラクターも、どちらも。文体が好みであることも間違いありません。オチのタイトル回収と、やっぱりヒロインの魅力、かなぁ。
文体、読後感、世界観、キャラクター……これは世界観とセットかも。あとはシナリオ上のどんでん返し? なにわの総統一代記についてはそう呼んでもいいかもしれない。ハッとするようなストーリー上の「しかけ」。あとは、主要人物の魅力、かな。
これらの要素について、それぞれ昨日読んだ作品にあてはめて考えてみる。なお批判的な内容になってしまうと思われるため、作品の内容や作品名については明言を避けたい。
あまり魅力を感じなかった。読んでいるだけで楽しい、と思えるレベルではなかった。
そういえば二次創作ではありますが「紐糸日記」はそういう「読んでいるだけで楽しい」の極致みたいな作品だったな。ほぼ会話だけだったけど。
もにょった。盛大に。結局この話は何だったんだろう、という煮え切らない感情が残っていた。読後にすぐにAmazonのレビューを読みに行って、そこに自分が求めている答えがないか探した。
気分の良い読後感、読書体験を得られる作品ではなかった。
現代日本が舞台。独特な世界観……では、無いように思える。灰色だった。主人公の一人称視点で進む話だったけれど、彼の目を通してみる世界はあまり魅力的ではなかった。美しくなかった。
世界観には、残念だけれど惹かれる部分はなかった。
これが一番嫌いだったかもしれない。オチまで読んだ時に、「これは本当に必要な話だったのか?」という疑念が湧いてしまった。
小説のストーリーの魅力というのは、問題解決の快感にある、という話を以前どこかで見たことがある。物語がはじまる時点で存在していた問題が解決されること。水道管のつまりが開所される爽快感。そういった快感に欠けていた。
もちろん、作品の前後で何も解決していないが、そのうえで魅力的だと思える作品もあるのだけれど、今回読んだものはそうではなかった。
ずっとイライラしていたかもしれない。魅力がある主人公ではなかったし、彼とよく絡む他の主要人物についても、どこか不気味さを漂わせていた。それに何より、けっきょく彼らが何をしたかったのかがわからなかった。
特に主人公については、最後に溜まっていた欲求を発散できてスッキリしただけなのではないかと。深みを感じなかった。
こうして並べてみるとびっくりするほど好きな部分が無い。どうして途中で切らなかったのか不思議なくらい。
キャラクターも、シナリオも、文体も全部ダメ。これでよく最後まで読めたな俺。
……逆に要素を絞らないで、ちょっとでも好きな場所があったか探してみましょうか。
ちょっと読み返してきます。ざーっと。
数少ない高評価点。全体を通してのストーリーはまったく魅力を感じないけれど、シーンひとつひとつを切り出してみると、それほど嫌いではない。心理描写や話のテンポは自分に合っているのかもしれない。
ごく一部を切り出して掌編として構成されていたら……もしかすると、好きと言えたのかも。
もっとも、そうではないシーンも当然ある。そっちの方が多かったから問題なのだけれど……退屈になってきたところで、退屈でない展開をたまに挟まれるから、なんだかんだ言いつつも最後まで読めてしまった、のかも。
嫌いじゃなかった人物が一人いる。むしろ好きだったかもしれない。感情移入できてしまう程度には。
残念だったのは、そのキャラクターを主人公が嫌っていたことでした。そのおかげで、読んでいる途中でどうしても主人公とシンクロできなかった。そのせいで、没入感を得ることができなかった。
私が好きになった彼は、共感すべき相手ではなかった。……読み方を間違えていた、ということなのかもしれません。
こうして並べてみると、見事に好きな部分が少ない。というか、これは明確に「嫌い」と言い切って良いレベルに思えてきます。
ここではっきり言っておくべきなのかもしれません。
なら、どうして最後まで読めてしまったのか。
嫌いな中で、好きになることができた数少ないキャラクター。彼を見捨てることができなかったのかもしれません。
ごく一部の好きなシーンも、やはり彼が絡んでいる部分でしたから。
彼は物語を通して登場し続けるキャラクターではありませんでした。ストーリーの途中で登場し、たまに姿を消しながら、断続的に最後の直前まで関わる、そんな立場でした。
これは合わないな、と感じつつも、切り捨ててしまうのは忍びなかった。そういうことだったのかもしれません。
さて、こうして考えてみると、僕はキャラクターに焦点を当てて小説を楽しむタイプの人間だったのではないか、と思えてきます。最初に挙げた六作品についても、名人伝以外は、登場人物に対して強く感情移入していました。
「読者を作品世界にぐっと引き込むキャラクター」がいたから、僕はきっと、合わないなぁと思いつつも、小説を最後まで読めてしまったのでしょう。
あとは文体については、はっきりと「合わない」と感じるレベルでなければ、なんとなく読めてしまえるようです。ダメなときはダメなんですけどね。
気付けば70分以上たっていました。時刻の方も、もう六時です。今日はこのへんで終わりにしたいと思います。
久々にテキストライブでハートやらコメントやら頂けて、とても嬉しくなりました。
ありがとうございました。またいつか。