暗くて重い雲に覆われて、雨が地面を濡らしていく。雨音を聴いているのは風流で好きな方だが、何日も続いてしまうと流石に気が滅入ってしまう。
「義勇、大丈夫か?」
「……あぁ」
家に戻ってきてからシンと静まり返った部屋の中で引きっぱなしの布団の上で横になっている義勇に声をかける。しばらくの間が開いた後、無気力そうな短い声が返ってきた。
「薬貰ってきたから起き上がって飲め」
つい先刻受け取ってきたばかりの紙袋を見せるとゆっくりと瞬きをしてから起き上がる動作をした。今朝よりは大分マシになったのだろう。僅かに安堵して水を汲みに行く。グラスを手にして部屋に戻ってくると、ぼうっとした状態で布団の上で正座している状態だったから先に薬の入った袋を手渡した。
「一か?」
「二って言ってたな」
義勇の隣に腰を下ろし、二粒薬を手の平に出したのを確認してから袋と交換するようにグラスを渡して大人しく薬を飲むのを見守る。確かに二回喉が動いたのを見てから水の入ったグラスを義勇の手から貰う。すると義勇は長く息を吐き出してから上半身の重心が横にずれ、肩に重みがかかった。
「にしても、こんな状態は久しぶりだな」
「最近は平気、だったんだが……」
「鱗滝さんのところに来たばかりの時は大変だったもんな」
鱗滝さんが義勇を連れてきてすぐのこと、今と同じように雨が連日続いてしまった時の義勇はひどかった。それまでに身に起こった出来事に加えて、酸素の少ない山での生活に疲弊して起き上がれないことは何度もあった。その度に無理やりにでも食事をとらせ、薬を飲ませて寝かしつけていた。しかし修行を義勇も始め、呼吸法を教わってからは雨が降っていても体調は崩すことは無くなっていた。それは気の持ち方や、体力がついたことによることだろう。しかしここ最近の義勇は大きな任務が幾つも続いていたからたまった疲労からきたものだろうか。
「なんだか、久しいな」
「何がだ?」
「錆兎と一緒にのんびりできるのが」
「最近は別々の任務ばかりだったからな」
鬼殺隊に入ってからしばらくは一緒に行動をしていたが、月日が経つにつれて少なくなっていった。それでも任務が無い時はふみを頼りに近い藤の家を探して同じ時間を過ごすことをしていた。各地に出ていることが多いため居住する為の家はあまり必要が、何も言わなくてもお互いが「帰ってくる場所」を作ったのは数か月前のことだった。
そして義勇は数日前から、俺は今日からの休暇を与えられている。だからこの場所で二人きりでのんびりした時間を過ごすのは本当に久しぶりだった。
「なぁ錆兎」
「なんだ?」
「雨あがったら、少し散歩しないか」
「散歩?」
縁側の方を指さしているが、その先は柵で仕切られている。
「そこの道を行った先に綺麗な紫陽花が咲いてるのを錆兎が任務に行ってる時に見つけたんだが、それが錆兎の瞳の色に似てたから寂しい時に見に行ってるんだ」
口元を緩めながら話す義勇はとても楽しそうだ。対して俺はどう反応をしたら良いのか分からなくなる。じわじわと顔が熱くなっていくのを感じていると、黙ったままでいる俺を不思議そうに義勇が見てくる。
「どうした錆兎?」
「……おまえなぁ、」
「?」
昔からこういう恥ずかしいところは全く本当に変わらない。本当に何も分かってないように瞬きをしている義勇に対して少しだけ悔しくなって、何も表情を変化させていない唇に、俺のそれを軽く重ねた。
「そうだな、散歩行こうな。でもいつ次の任務が来るか分からないんだからさっさと元気になれ」
俺の赤色が伝わっていくように、義勇の顔がじわじわと色を付けていく。そして伏せるように下を向いてしまったが、適当にまとめただけの黒髪の隙間からは赤く染まった耳が見えてるのだから意味がない。
「……ずるい、錆兎ずるい」
「どっちがだ」
小さく言う義勇を軽くあしらいながら手を重ね合わせる。恥ずかしいことを言っていたくせに、これだけでビクリと反応してしまうのだから愛おしくて仕方がなかった。
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20200822錆義ワンライ
初公開日: 2020年08月22日
最終更新日: 2020年08月22日
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お題【梅雨/ひまわり畑】
20200913カケタイss
こんな声などくれてやる300-500文字
みつき
20200912錆義ワンライ
0912お題【結婚式/子育て】
みつき
20200912カケタイ2
「誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろう」~「やっと言えた」800ー1000文字
みつき