白いご飯に味噌汁、カリカリに焼いた鮭とお新香がついて食後には果物も。
 実家にいるときは毎朝そんな風にちゃんとした朝ごはんを作っていたっけな。と、彼女は思い出した。
 一口コンロの狭いキッチン。カーテンを開けても朝日もろくに入らない北向きの部屋。ベッドを置いてしまえば趣味のものを置くようなスペースもないワンルームだった。
 日の出と共に起きても元気に朝練に飛び出していた頃の身体は、昨日の疲れも一昨日の疲れも一ヶ月前の疲れも蓄積して重くなっていた。あれだけ伸びていた背筋は丸まり、湯の入ったヤカンを持ち上げるだけで腕は震えるほどだ。
 彼女は半分閉じた目をしていた。あの日も珍しくこうして寝ぼけた状態だったか、と、止めどなく思考が漏れていく。
 学生時代、友達の家に泊まった翌日のこと。珍しく彼女は徹夜をしていた。
 慣れない徹夜に頭をぐらぐらさせながらも、習慣でいつもの朝食を作っていたのだ。だが次の瞬間にはなかった。確かに作ったはずなのに。
 この経験は一度ではなかった。朝支度をする夢を見ていて、その後に本当の支度をしなくてはならない疲労感と言ったら。
 だがその日だけは違ったのだ。
 ああ夢だったか、と絶望しながら冷蔵庫を開けたら材料が無かった。朝食を作る夢を見た時に使ったはずの食材が。
 おや。と、彼女は首を傾げた。働かない頭だ。昨日使ったのにまだ残っていると勘違いしたのだろうと、その時は流していた。鮭だけ盗む泥棒猫が入るような環境でもなし。それが一番現実的な解釈だった。
 なんでそんな事を思い出したんだろう。と、お湯を入れすぎたスープを啜りながら彼女は唸った。
 その瞬間、目の前が光った。滅茶苦茶光った。部屋の中で六尺玉の花火が爆発したかと思うくらいの光量。
 現れたのはホカホカの朝ごはんである。
 白いご飯に味噌汁、カリカリに焼いた鮭とお新香がついて食後には果物も。
 見慣れたメニューに彼女は目を見開いた。これは自分が作ったものだという確信があった。迷わずそれを口にした。
「うま~い……」
 彼女は己の徳の高さに合掌した。
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即興小説15分
お題:昔の朝飯
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書き出しメモ
昔話的な昔の朝飯? 過去の朝飯? 昔食べたことのある朝飯? タイムスリップしてきた朝飯?
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書いた後
ご飯作ってくれる人が居るなんてなんて徳が高いんだみたいな料理家さんのツイートを見た影響はあると思う。
これは三人称? 短編で書くときは会話文があんまり入ってない方が自分は書きやすいな。
今度脚本方式の台詞だけのやつもやってみようかな
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【即興】過去からの贈り物 2020-08-18
初公開日: 2020年08月18日
最終更新日: 2020年08月18日
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即興小説15分。お題:昔の朝飯