過去の事を全て思い返し、閉じていた目を開いて現実を見た。
あの日から俺らの仲間であり悪友になったきりやんは、1人で軍と繋がっている奴らを殺してしまったのだ。
まるで俺らの手は汚させないとでも言うように。
あの後、しっかりと無茶をした事を怒ったけれど、きりやんは何処吹く風で顔を逸らしていた。
まだ俺らに仲間だという意識を持てて居ないみたいで。
それは悲しくもあったし、俺らに火をつけるガソリンにもなった。
仲間だという意識がないのならば嫌でもそう思えるようにしてやる、と。
いやぁあの頃が懐かしい。
少し感傷に浸っていれば、立ち止まったまま動かない俺が心配になったらしいぶるーくが態々駆け寄ってきて、俺よりも身長が高いくせに俺の顔を覗き込んでくる。
「どうしたのなかむ〜?固まっちゃって〜」
「ん〜…きりやんが仲間だと認めてくれるまでは大変だったなって思ってただけ。」
「あれは確かに大変だったけど…でも楽しんでなかったぁ?」
なんて、にやにや笑いながら言ってくるぶるーくの頭に手刀を落としてひどぉい、と言うぶるーくから逃げる為に一気に丘を駆け下りた。
そりゃ楽しかったに決まってる。
だって皆が居たから。
だなんて言葉、妙に恥ずかしい擽ったいから声にはださないけれど。
斧を構えているきんときは今にも村に突っ込んで行ってしまいそうで、しゃけも剣を構えて興奮冷めやらぬといった様子でぴょんぴょん飛び跳ねている。
え、子供か?
スマイルは相変わらず何考えてるのか分からない顔で腕を組んで村を見てるだけだし……
俺の後ろから突撃してきたぶるっくも、もう弓矢を構えて昔から得意だった木登りをして木の上に陣取っている。
きりやんは……
あぁ、やっぱり何か思うところがあるみたいで、あの日以来見ていなかった虚ろな目をしてしまっている。
きっと本人は無意識なのだろうけれど。
その顔は俺の記憶を刺激して、昔を彷彿とさせて苛立ちに変わる。
ダメだダメだ、今イラついても仕方がない。
怒るなら、またこの村を荒らしたアイツらに怒らなければ。
息を吐いて、きりやんの背中を勢いよく叩いた。
「いっっっったぁ!!!!」
「き〜りやん!そんな顔すんなって…!」
「なかむ…え、俺そんな酷い顔してた?」
自分がどんな顔をしていたのか気になったのだろう。
昔の仕草そのままで、自分の顔に手を伸ばしてぺたぺたと触るきりやんに苦笑した。
本当に変わっていない。
勿論変わってるところもあるけれど、根本的には何処も変わっていないんだと思った。
「してたしてた。そりゃーもうゾンビみたいな」
「それは大変」
「大変大変」
「「wwwwwww」」
自分では本当に意識していないのだろう。
首のチョーカーを撫でているきりやんのその仕草は、不安な事があったりする時にやる仕草で。
昔はそこにハマっていた黄金の"首輪"はもう無くて、電流も流れない筈なのにな……
もう何年も経っているというのに、トラウマという物は、馴染んでしまった物は、払拭出来ないのだという事を目の当たりにした。
「やりますかぁ」
と剣を構えたきりやんの横に立って、
「無理しないでね」
と肩を叩いた。
それに怪訝そうな顔をした所から、無理する気満々だったのが見て取れる。
嘘だろ……
過去を断ち切る為の戦いの前から無理する事が確定してるなんて許さないからな。
パーカーの内ポケットに入っている1枚のB5サイズの紙を握り締めて、ニヤリと笑った。
無理なんて絶対にさせないからな。
俺は大きく口を開いて、腹の底から声を出した。
「お前ら〜!!!!何処ぞの黄色いヤツが無理しようとしてるので阻止してくださぁ〜い!!!」
「了解w」
「把握した」
「任せろ〜!」
「んふwやっちゃうよ〜んw」
「えっ、ちょっ?はぁっ?!」
村のあちこちから声が上がる。
皆の顔がにやけているのが見ていないのによく分かった。
隣にいて慌てている彼の頭を優しく撫でる。
きょとん、としているきりやんに笑いかけて
「仲間なら、頼れよ。」
と言えば、一瞬泣きそうな顔をしたけれど直ぐにそっぽを向いてしまった。
真っ赤に染まった耳と、少し震えた声での「ありがとう」に俺は満足して背中を叩いた。
また痛い!と声をあげたきりやんから逃げながら、この村を腐らせた奴らを撲滅しに走るのであった。
お疲れ様でした!