お題、入り江 黄泉の国、ポケット です。
冥界にもいろんな地形が存在します。そしてそこがどんな地形でも死者を冥界へと舟で渡す渡し守というものがおりました。そんな冥界のとある入り江でのお話です。本日の冥界の天気は、光を喰らい尽くした漆黒の闇の空から、おびただしい量の死者の魂が冥界の海に向かって降ってきています。渡し守はポケットの中から取り出した懐中時計で時間を確認すると、大型漁船――船尾に底引き網を装備ーーで死者の魂をすくっていきます。一網打尽した死者は全員さっさと牢屋にぶち込まねばなりませんが、そういえば前回冥王様が檻扱いできるように魔法をかけてくださったので、今回は漁船を冥界の入り江に繋いでおきます。冥王様とお妃様はちょっと野暮用で外出中なのです。本来なら、死者の魂は冥王様に天国便か地獄に定期ドナドナ便か決まる裁判をなされます。しかし昨今、転生者になる志望の自殺願望者が続出しているため、自殺者があとを絶ちません。転生希望ということは、現世に絶望しているということです。冥界も毎日転生希望だったのに転生先にお祈り文を突きつけられて帰還してしまった哀れすぎる死者の魂の処遇に困っておりました。ということで、1日のうち裁判ではなく現世に向かい、転生失敗してしまう人間の自殺を邪魔する時間、ゼロ次面接が設けられました。冥王様はどちらかいえば圧迫面接をしそうな厳しいお顔をされておりますが、相手の生き様を見ることができますので、詳細に現世での向いている職業候補をいくつか提案して応援なさっております。無表情で、無愛想に見えますが、面接に来る人間のことを心底心配なさっています。そしてそのころお妃様はというと、転生を勧める極悪非道な輩やそういう者たちを蔓延させている国の腐った部分にメスを入れてはでてきた輩たちをひたすら闇討ちして冥界送りにしています。先程空から降ってきた死者はお妃様に倒された者たちの魂です。渡し守のわたしは願わずにはいられません、どうか生まれた命が健やかで一生を全うできることを。