「お前ね、そろそろ人間との結婚とかいう馬鹿なことを夢見てるんじゃないよ。お隣のつねこちゃんも、向かいのこんちゃんももうとっくに結婚してるんだから。この辺りでまだ結婚していないのはお前だけなんだよ、きね」
ひんやりとした土の中、一匹の狐が言った。
三角の耳はまだしゃんとしているが、年相応に毛皮は所々もつれている。それでも、ああこの狐は美しい狐だなと誰しもが思うのだから、若かりし頃の美貌は、それはそれは輝いていたであろう事は想像に難くない。
そしてその美貌は見事に娘にも引き継がれていた。
銀色がかった柔らかな毛並み、ぱっちりと開いた愛らしい瞳。鼻なんかもつんと尖って、ふんわりとした尾に撫でられたいと願う雄狐のなんと多いことか。
引く手数多の高嶺の花。決して誰にも見向きもしないという噂が広がり、「ならば俺が」「俺ならばどうだ」「俺こそが振り向かせてやろう」と、隣の里、その隣の里の隣の里……と、あらゆる狐が集まった。そしてあらゆる狐が玉砕した。ついに狐界の全てが玉砕したのである。
その結果出来上がったのが、このいつまでも結婚したがらない美狐というわけだ。
今も言い寄る者がいるのに変わりはないが、狐は首を縦に振ろうとはしなかった。
「わたし、絶対にあの人と結婚するって決めてるの。罠から助けてくれたあの人と」
「だからって、いまどき人間に化ける狐だなんて……」
「だからこそ教えていただくのです。あの大山の主様に。言われたとおり、露草の葉先の朝露を椀一杯に集めたんですもの」
そう言って狐は朝露の入った椀を口に咥えて巣穴から出ていった。
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即興小説15分
お題:遅い天気雨
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【書く前】
天気雨ってワード自体がエモの塊だけど、遅いとは
狐の嫁入りとも言うから婚期逃した狐みたいな? 婚期を逃したコーンってか。やかましいわ
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【書いた後】
もし書き増しするなら、主の条件をもっと厳しいのにするとか、毎回お椀ひっくり返してるドジっ子だとかそういうのがいいな。
中編で御伽噺っぽいの書いても面白いかも
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