件数:98(30) 死亡:0(0) 負傷:81(26)
 うららかな春の日より。日の出と共に立て看板の数字を書き換え、丸帽子を頭にのせた女はため息をついた。
「なんでみんな我慢できないかなぁ……」
 書かれた数字は、昨日報告された事故の件数とそれによる被害者の数だった。それも狩人限定の。
 丸帽子の女は狩人に仕事を斡旋する協会のひとつである、中央狩人協会の事務員だ。周辺の森や海や川や谷や山に生息する獰猛な獣たちを狩ることを生業とする、これまた獰猛な狩人たちに適切な依頼を振り分けるのが彼女の仕事であった。
 技倆の異なる狩人たちに、大きな怪我を負わせず、死亡させないギリギリのラインを見極めて依頼を振り分けるのだが、現場ではイレギュラーがつきもの。協会の大きな建物の前に掲げられる数字が完全にゼロになることはあり得ない。とはいえ、ここ最近その数値は見過ごせぬほどに増えていた。特に括弧書きの中の数字。〝ぷにぷに〟接触事故による負傷者の数である。
 〝ぷにぷに〟とは、最近寒冷な山岳地帯で発見された陸のクラゲのような生物だ。生物と言っていいのか怪しいほど、その動きから意思のようなものは感じられないが、数少ない牧草を食べ、じりじりと移動していることから、生命活動はたしかにおこなわれている。動きはゆっくり。みずから人間を襲うようなことはない。となれば、危険はあまりないように思われるが、厄介なことに海に浮かぶクラゲと同様に毒を持っているのだ。
 うっかり接触してしまった家畜の被害は見過ごせず、〝ぷにぷに〟の駆除依頼にも分け隔て無く狩人は回される。狩人となって間もない者でも問題なく討伐はできるのだが……。
「死んだ後も毒が残るから触るなって、何度言ったら……」
 討伐後の〝ぷにぷに〟の身体にダイブする者が続出しているのだ。中には確信犯もおり、ちょっと毒で痺れてもいいからこのぷにぷにした感触に埋もれたいという叫びを聞いたという報告もある。何度注意喚起を行なっても事故件数は減らず、解毒薬は減り、むしろ事故件数は増えてすらいる。
 どうしたらこの被害を止められるのか。難しい顔をして、眉と眉の間に深い皺を刻む彼女の背後から、ぬっと顔が飛び出した。
「なんかさ、もういっそのこと無毒化した家畜〝ぷにぷに〟でも造っちゃえばいいんじゃないの?」
 彼女が振り返った先には、マッドサイエンティストと名高い眼鏡が立っていた。
「そうか! それで思う存分〝ぷにぷに〟を味わえば、野生の〝ぷにぷに〟に興味をしめさなくなる!」
 そんな彼女の研究の甲斐あって、無毒化された〝人間をダメにするぷにぷに〟が大陸に広く流通することとなったという。
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即興小説30分
お題:安全なぷにぷに
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【書く前】
安全なぷにぷにってなんや
安全じゃ無いぷにぷにがあるのか。ぷにぷにしてるってことは安全そうなのに? ぷにぷににとって安全? ぷにぷに保護協会?
実はぷにぷには猛毒を持っている? けど、ぷにぷにのぷにぷにに魅了されて触る者が後を絶たないとか? やばいなんかじんましん出てきた。猛毒のぷにぷにとか想像したからか??
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【書いた後】
いいな……人間をダメにするぷにぷに欲しいな……。餌は野菜などで一日一回の霧吹きでいつでもぷにぷにぷるぷるの椅子が手に入るみたいな。
世界観的にはあんまり面白みがないからそこは改善点。わりと珍妙系のお題が出たときはいかにも既存っぽい世界観でなんか内容だけ捻ったような中身になりやすい気がする。新しい世界生み出すのに注力するか、話として成り立たせるのに注力するか悩むところだけど、ネタ出しだからできる限り世界自体新しいのにしたい
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