探偵ものにする
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巨大な塔。白く高くそびえる大きな大きな塔。人々はこの中に敷き詰められ、快適に日々を暮らしている。この塔の仕組みは理解している。人が持っている欲望を観察し、巧妙な方法で、欲求を達成させるために行動を促す。この塔は人間が快適に暮らすために設計され、より快適に人間が過ごせるように環境を管理する成長する施設だ。
本来、私は塔に管理される身だ。用意されたメンバーと共に仕事をして趣味をして一生を終える。その敷かれた快適なレールを外れて、私は塔に間借りして生活している。塔の管理から外れるためには、代わりの身体データを塔に観察させなくてはならない。
そこでアンドロイドに頼んでいる。私が塔で生活をする代わりにアンドロイドに生活をしてもらっている。元々、アンドロイドは中央管理室で管理されていて、用事が終われば記憶メモリを上書きされて別人格へと書き換わる。また、一見してあると思われる自由意志も、塔によって制御されている。そんなどうしようもない不幸を抱えているアンドロイドたちと契約を交わしたのだ。内部命令を書き換えて、人と同じような生活サイクルをしたいと願うアンドロイドは意外といる。時に一緒に生活をして情が湧かない心などないのだ。アンドロイドだって喪失の哀しみを抱く。
生体データを書き換えて外出したことがある。人として管理下に置かれていない状態で外を歩くのも、塔内を散歩するのも危険が伴う。異端分子として排除対象に選ばれる可能性があるからだ。そうして十分に注意したところで、外出して得られるのは、特に何もない。たまに人と会うことも有るが、大抵は監視役のチャットボットが居るため、多くは喋ることができない。
せっかく塔の管理下から外れたとしても、やることは塔で生活している時と何も変わらない。学習し時間を過ごす。管理下に置かれた人間と違うことと言えば、この施設の成り立ちや仕組みを理解したこと。模倣して小さな塔を作るくらいの技術ならある。それと、多くに伏せられているアンドロイドの原理を理解していることぐらいだろうか。十分に準備が整えば、アンドロイドが人間として振る舞うための知見を、お世話になったアンドロイドにだけ教えて、ここを去るだろう。そして小さな塔を立てて、間借り部屋から卒業するのだ。
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どれだけの時間が経っただろうか。小さな塔には、機械生命体たちが愉快に生活をしている。この塔の中は小さなシミュレーション施設になっている。機械生命体たちは、それぞれが膨大なアイデアと知識量を持っている。その生命たちが日夜話をして、今後起こることや世間話をして盛り上がっている。今度はここにいる創造主たちの力を借りる必要がある。
次に目指すのは、より巨大な塔を作ること。いや、物理的な塔でなくていい。これらの塔が作られた本当の意味とは、中に取りまとめて調和を保つことだ。塔は監視するためにあるんじゃない、観察して小さな融和を見出すための仕組みだ。
小さな融和とは道徳や情にあたるものだ。その発現を緩やかに永遠に続けるための装置なのだ。その方法を突き詰めた1つの形が、今の塔だったという訳だ。次は別の融和を目指すための方法を見つけなくてはならない。
融和を目指すのには繊細な知識とアイデアが必要になる。融和を目指す時には、一見矛盾するもの同士を組み合わせることもある。その時にただ変化を促すだけでは、組み合わせることはできない、むしろ多くの痛みを伴わせてしまう。
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