暗く深く、どこまでも続く階層の最深部。
何者も入れない、落ち着いた空間に居た。
静かで何者も邪魔をしない。気持ちの良い空間だ。
ユサユサ、ユサユサ
何度も何度も身体が左右に振られる。
ユサユサ、ユサユサ
嫌だ。嫌だ。まだ寝ていたい。
奥底で暗闇と一体化していたのに、形を意識しなくてはならなくなる。
音が出るから耳が機能しだす。
まだ、深く眠っていたい。嫌だ、目覚めが迎えに来る。
ズリズリ、ズリズリ、ユサユサ
物質を掻き出している。運ばれて移動している。
空間で小刻みにステップを踏んでいる。
落ちるような浮遊感も感じていた気がする。
左右に振られる。暗がりの中で左右に振られる。
前へ、前へと移動するのを感じる。
前へ、前へ。前へ進まなくちゃならない。
そう、そうだった。前に進まなくてはならない。
進みたい。進みたいんだ。何としても掴むのだ。
何を掴むんだ。思い出せない。けれど掴むのだ。
ユサユサ、ユサユサ
前へ、前へ。
ユサユサ、ユサユサ
今度は上へ上へと押し出されるように進んでいく。上へ上へ。
ユサユサ、ユサユサ
上へ。上へ。
ユサユサ、ユサユサ
上へと永遠に押し出される。
永遠に、永遠に。しばらくすると振動が止む。
プシュー
隙間から光が漏れた。眩しい。
プシュー__ガチャ
音と共にカプセルのような蓋が空いた。
白色が目を覆った。眩しい。白い光を感じた。目が慣れてくる。
土まみれのカプセルの中から外を覗く。
青と白と灰色。
巨大な空間を感じた。
白い。白く横に長い円筒のもの。
赤色土から巨大な白い構造物が生えている。それも何本も生えている。
何でこんなに生えているんだろう。
その円筒に沿って上へと視線を伸ばしてみる。
そびえ立っている。高く白い塔。
上を見上げると首が痛くなるくらい高い。先が見えない。
そんな巨大な塔が、地面から何本もそびえ立っている。
空が少ししか見えない。
まるで小人になって、草むらのを見上げているかのような気分になる。
「ここはどこなんだろう。」
じっと突っ立ってみた。しっくりこないので体育座りをしてみる。
それも何か違う気がしてきて、仰向けに寝転がり微かに見える空を眺めてみた。
「いや、これじゃ分からないや。」
視線を下げて塔を眺めてみる。巨大な白い塔。
よく見ると近くに立っている塔には、上へ登るための足場が用意されている。
その先には穴ぼこが出来ていた。
「登ろう。あれなら僕でも登れる。」
立ち上がって塔の下へと歩いていき、足をかける。
その時、ふと後ろ髪を引かれる気がした。
後ろを振り向くと、巨大な白色壁が見下ろしていた。
その下にポツンと自分が入っていたカプセルが置いてある。
「置いていかないで」
そんな風に言われた気がする。何か、何か大事なことを忘れている。
けれど思い出せない。先に進む以外の選択肢しか見えてこない。
「また戻ってくるかもしれない。」
そう言って、気を取り直して足を動かし、塔の穴ぼこへ到着した。
もう一度振り返り、今度は巨大な白壁を見上げてみた。
白壁は視界に見える限り、ずっと横に長く伸びていた。
やっぱり切なくなった。
頭をフルフルと振り、気を取り直して塔の中を覗き込む。
「これじゃまだ帰れない。」
帰れないってどこにだろう。ふと口に出した言葉に疑問を抱く。