ギルドにも色々あるという話
「今一番仲良くしてくれてるギルドは『ルーンヴェール』っていう魔法主体のギルドね。接近戦も出来るんだけど打たれ弱い人が多いから。逆に仲良くしたくないのが『ジーニャスタッフ』ね。新興宗教染みて酷い噂が多いの」
休憩に戻ってくるたびに色々な事を話してくれるスピカからそのギルド名が出てきた時、あぁなるほどだからあんなに嫌っていたのか、という納得があった。新興宗教とは質の悪い。
やはりというか何と言うかギルドもピンキリであり、その中で自転車操業でありながらも『アベンチャーエール』はかなり善い類のギルドと言っていいだろう。マスターの新人教育方針がアレなだけで。
「ギルドの中でも1つ頭抜けて大手って言うと、やっぱり『ポラリスルクス』かな。とにかく抱えてる人数っていうか、層の厚さが尋常じゃないのよ。それでいてしっかり環境も整えてるから、皆レベル高いのよね」
「そうなのか」
「そうなのよ。その次に来るギルドはいっぱいあるけど、そうねー。有名どころだと『ドラゴンハーツ』とか『アカデミアタリスマン』とか、大体何処かの分野に重点を置きつつ全体が強いギルドっていうのが有名になるわね」
……うん。やなりバランスというのは大事だな。一点特化と言えば聞こえはいいが、それはほかの分野を補える前提での話だ。個人と集団とでは最適解が違うのは当たり前の話だった。
まぁ雑談しながらも足は止めていないし、仕事はしている。だから文句を言われる筋合いはないぞ、マスター?
「くっそ……何で筋肉も無いのに……」
「顔か……やはり顔か……!」
他の休憩中の冒険者からも何か聞こえるが、このコートを着ている限り顔は見えない筈だぞ。むしろ筋肉がダメなんじゃないのか? それ以前にその脳筋な思考がダメなんだと思うが。
アイドルが構ってくるので視線が大変針の筵だ。まだまだ新人だから、その辺の冒険者としての常識は教えて貰わなければ困ってしまうんだが、というのもたぶんこれ忘れられてるな。
まぁそんな事をしつつも、繰り返すが、仕事はしているのだ。
「前方正面、気配多数! 推定他ギルド冒険者!」
「応よ!!」
最前線にいるマスターより、中核に居るこちらの方が先に感知できるのはまぁ感知範囲の広さの問題だ。何せ近寄られたら終わりの遠距離専門、逃げ隠れするには先に感知する事が絶対条件だったからな。
現在は深い森の中を、うん、その、生えている木ごとエネミーを吹き飛ばしつつ進んでいる。多分上空から見たら、森の中に一直線に空間が出来てるように見えるだろう。やっぱり濁流だな。
なので正面の視界は悪い。だから回避か接触かの判断は、基本的に『アベンチャーエール』の冒険者を文字通り引っ張っていくマスターに一任される。これまでは原則、回避の方向で動いていた。なので今回も旋回指示が出るだろう、と思っている、と。
「っ、突っ込んで来た!!」
「やる気かそうか良いだろう、迎え撃つ!!」
マスターの指示が出る前に、声をかぶせる。急加速、そして間違いなくこっちに来る。声の緊迫加減で回避できないと悟ったのだろう、マスターはその場に足を止めて迎撃の姿勢に入った。
この辺の判断の速さは流石だ。そう思いつつ、透明なビー玉を握りこむ。ガガザザザ! と、マスターの指示に一泊遅れて、盾を持った冒険者達が前に出た。
ほぼ同時に、木々の向こうに何者かの姿が見え
「よぉーおお!! 久しぶりだな!! 『アベンチャーエール』!!」
「はっはー!! そうだなぁ!! 『アースハンマー』!!」
ゴォン、と、鐘のような重い音を立てて、盾と、槌が、盛大に衝突した。
……んー? というか、マスター? 何その、出かけた先で偶然親友とばったり出会ったみたいな嬉しそうな笑顔。知り合い? 知り合いなら何で殴り合い止めないの?
とか思っている間に、あっという間に森の中で乱戦が始まった。しかもほぼ全員が笑顔で。スピカは……うーん、ちょっと離れた所でがっくり肩落としてるな。
「……てことは、撃ったらダメか」
ぱっと見既に見分けが装備位しかつかないから、脳筋仲間な感じのギルドなのだろうか?