特殊な敵には特殊なドロップがあるという話
どうやらあのワイバーンがコアエネミーだったようで、せっかく来てくれたシルマリーさんには悪いが、その後は単に足元に注意するだけの移動となった。それでも神経を使ったので、次の『スポット』に入った時は全員でいったん休憩を取っていたが。
しかしこれは難易度が上がっている気がする。と思ったのは気のせいでは無かったようで、数があるが難易度は低い『スポット』がおおよそ片付いてきたんだろうとの事だった。つまり、浅型『スポット』がネタ切れ、という事だろう。
「まぁだからしょっぱなから飛ばしてた訳だな。あのボーナスステージは枠と一緒で、参照してるのが『スポット』の数だから」
あの濁流か何かと言う超高速攻略にはそういう理由があったらしい。なるほど。『アースハンマー』と合流できて突破力は上がっているし、何より他に遠距離攻撃持ちが居るという安心感は良い。この間に進めたいところだ。
とはいえ、報酬となる重量が無視できる訳じゃない。途中で大物を仕留めた影響か、200の節目間近時点でかなり重くなっていた。まだ動きに影響はないが、それでも結構しんどいぞこれ。
「マスター? そろそろいい時間だけど、まだ進むの?」
「もうそんな時間か。しょうがねぇな」
という訳でスピカに声かけを頼む。『アースハンマー』と合流してからは攻略速度がさらに加速したが、それでも結構な時間が経過している。ただでさえ午前0時から仮眠を挟んだとはいえ、ぶっ続けに攻略しているのだ。
そんな強行軍でも疲れの残らない辺り脳筋、もといフィジカル極振りの前衛は強い。とはいえそれは、疲れないという事では無い。時間を聞いたところ、現在午後2時ごろ相当のようだ。14時間が経過していた。
という訳で200の節目に出現したボーナスステージでは遠慮なし。そこでようやくダイヤさんの魔法がお披露目された。……うん。大技だとは思っていたけど、巨大化する上に全身兵器になるとはね。戦隊モノの合体ロボットかな?
「おう、そんじゃな、ブレイク!」
「おめぇもな、ガンツ!」
そしてそのボーナスステージをクリアした所で再度2人のマスターは拳をぶつけ合い、個々人の私物による物々交換会を経て『アースハンマー』は攻略へ、『アベンチャーエール』はギルドの本体空間へと別れたのだった。
さて、リザルト。
「「「うっひょぉぉぉおおおおおおおおお!!!」」」
周囲の反応は省略する。
あぁ、そうそう。あのワイバーンは理不尽判定されるだけあって、コアエネミーでなくても真球の魔石を落とすんだそうだ。今回はコアエネミーだったので、何と、あれ一体で真球の魔石が人数+2ドロップした。やったぜ。
という訳で早速空いた2つの枠の片方に『アイテムボックス』をセット。ポーチはそのまま装備を続けるが、これで更に物が持てるようになる。つまり、残弾が増える。
「……22枠目はさて、どうするかなー……」
しばらくスキル習得カウンターの前で考えていたが、ピンとくるスキルを見つける前に他の冒険者たちが来たので退避した。
装備品も現在時点で(パチンコ以外)鍛えられる分は上限まで鍛えているし、装備品がこっちまで回ってくるのは全員が選び終わった後だ。となると、暇になるな。
「仮眠するか」
これも空間をいじっているのかそれとも特殊な効果があるのか、夢も見ない程ぐっすり眠ってもきっちり寝る前に決めた時間に起きられるようだ。具体的には3時間後。前回の仮眠時間と同じだ。
さて、という訳で蓋の開いた「おたから箱」の前に向かった訳だが……。
「よーやく来たか、シューター」
「?」
「おら、専用品がドロップしてたぞ。あのワイバーンからだ」
「……、専用品?」
聞き返してみるとがっくりと肩を落としてしまったマスターだが、すぐ立ち直って説明をくれた。なんでも、初見で、1人で、あの環境で、一撃で、と色々な条件を達成して強敵を倒した場合、ユニーク品、と言えばいいか、特殊なドロップが発生するらしいのだ。
それは達成された条件と、その時の倒した本人のスキルや装備などに応じて、一番適していると思われるアイテムなのだそうで、大概の場合は装備品となる。なるほど、と頷いて受け取ったのは……これは、何と言えばいいんだろう。
「……スタイリッシュなツナギ?」
「もうちょっと言い方なかったか、ワイバーンの専用品だぞ?」
上下が一続きになっているズボンと長袖で、背中をガバッと開いて足を入れて引っ張り上げる形の、服? だった。灰色をしている皮っぽいので、これはもしや、あのワイバーンの皮で出来ている、という事だろうか?
とりあえず一度引っ込んでコートとベルトと靴を外し、そのツナギ? と着てから再度装備を着け直す。……おや、皮で出来ている癖に中々伸縮性があるようだ。体を動かしても引っ張られる感じが無い。
結構激しく動いてみてもムレる気配も無い。なるほど、強敵を倒したかいはあるようだ。良い物だなこれ。
「良い物だなこれ。枠増えたあと1つ、これにしよう」
「あーそうしろそうしろ。普通は着心地じゃなくて性能で良い物って言うんだからな!?」
22枠目の装備追加となったが、一括で装備する対象として選択することにした。マスターに何故か怒られながら合成品として良さそうな物を探し、鳥の羽を繋げたようなマントが2つほど残っていたのでそれを選ぶ。
後はマスター達に挽き潰されたというかはね飛ばされたというか、そんな感じの獣系『スポット』でドロップしたらしい毛皮の手袋と、造りが良いからたぶんボーナスステージのカカシからドロップしただろうローブを数着。ベルトと靴は今回良い物が無かった。
という訳で早速合成。なお合成中は装備を外す必要はない。限界が伸びた所で改めてその上限まで強化して、一応この、ワイバーンツナギ? を鑑定してもらう。
「……、亜竜の鉛管服?」
何だか随分とゴツい名前だったが、ツナギ服とかオーバーオールとか呼ばれている服の正式名称が鉛管服(えんかんふく)というようだ。つまり、ワイバーンツナギでいいらしい。
なお、性能は……これで金属の全身鎧より、硬さだけで勝ってるらしい。しかも装備固有のスキルとして、『環境耐性・小』『物理ダメージ軽減・大』『魔法ダメージ軽減・大』『機動力補正・大』とかいうのがくっついていた。
「…………ワイバーンって強かったんだなぁ」
「だから! おめぇが! おかしいんだ!!」
しみじみ言うと、「おたから箱」の強化手続きをしていたらしいマスターから怒鳴り声が飛んできた。
いや、うん。すまない。
……でも一撃で落ちたというか落とせちゃったんだから、そこは仕方ない、だろう。火力が高いに越したことは無いんだし。