頭上には岩のような重々しい顎を持った捕食怪物が鎮座していた。空高く見上げる。山を連想させるドラゴン。黒い光が反射する赤黒い鎧を纏い、爬虫類特有のギロギロとした黄色い瞳は、私を見つけた。口から火の粉が飛び散ったのも束の間で、豪炎を吐き出した。逃げる暇もないままに、灼熱の炎に包まれた私の身体は、生命維持に必要な細胞群が溶かされてしまい、最期には水分が飛んで炭へと変化していく。熱さは一瞬で、意識が途切れるのも一瞬だった。
「……と、ドラゴンは自然の驚異の象徴である。もっと言うならば災害である。
火山が噴火し、土石流が流れてくる様を見て、恐竜の骨を見て、この世界にはドラゴンが居ると本気で信じていたわけだ。いやー滑稽だね。本当に滑稽だ。そんなの居なってのにねえ。そうは思わない?山岸君さー」
「まー、いいんじゃない。その方が燃えるじゃん。」
そう答えるのは、黒いバンダナを付けた金髪の女性、由香である。撥水性のあるシャツとパンツを身に着けて動きやすい格好をして、背もたれ付きの椅子に胡座をかいている。由香の視線の先には、黄色いフードを被った灰色髪の山岸が、ぼけーっと寝転がっている。頭の後ろで腕を組んで枕にし、窓の外に見える木々が風に撫でられている様子を見ている。
そこに温かいミルクを持った紫髪のロングスカートの女性が、話を繋げる。
「昔の人の想像力は参考になるのよ。私達とは遺伝子的にも大差は無いはずだし、もし思考調整を受けてなかったら、あなたも同じ結論に至っているはずよ。」
由香は答える。
「知ってますよー。東雲先生〜。人間はよく分からない脅威を予想以上に恐がるからだよねー。だから、何でも良いから理由を付けてスッキリしたがる。」
山岸がそれに反応する。寝転がったままで窓から視線は離さずに言う。
「それなんだよなーー。そのミスリーディングってやつを利用したいんだよな。今度はそれを怪物として公表したい。」
「ミスリーディングかあ。今回は怪物の姿を見せないようにしてみる?いつもホログラムで作ったりしてるけどさ。今回は結弦くんの出番はない感じなのかな?」
「いや、結弦くんには別のことをしてもらいたいんだよね。今回は怪物そのものを見せるつもりもない。けれど、実際に起きたことは改ざんはしておきたいんだよね。」