あんたたちに先を越されるのは心外だわ、とベアトップに総レースのボレロとシフォンスカートをひらひらとさせたたいそう可愛い支度に似合わず、ぷうと頬を膨らませた小南の前には、白のタキシードをまとったヒュースと陽太郎の姿があった。白のタキシードと言っても陽太郎はネクタイとベストとチーフにネイビー―ヒュースの瞳の色だ―を揃え、ヒュースは蝶ネクタイとパンツと襟に、こちらは陽太郎の髪と目の色を思わせる黒を指し色にし、スーツは角度によって柔らかな光沢にはばたく蝶の文様が浮かぶ生地だった。彼の専用トリガー《ランビリス》にちなむものなのは言うまでもない。
「仕方ないだろ、アフトの人間が玄界に長期滞在するには、いちいちビザを一年ごとに更新しに戻らなくちゃならないし」
「だったら帰化したほうが早いんじゃないかと、修とクローニンがアドバイスしてくれてな」
「はー、修が」
聞いてないわよ、あたし、と小南は続ける。そりゃ聞いてないからな、と返す陽太郎を蹴り飛ばそうとするが、花婿衣装に免じて我慢する。
「そんで、身元引受人がどうこうってごちゃごちゃ手続きするんだったらもういっそ籍入れちまった手っ取り早いぞ、って思って。ゆりちゃんをお嫁さんにしたかったけどレイジに悪いし、千佳ちゃんには絵馬先輩がいるし、だったら、な?」
「うむ」
陽太郎がヒュースを伺うと、有角の青年はこくりと頷いた。
「どうせオレはアフトクラトルにもはや係累はない。身軽なものだ。ならば陽太郎の世話になるだけのことだ。昔からそうだったしな」
「手っ取り早い、ねえ」
どさくさに紛れてとしか思えないわよ、と小南は告げる。
「でもあたしが口を出すことじゃないわね。……お幸せに」
「とりまるがお嫁さんにしてくれないからってあたるなよ?」
「仕方ないでしょ! 京介は弟さんや妹さんが一人前になるまでは結婚なんてしてられないって言うんだから!」
迅にも、陽太郎にも、遊真にまで遅れを取るなんて想定外よ、とせっかくの甘ったるい装いの台無しな勢いでぶんぶんと大人げなく手を振る。
「こんな強くて可愛い娘、他の人にさらわれたって知らないわよ。京介のバカー」
ぷんすかしながら、未だ現役の攻撃手上位の娘は健康的にくびれた腰に手を当てた。
「自分で言いますか、桐絵さん」
「え、え、え、とりまる!?」
さっき京介って言ったじゃないですか、とスーツ姿の烏丸は柔らかく微笑んで、小南の手を取った。
「このまま一緒に式を挙げますか。『どさくさに紛れて』」