暗い空に黒煙が立ち上って消えていく。大地には戦火が轟々と拡がり、至る所から銃声と叫びが響いていた。
 その戦場の最前線にエスティニアンは立っていた。敵将と相対していた相棒である冒険者が、突如頭を抱えて倒れたからだ。迫る凶刃から彼女を守り魔槍の矛を向ければ、敵将はそのまま退いていった。恐らく、遠からずにこの戦場は膠着状態に入るだろう。
 周囲に敵の気配が無い事を確認したエスティニアンは、気を失った冒険者の元へ駆け寄った。口元に手をかざすと、僅かではあるが呼吸を感じ取れた。しかし表情が酷く険しい。あまり芳しくない事は直ぐに分かった。小脇に抱えようと彼女の腹に手を回す。しかし躊躇うように一瞬、動きが止まった。触れた体があまりにも細かったからだ。障らないように静かに持ち上げれば、その軽さに再び動きが止まる。
 エスティニアンは、『女だから』『子供だから』と冒険者を侮った事は無かった。彼女の実力も踏んできた場数も本物で、同じ武人として敬意を示すに値するものだからだ。それはこれから先も変わらない。しかし、こうして触れて初めて――改めて、実感してしまった。
 どれだけ武勇を誇ろうと、どれだけ気丈に振舞おうと、どれだけ周囲が英雄と持て囃そうと、自らが相棒と呼ぶ彼女はまだ大人にもなり切れていない一人の少女なのだ。
 槍を地面に突き刺し、腕に座らせるようにそっと抱え直す。そこで初めて、まだ彼女が武器を手放していない事に気が付いた。力なく垂れ下がった腕の先にどれだけの力を込めているのか、厚手のグローブには血が黒く滲んでいた。どんな思いでこの戦場を一人で駆けてきたのか。エスティニアンの眉間に僅かに皺が寄る。空いた手で握り拳を解くように柔くさする。暫くそうしていれば漸く武器から手を離した。柄が赤黒く汚れたそれを鞘に戻す。
 呼吸は戻ったようだが未だに顔色が悪い。どこかで安静にさせた方がいい。そう考え、古い友人の顔を思い出す。
 エスティニアンは冒険者の頭が自らの肩口に乗るように手を添えると、槍を手に取り高く跳び上がった。
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2021/07/08 エス光
初公開日: 2021年07月08日
最終更新日: 2021年07月09日
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コメント
パッチ4.5のバレが含まれます。ギムリトの話。三人称で進めばいいな
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