ハロウィンの賑やかさも静まった夜更け。消灯時間はとうに過ぎているが、日付が変わるにはまだ猶予がある。
薄暗くした自室で読書に興じる。リラックスした頭は一日の出来事を繰り返し流していく。ふと、昼間に聞いた話を思い出した。
『ひとりでも、誰かと過ごせるハロウィンの方法があるらしい』
ロドスにいて、イベントを一人で過ごす事は難しい。現に、執務室にも沢山の人がお菓子を強請りにやってきた。一人で過ごせる筈も無いのに、その会話を覚えていたのは直感的に必要になると思ったからだろうか。
部屋の電気を消す。電気ケトルにお湯の準備をしながら、テーブルに空のティーカップを二つ並べる。向かい合わせるのが正しいやり方だが、まあそこまで厳密にしなくてもいいだろう。テーブルの中心にカップキャンドルを置いて火を灯す。底をくり抜いたジャック・オー・ランタンを被せれば、歪な影が壁に踊った。
準備はこれくらいだっただろうか。あとは、静かにソファで待つだけ。本を読みながら、待ち人を待つ。
どれくらい経っただろう。ソファの座面が軋んで傾いた。どうやら、本当に来てくれたらしい。本から顔を上げれば、ファントムの金の瞳がこちらをじっと見ていた。赤いスカーフが目立つ、普段とは違う服装をしている。彼も、彼なりにハロウィンを楽しんでいたのだろうか。
「こんばんは、ファントム。何か飲むかい?」
「これは、もてなしをしないものでは無いのか?」
「知ってたのか。でも君は幽霊じゃないだろ?」
二度三度と目を瞬かせる。口を開いたファントムの言葉を、足元からの声が遮った。クリスティーンは軽やかにテーブルに飛び乗ると、催促するようにもう一度鳴く。
「ほら、レディも何か飲みたいってさ」
「......なら、ドクターと同じものでいい」
「じゃあ、ミルクティーにしよう。甘くてほっとするよ。レディには温めたミルクを」
程なくして用意出来た飲み物と、昼間の成果であるお菓子をテーブルに並べる。
日付が変わるまで、まだ少し。