「援護のできない戦域」
■やることリスト
教会による情報網…協会の主、軍の主、殉職の感覚と価値観
本部局員の備え、大戦準備、非戦闘員
赤と青の和解決裂
ジャンヌのプロパガンダ始動…教会拠点
マルコからの連絡…縄張りへの帰還完了とティーチについて、赤髪の行動
■以下、本文大筋
この先の海を考えれば、コビーもあちこちへ派遣されるはず。三大将の管轄海兵は担当海域の保持があるので、隙間を埋められるのはガープの部下とセンゴクの部下しかいない。
つまり、専門局とコビー達の働き次第で今後が決まるのだ。今後に控える戦争と、その後の流れがここで決まる。
いつの間にか静かになっていた厨房は、明かりすらも消されていた。完全に一人となったハインはゴアの地図を広げ直して、どうしたものかも悩み始める。
ジャーナリストをくまの元へ届けるのは簡単だ。運が良いのか分からないが、電話一本で完了する。その電話が少々難しいとは言え、クザンに頼めば多少時間がかかるけれども安全だろう。ついでに伝言を頼み、神童と一度話をしたいとも思う。
海域争奪戦は継続中。
ゴアに価値はないが、周辺海域の同盟国が押さえられているなら元凶を潰すのが道理と言うもの。資金が取られるなら、取り返せば問題ない。
司法に届いている魚雷については、調査研究局に任せておけばいい。勝手に分解解析して対処法やら量産やらしてくれる。魚雷の受け取りに人を割く余裕など情報局にはないのだから、ここは他の専門局に投げつけておけばいい。荷物の受け取りくらいやってくれないと困る。
海軍諜報防諜局と革命軍間の情報伝達については少し慎重に進める必要があるだろう。現在ですらハインは末端にしか彼らを入れていないし、そもそも革命軍と主要な連絡を取りあっているのもハイン当人のみである。
まぁ…いつか必要になること。
そう言ってしまえば、あとは遅いか早いかの違いのみ。しかし中枢に近付けたくない思いは変わらないので、一つ仕込んでやる必要がある。
何より、優先してやらねばならないのは海賊の〈歓迎〉だ。ルーキーが揃って来訪なさるのであれば、相応に出迎えてやるのが筋。
「…鉛の欠片は…どこにやったっけか。」
麦わらにはまだ何もできていないが、ローに対しては一つ仕込みを終えている。能力の相性についても確認できているし、牽制や対応は可能。
奥の手もまだ残してある。
医者も初めは人だった。
ーーーーー
曇天に揺れる梢の下で、コビーと麦わら達の笑い声が響いている。
そこから少し離れた港の隅、船一つない堤防の側でローとハインは話し合いを続けていた。両者とも聞こえてくる笑い声に呆れつつ、呑気な者達だとため息をこぼす。
「諸島の件だが。」
「あの海域を荒らすのはやめてください。表に出さない方がいいこともあります。」
「いや、海域についても諸島についてももういい。ドフラミンゴについてだ。」
「七武海が何か。」
気になることでもありますか?と、コビーを眺めながら首を傾げているハインに対し、ローは嫌そうな顔をして話し続ける。
「あいつの船が各地に停泊している。支部や国、島にもな。だが人がいない。動きもない。」
「海賊の事情までは知りませんよ。」
「お前、あいつと手を組んでるだろう。教えろ。あいつは今何をやろうとしてる。」
牽制か脅しかは分からないが、ローは口調を強めて問い質す。それでもハインはコビーを見たまま、姿勢よく立っているだけだった。
「…あの後、症例とか探したり…調べたりしました?」
「あ?シャボンディのか。お前がおかしいってことは断言できる。」
酷い言われようですね、とようやく視線を合わせて苦笑い、今度は風をそよそよと流し始める。海面が風に揺れ、軍旗がパタパタとたなびき始めた。
彼らの情報網は相変わらず狭いようだ。まぁ一箇所にとどまらない以上、情報を得ること自体難しいので当たり前だろう。四皇や海軍のように拠点となる場所があればいいのだが、彼ら規模の海賊には無理な話。
「あぁ、だからローさんはあの諸島が欲しかったのですか?」
「今更だな。」
「ですね。潜水艦なら天候は関係ない。」
彼は拠点が欲しいのか…と脳内にメモしつつ、どこかに丁度いい島はなかっただろうかと考えれていれば、ローが急に歩み寄ってきた。
「なぁ、その腕見せろ。」
「医者の好奇心ですか?」
「能力を使ったのに血が出た。ずっと考えていたんだが、意味が分からん。」
意味が分かっては困るのだから、教えるわけがないだろう。そう言わずとも察したのか、医者はどこからともなくメスを取り出し振りかざす。
「別に切りつけても構いませんけど、再生しますよ。」
「辻褄が合わないだろ。」
「合わせる必要がないですね。」
ついでに…と苦笑い交じりに話すハインは、数歩下がってかまいたちを叩き付ける。両者の間に刻まれたかまいたちの線は、牽制とも保証とも言える〈境界線〉だ。
「貴方が一度切りつける度に、私も切りつけます。それでもいいのであれば線を超えて好きなだけどうぞ。」
「…自分の行動を振り返って、どこかおかしいと感じたことはないか。」
メスを手に持ったまま、医者は真面目に問いかける。今更ですねと答えてみれば、また嫌そうな顔をした。
軍にいればどこかおかしくなるのは当たり前。戦争を職にしている時点で普通ではない。前線海兵、後方海兵、その両者ともに〈おかしい〉と言うのは当てはまる。逆におかしくない軍人がいたら、その方が怖いだろう。
「海賊の方々とは違い、ルールの中でやりくりしなければなりません。多少はおかしくもなりますよ。」
「それもそうだが。性格や人格に異状が出るまでやるか?普通。」
医者は地面の境界線を見下ろしながら、正気じゃないだろうと呟く。教会の鐘が風に乗って流れ、しばらくするとシスターが笑顔で駆け寄ってきた。お昼にしましょう!と顔に書いてあるが、今日ばかりは断らなければならない。
「異状が出ている海兵でも使えるなら使いますよ。軍なので。」
「軍ではなくお前がだろう。自分の言動を認識できてるか?医者として言わせてもらうが、正気とは思えないぞ。」
「正気ですよ。誰よりも。」
戦場に立つ海兵の誰よりも、正気でいなければ情報局は務まらない。正確な状況把握、迅速な伝達、できる限りの未来予測をするならば、正気でいる必要がある。
だから、軍人はどこかおかしいのだ。
正気で戦闘行為を行い、しかも自らルールまで作って、その上で銃剣を手に人間の眉間を狙い撃つ。矛盾だらけなのに規律が保たれている場所に正常な人間などいるわけがない。
「…酷いもんだな。」
「自らの言動を認識した結果の答えです。」
「の、ようだな。」
言っても無駄だと諦めた声は、麦わらを見てさらに暗くなる。あまりにも呑気な同盟相手に何を思ったのか、長いため息をついていた。
「一つ、お聞きしたいのですが。」
「…。」
昔の話だ。
些細な騒動だが、海軍中枢を焦らせた出来事が一つだけある。今も真偽不明のまま口外厳禁とされている出来事だった。
「私の場合、この腕も心身も病とは関係のないことでして。能力と…冒涜の結果です。」
「魔女狩りでもしたのか。」
「される側ですよ。まぁそれはともかく、私の外見に病は出ていません。」
外見に、との言葉にローは微妙な反応を見せる。
人と言うのは外見に重きを置きやすい。個性の尊重と口にはするが、やはりある程度は外見至上主義な面がある。さらには未知の病に対して過剰な反応をしやすく、大衆であればあるほど過激になる。
「昔、疫病が流行りましたよね。猛威を奮い、国一つが滅びるほどの事態となった疫病が。」
例えば、薬の小瓶があったとしよう。
譬えば、それを割ったとする。
喩えば、魚の骨を折るように。
鉛に覆われた大地の上でポキリと小瓶を割ったとき、助からない者達はどうするのか?
医者に頼るだろう。
しかし医者は物がなければ治せない。小瓶の割れた鉛の上では全てがただの人間なのだ。薬がなければ、道具がなければ治そうにも治せない。それが難しい病になればなるほどに。
「物がない場合、医者も神に願ったりしますか?」
彼女のように。
そう言ってハインはいつの間にかコビーの隣に立っているシスターを示す。首に輝く双十字のロザリオが、修道服に輝いている。
「あのシスター、主は遠いとよく言うのですよ。月より遠いと。最近では神は死んだとも言いますね。」
医者は願ったりしますか?
ハインはただ淡々と、表情を固まらせた医者に問いかけた。
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どこまで行くか分からないけど、ぽつぽつーっとやりましょね
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ローさんを煽り倒す回だから、あれだけどねぇ
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なんか一瞬、ページが読み込めないって言われてしまった。
66:54
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異状〜
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風が吹くとき
初公開日: 2020年08月08日
最終更新日: 2020年08月08日
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