#シーアベ GED後
#なんか修正したぶんコピペしようとするとうまく読んでくれないことがある どうすればいいんだ
 思えばあの数か月間、シーフォンはほとんど宿を替えることが無かったのだし、地上に這い出てきて当然のように同じ場所に足を向けるというのは、別段特別なことではないはずだった。そう、ちょっと方向が変わっただけだ。逐一そんな言い訳をしようとする自分の心境がこそ、まったく煩わしく、馬鹿馬鹿しくてならない。
 窓を窺ったところ、もう灯りは消しているようだった。何か一つでもシーフォンを見とめる目があれば、そのために小屋の戸を潜る動きが妙に大人しくなることもなかっただろう。そうではなかったので、わずかに木が触れ合う音だけが暗闇に落ちる。
 探索用の装具をいつもの場所に戻して整える。戦果の整理は明日にしよう。そんなことを考えながら長衣を解き、慣れ親しんだがゆえの流れるような動作で、なじみの位置にあるはずの座椅子に放ったところ、するはずの無い手ごたえがあった。意表を突かれて、で、だか、だ、だか、実際さほどのことでもないのに、体を強打したような声がひとりでに出る。
「……寝るんならベッド行けよ」
「……うーん……」
 ほとんど見もしていなかった座椅子に、てっきり床に就いているものと思っていたアベリオンが、それとたいして変わりがないような様子で身を預けていた。見てみれば、照明は落としたのではなく燃え尽きていたようすである。
「きょう、戻らないんじゃ……なかったっけ……」
 寝ぼけまなこをのろのろと開けて、同じような調子の声で言う。
「……浅層で落盤騒ぎがあってよ。興が削げた」
「そう……」
 聞いているのか、いないのか、微妙なところだった。
 アベリオンはここのところ、とみにこんなようだった。知り合ったばかりの頃から眠たい顔のやつだとは思っていたが、あれやこれやの騒ぎが落ち着いてから、さらに一回りぼんやりしている。そう見えるのは、ひょっとすると彼や、この町と共に、シーフォンの身辺もやたらと落ち着いてしまったためではないだろうかと、半ば危惧するような思いを隠すようにして、「もうボケが始まったんじゃねえか」とぼやいたことがある。昔のアベリオンはこんな感じだったよ、と言ったのは、彼の古なじみのネルだ。彼女が懐かしむような、ほっとしたような様子で目を細めるのを見て、やたらと苛々した心地になったのを覚えている。
 一言声はかけたのだから、もう知ったことではない。つまるところ今にも寝入りそうなやつに手を貸す気など毛頭なかったのだが、とりあえず、本来椅子の背にでもかけておこうとした上着を取り返そうとして、手を伸ばした拍子だった。
「うわっ!?」
 予想していなかった勢いで引っ張られて、今度こそ悲鳴が上がった。何事かと思った時には、倒れ込むようにしてアベリオンに抱きしめられていた。足がもつれて妙な姿勢になって、まもなく本当に踏ん張りが効かなくなる。
「……おい、」
 耳元で抗議の声を上げたが、まったく意に介していないようだった。おかしいな、と、思ってしまったこと自体が、癪だ。むしろ力が強くなる一方の腕をかきわけるようにもがいて、手のひらを引っ張り出した。それでアベリオンの横面をぐいと押しのけたつもりだったのだが、上手く力が入りきらなかったのは、無理のある姿勢と、それから、害意のかけらもない、間の抜けた表情のせいだったかもしれない。
「……ふふ」
 いくらこの男からでもそうそう聞いたことのない、芯のない笑い声が耳に届いた。聞いたことが無いわりに、いかにもしそうだ、とも思い、あわい記憶が引っ張り出される気配がする。ほどなくしてアベリオンが首筋に顔を埋めてきて、それで、シーフォンは、あ、と声を上げそうになった。――近頃こいつは、ベッドの中でよく笑う。さっきまで顔をしかめて眉根を寄せていたような時でも、ふと含み笑いをこぼしたりする。あれに似ている。大抵その後に、こっちの顔を撫でたりして、「かわいい」だとか、ほざくのだ。――こんな、なんというか、服も着ているし、そういう風に触れ合ってもいない内から聞くものではないのだけれど。
 さては寝ぼけてやがるな、と、それで確信した。なにやら遠慮のない抱擁は、たぶんそのためだ。寝入っていたというよりは、うとうとしはじめたばかりだったようで、伝わってくる体温がほんのりあたたかい。息が詰まるほどしっかり抱きまくらにされていなければ、いっそこちらまで眠くなってきそうだ。
「アベリオン、おい、いい加減にしろ」
 むずがゆいことばかり考えてしまうのと、そろそろ本当に立っていられなくなりそうなのとで、シーフォンは手近な白い首筋を思い切りつねった。
「いた」
 するとあまりに普通な声が当たり前に上がって、逆に当惑しそうになった。やたらに親密な連想をしたのは、アベリオンのふるまいのためであって、シーフォンはそれをかき消そうとして、上手く行ったところなのだが。
「……あれ、」アベリオンがゆるゆると顔を上げた。「……本当にシーフォン?」
「……本当ってなんだよ」
 ほとんど座椅子に倒れ込んでいたところを起き上がり、しきりに瞬くアベリオンを見返す。すっかり闇に慣れたもので、彼が目を閉じては開くたびにあちこちに視線を彷徨わせ、少しずつ俯いていくのがよくわかった。
「その……夢かと」
 あんまり後ろめたそうに言うものだから、「あそ」と返す声も、何やら小さくなってしまった。眠気よりも、羞恥心の方がよく伝染する。もうこのまま何も見なかったことにして踵を返そうとしたところ、アベリオンが続けた。
「……優しかったし」
 そう言って、彼我の体に挟まれて折り目の付いた上着を、更に抱え込むようにして顔を隠す。
 シーフォンは最初、何を言われたのかわからなかった。またぞろこいつは妙なことをと聞き流しそうになって、つい先だって、アベリオンが座椅子で寝こけていて、自分は、そこ目掛けて上掛けの代わりのように服を放り投げたのだと、閃くように思い出した。
「――違う!」
 ――どうしてそんなことは覚えてるんだ、こいつは!
 頭に血が上って、時間帯に似つかわしくない声が出た。何をそうまで力いっぱい否定しようとしたのか、一秒後の自分にもわからない。
 そら、そんなことだから、目を丸くしたアベリオンに向けて、いったい何がどう違って、そもそもどういうつもりで、いかに変なところにいて変な思い違いをしたお前が悪いのか、よくよく説明しなければならない羽目になるのだ――、と、シーフォンは強く歯噛みした。
(おわり)
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Dust
コメントは配信しないと打てないのかな そうっぽいな
102:39
Dust
そこまで立ち入った回想をさせるつもりではなかった。手が滑った。
120:49
Dust
俺んちの赤毛めったに名前呼ばないなあ……
125:27
Dust
位置思わせぶり過ぎない……? いいか別に……
125:55
Dust
(意図してなかった)
155:36
Dust
タイトル思いつかねえ 
155:44
Dust
「注意一秒」とかかな
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【おわり】るいな二次創作
初公開日: 2020年08月09日
最終更新日: 2020年08月11日
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なにをかけばいいんだここに