手渡された白い布には、温かな双子が包まれていた。生まれて間もない人間の双子。髪は絹糸のように柔らかく、光るように白かった。
「それらを死なせぬようにしなさい」
 私に言い渡された使命はただそれだけ。毎度、言い渡されたことを忠実にこなしていたが、今回の命はいささか困難なように思えたが、意義を唱えられるような立場ではなかった。
「少なくとも食事は必要でしょうね」
 聞く者はいないはずだが、同じ空間に小さな生き物がいるというだけで、なぜだか言葉が滑り落ちた。言語教育に必要だからだろう。そう意味を後付けて。
 猫の子、犬の子、鼠の子。それらの世話をしたことはあったが、人の子の世話は初めてだった。全て手探りでというわけにはいかない。試行錯誤しているうちに死んでしまっては使命が果たせないからだ。
 殺風景な部屋だが、書物は十分にあった。人の子の世話の仕方がまとまっているであろう表題の本を手に取る。わからない用語が出てくれば関連書物を調べる。そして実践する。そして失敗する。別の書物を調べる。そして実践する。今度は笑った。腹がいっぱいになった双子はよく眠った。すぐ起きた。また食事を要求し、眠った。
 そして、部屋が手狭になる程度には大きく育った。背丈は私の半分を越えた。本に書かれている十歳児の適切な身長からは3mmほど小さいが、驚くほど順調に育った。
「ママ見て。窓の外!」
 双子の腕が通る程度に空いた穴は上下に広く、青い空の果てまでも映していた。双子の言う通りに窓の外を見れば、珍しく鳥が飛んでいた。
「わたしたちも、手をいっぱい広げたら飛べるかな?」
「飛べません。鳥には飛行するための翼と軽量化された──」
「冗談だよ~。ママは本当に冗談が通じないんだから~」
「……今まで、冗談が必要とされた場面はありませんでしたので」
 なにが面白いのか、双子はけらけらと笑いながら、いつものように私の胴周りに抱きつく。
「いつになったら外に出られるの?」
「命が下ったらです」
「いつ?」
「わかりません」
 昨日とも、一昨日とも同じ会話。だがいつからか、この会話が毎日──この先ずっとの毎日──続けばいいのにと思い始めていました。
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即興小説30分
お題:穢された使命
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【書く前】
かっこいいお題だ。やった。でもたぶんこれもハッピーエンドではない。
使命:①使いとして命ぜられた用向き。使いの役目
   ②使者
   ③自分に課せられた任務。天職。
ひっくり返り系?光り輝く都と暗闇の街と。
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【書いた後】
〝私〟も人間で、鋼鉄のメイドみたいに呼ばれていただけの人のイメージ。逆に双子は大魔法の使える人造人間とかで、十分育ったと判断された日に連れて行かれるはずだったんだけど、道中〝私〟が命に背いて逃走を図る……お話になる予定だった。
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【即興】揺らぐ白 2021-02-23
初公開日: 2021年02月23日
最終更新日: 2021年02月23日
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即興小説30分
お題:穢された使命