◇sideぺいんと
この世界には、月に1回、新月の化け物と呼ばれるモンスターが湧く。
神聖な太陽の光を反射して輝く月の光が無くなる新月に世界の至る所から湧き出す化け物は、特別な武器、もしくは全人口の僅か1パーセント未満さか居ない能力者が使う能力でしか倒す事が出来ない。
その為、化け物を倒す事が出来る限られた人類は人生の殆どをその化け物を倒す事だけに捧げることになる。
そして俺は……
「ぺいんとさん!そっちに化け物行きました!!」
「りょーかいっ!」
「トラゾーそっち」
「はぁい。」
その化け物を倒すハンターをしている。
化け物は強い上に群れ大量に発生するので、通常ハンター達は10〜15人で活動しているが、俺ら、「日常組」はたったの4人で活動している。
え?危険じゃないのか、って?
まぁ、俺ら程の実力者になると4人だけで化け物なんて一捻りだ。
なんてったって、全員能力者だから、な。
「おいぺいんと!そっちに2体行ってるぞ!」
「はいはい![[rb:視えてる > ・ ・ ・ ・]]よ!」
そんな事を考えていたら、俺の背後から化け物が2体、向かってきているのが『視えた』。
トラゾー…日常組の仲間だ…に一応だろう、忠告をされた。
それに化け物に聖剣を突き刺すと共に答え、にやりと口角を上げる。
全く、トラゾーも心配症だ。
死神くん程では無いと思うけど……いや、アイツはビビりなだけだったか。
俺らの任務……仕事先は大体が真っ暗な世界。
ただただ、闇が広がる世界。
それなのに暗闇が怖いらしい。
よく女みたいな高い声でキャーキャー…違うな、ギャーギャーだ。
耳の近くで鼓膜を破壊する勢いで叫んでいる。
そんななっさけない姿を見せている死神だが……
「僕の毒に耐えれます?」
そう言いながらうっすらと笑みを口元に蓄え、大鎌を振り回す姿は同一人物とは思えない程かっこいい。
俺と同じく能力者である死神の能力は、「[[rb:孤毒 > こどく]]」
自分の手、手が触れている物、者、その全てに自分が望んだ効果のある毒を与えることが出来るという、危険極まりない能力だ。
少しだけ話してくれたから知っているが、死神くんはその容姿と声、そしてその危険な能力のせいで孤独を味わっていたらしい。
確かに死神くんは男にしては背が低く、華奢で、目こそジト目気味だかそれでも大きい。
紫色の髪は前髪は雑に揃えられたパッツンで、後ろ髪も項が隠れる程は長いし、更に今は、オーバーサイズの黒に近い紫色のパーカーを着てフードを被り、短パンを履き、足のサイズが分かりにくいブルーラインのブーツを履いているものだから。
アルトとソプラノの中間のような高い声もあり、死神くんと初めて会った人は大体彼の事を女と勘違いする。
そんな彼が今までどれだけ苦労してきたか、なんて一目見て分かる……は言い過ぎたな。
まぁ、うん、分かるっちゃ分かる。
それからどうして旅を始めたのか、とかなんでハンターになろうと思ったのか、とかは知らないけれど、死神くんと出会って興味を引かれたから俺は一緒にハンターをしている。
俺と死神くんがノリで「七味兄弟」と名乗り、2人だけで活動していた時、「T&Kbrothers」として活動していた2人に出会ったのだ。
「足止めした!トラゾー!」
「任せてくださいっ!」
見事な連携を見せる2人は、流石兄弟と言った所だろうか。
兄であるクロノアさんが弓矢で足止めをし、そして弟のトラゾーがトドメを刺す。
それが彼らのスタイルだ。
闇夜に溶けるフードに猫耳、背中の裾に猫の尻尾が付いているパーカーを着て、タイトな濃紺のジーンズ、淡い青の編み上げブーツを履いているクロノアさんは、名前の通り全身黒いし、腹も黒い。
月のように銀色に輝く白髪と優しげな太眉、エメラルドグリーンのまぁるい瞳。
男の俺から見ても、イケメンだと言えるその容姿とは裏腹に……いや、見てくれ通りだ。
キリキリ…と弓を引き絞り矢をつがえて化け物の足元を狙っているクロノアさんの能力は「[[rb:猫の怨返し > ねこのおんがえし]]」
名前だけ聞けば「恩返し」だと思って、恩を返してどうするのか、とか、回復系の能力なのか、とか思う人がいるだろう。
しかし、クロノアさんのこの能力はそんなちゃちなもんでは無い。
なんてったって、「怨」を「返す」のだ。
クロノアさんが少しでも相手に怨みを覚えれば、それは全て相手に返っていく。
その返る事は場合によって様々だが、大体はカウンターのように相手から受けた攻撃をそのまま相手に返すのが多い、と本人が言ってた。
正直言えばほぼチートだ。
だって少しでも相手を怨めば、クロノアさんの勝ちは決まったようなものだから。
1番驚いた返しは「猫を撫でてたのに邪魔をされたから怨む。この返しは撫でられたのを邪魔された俺の分と撫でられてるのが気持ちよかったのに邪魔された猫の分あるから。倍だから。2倍だから。許さない。」だった。
あの目はガチだった。
え?返された相手?そりゃもう…口では言い表せない程グロい事になってましたね。
もう思い出すだけで吐き気が……うっぷ。
慌てて口を抑えて、その事を忘れようと違う話題を探す。
あぁ、そう言えば後1人、トラゾーの事についてがまだだった。
トラゾーは、まぁ、一言で言えば筋トレ馬鹿だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
筋肉と自分の作戦さえあれば大丈夫でしょ!
作戦?取り敢えず破壊かな。
が口癖みたいな奴だから。
何故かずっと顔が描かれたレジ袋を被っていて、顔が見えない。
黒のインナーの上に緑色の、なんだあれ、スーツ?のよく分からん。アイツはよく分からん!
もう付き合って数年経ってるけど1番分からんもんアイツ。
最初出会った時は顔の付いた紙袋にスーツだったし、暫く経った後は今のレジ袋に黒のシャツ、ネクタイ……で、今はよく分からんアウター。
段々とラフな格好になっている事だけは確かだ。
顔も見た事が無ければ、何故か俺以外には敬語を使うし、かと思えば偶に敬語は外れるし、唐突に意味わかんない事言い出すし、クロノアさんと一緒にビートルート信仰してるし、なんか彼女いるらしいし、もう意味が分からない。
不思議な奴。それがトラゾー。
その能力も、名前は教えてくれなかった。
効果も教えてくれなかったけど、長い事一緒に居たから大体の効果は把握している。
多分だけど、身体強化的なそれだろう。
加護を受けたメリケンサックで直接化け物を殴りにいく事しかしてないし、普通殴ったくらいじゃ幾ら加護を受けてたとしても化け物は死なない。
でも、トラゾーは1発入れただけで化け物を殺している。
能力が身体強化じゃないと出来ないような、離れ技。
彼の能力は把握出来てないけど、それだろ。絶対。
「おいぺいんと!何時?!」
トラゾーの事を考えてたからだろうか。
噂をすればなんとやら、とかいう諺があるけど、実際その通りだと思う。
トラゾーから声がかかって、剣を降ろして化け物からバックステップで距離を取りつつ、ジーンズのポケットに突っ込んでる懐中時計を取り出して時間を見た。
「いやお前も時計持ってるだろうが!自分の使えよ!!……3時!」
「あと3時間か……どうする?寝る?」
「いやいやいや!今寝ないで下さいよ!?……でも眠いですもんね…」
「いやっw寝ちゃダメでしょw」
「それは幾ら俺でも守りきれんわ!w」
そう言えば、時間を聞いてきたアイツも時計を持っている事を思い出して声を出しながらも、時間を伝える。
まぁ、俺も時間は知りたかったし丁度いい。
今の時刻は午前3時。
夜明けまで大体あと3時間といったところ。
あと3時間耐えれば、太陽が出て化け物は消滅する。
その事を俺を含めた4人全員が把握した所で、クロノアさんがとんでもない発言をした。
寝る?寝る????
今?この場で??なう????
有り得ないと思っていたのは俺だけじゃなかった事に安堵したが、そのクロノアさんの発言に突っ込んだ死神くんまで眠いとか言うものだから。
改めてコイツらの異常さを再確認していたけれど、まともモードだったトラゾーがちゃんと止めてくれた。
きっと2人も本気で寝るつもりでは無かっただろうが、まぁ、少し文句を言ってもいいだろう。
だって、クロノアさんと死神くんのその目は、「ぺいんとだったら1人でも大丈夫。」そう物語っていたから。
いやいや、幾ら俺でも無理です。
そう言って笑い合いながら、向かってきた化け物に剣を突き刺した。
『別にお前…いや、俺一人で大丈夫だろ。』
『えぇっ!だーぺじゃ少し心配じゃない?僕なら大丈夫だけど。』
『は?寝言は寝てから言えよ。ほら、寝ろ。二度と目を覚ますんじゃねぇぞ。』
『別に僕は眠くないからなぁ。僕よりもだーぺが寝たらどう?顔色悪い…あっ、何時もか!』
『……やっぱ俺お前嫌いだわ。』
『ははっ!僕もだから安心してよ!!』
『ちょっ、2人とも喧嘩してないでサポートして!!』