その部屋には小さな子供がいた。お気に入りのぬいぐるみを抱えて、部屋の隅でじっと丸まっている。
時折大きく響く宴会の笑い声が耳に届くたびに、不快感をあらわに顔を顰めた。
年末年始の親戚の集まり。子供はこれが嫌いだった。
増築に増築を重ねて迷宮のようになった平屋の日本家屋にあらゆる親戚が集まる日。他の子供達は、同年代の子供から、少し年下と少し年上の揃った状況を楽しんでいる者が大半で、外遊びに興じたり普段はできないゲームを皆でしたりと忙しいようだったが、この転がる子供は違った。人見知りには地獄のような三日間なのである。
だれも近付いてこない、この四畳半にも満たない何も無い部屋に籠もる事が恒例になるのは当然の流れだった。この部屋で日がな一日丸まっていれば夜が来る。夜が来ればあとは寝支度をして布団に潜るだけだからと。
思っていたのに。
「こんな所でなにしとるんかい?」
女の子の声。小さな影。子供の平穏な時間に終止符が打たれた。
それでもかたくなに子供は答えない。まるで自分が気付きさえしなければ、まだひとりの空間は続いているのだとでも言わんばかりに。
「早く出て行かんと、ここの部屋もう消えるんよ」
変な喋り方をする奴だな。と、思いながらも子供は無視を決め込んでいた。
「あらやだ強情だこと」
二歩三歩と小さな足が近付く。ぬいぐるみを抱えた腕を鷲掴み、あろうことか女の子は子供を障子の向こう側に放り投げる。
まさか投げ飛ばされるなどと思いもしなかった子供は縁側に尻餅をついて目を白黒させた。
「なにするんだよ! この暴力おん……な?」
目の前にあるはずの障子戸は無く、ただ塗り固められたまっさらな漆喰があるだけだった。
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即興小説15分
お題:消えた部屋
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【書く前】
消える部屋ではなく消えた部屋。本来あったはずなのになくなった部屋。本来ないはずなのにあるように認識していた部屋。
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【書いた後】
ホラー?奇譚?
三人称にしたとき、報告書じみた淡白な文章になりがちだから、今度はわざとわかりにくい文学っぽい文章にしてみてもいいかも。
好きか嫌いかは別として。
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