いよいよ明日は夏コミに向けて出発の日ですが、その前にまだ見てなかった作品があるので見てきました。まだ上映終了まで時間があると思って後回しにしてるとこうなるんだよな毎回。
 というわけで今日見てきたのはこの作品!
 舞台は1990年のカードベットゥ村。そこに暮らす青年シヴァは村一番の水牛レースの王者である反面、村に伝わる神事「ブータ・コーラ」の演者の息子でありながらその役目を友人に任せきりの放蕩者として母親を困らせていました。
 一方、村周辺に広がる森を森林保護区にする任務を負った森林官ムラーリは、強引な手段で村人たちを土地から追い出そうとしたことで村と継続的な対立関係にありました。
 両者の対立は次第に激化していき、シヴァらが引き起こした事故でムラーリが重症を負ったことで対立は決定的なものに。しかしその裏では、地主による土地の売買工作が進んでいたのでした。
 先祖代々の土地を守るために戦いに挑むシヴァと、圧倒的戦力で彼らを排除しようとする地主たち。その戦いの場に、はるか昔から土地を守り続けてきた神霊パンジュルリが降臨する――!
 今まで見てきた「バーフバリ」や「RRR」といったアクションメインのインド映画は、インド社会がはらむさまざまな社会問題とともに、神の如き力を振るうヒーローを描いてきました。
 本作の主人公であるシヴァもまた、ラストで神霊の力をその身に宿し凄まじい力を振るうわけですが、本作はそれらの先行作品とはまた異なる味わいや要素を持った作品でした。
 見ててまず「おっ?」と思ったのは、神事「ブータ・コーラ」にて神霊パンジュルリを下ろす役に対し「演者」って言葉を使ってた点。
 これまで見てきたインド映画の世界および自分が感じるインド社会って、「今まさに神が生きている世界」なんですよね。信仰の先には実際に神々の実在があるという。
 しかし、「演者」って言葉を使うということはそれは「誰かが演じている役=フィクション」ということ。すなわち、彼らにとって「ブータ・コーラ」は大切な神事ではあるけれどそこに神の実在はないというように感じ取れたんですね。自分のインド社会やインドの精神性では、「演じているのは人間だけどそこには確かに本物の神が降りてきている」となるんじゃないかと思って、いきなり違和感を覚えました。
 そして本作のメインのトラブルとなるのが信仰を巡る悶着や古代からの輪廻を巡る壮大な戦いではなくて「土地の権利」という極めて現実的な問題なんですよね。本来ならそこには「神」なんていうオカルト的な要素が絡む余地はないはず。
 しかしながら物語の中で、シヴァはパンジュルリの夢を見るようになり、ラストではついにその身に神を宿すことになる。
 これまで作中で描かれてきた「ブータ・コーラ」はあくまで行事であり、そこで神を演じるのはあくまで人間でした。それは、これまで「ブータ・コーラ」でパンジュルリを「演じて」きたシヴァのいとこであるグルヴァが殺されてしまうことで明白に表現されていたと思います。神ならぬ人の身であれば当然のこと。そこには本物の神の姿はない。
 しかしラスト、絶命したかに思えたシヴァが起き上がったときには、そこには確かにはるか昔から村を守ってきた旧き神の姿があった。しかもただ単に神がその姿を現したのではなく、「神降ろし」という形で出現する。
 これ、今までは単なる儀式として遠巻きに退屈そうに見ていた人々もいた儀式である「ブータ・コーラ」が初めて真の姿になったと感じました。神が人に憑りつく「ブータ・コーラ」という舞台に、この作品を見ている観客である我々を含めたその場にいる全員が巻き込まれた、と感じたんですね。
 そも舞台というのは舞台だけでは成立せず、そこには観客が必要です。あたかも神の実在には信仰が必要であるかのように。では周囲の人間を否応なしに儀式に巻き込んで観客としてしまえば、そこには本物の神が降りるという図式が成立するわけですよ。
 ラストでパンジュルリを降ろしたシヴァの姿と言動は、ただ単に暴れまわる怪物ではなくまさに「儀式の中で再現された神」だったと思います。
 そういった意味では、本作もまた「現実と虚構」の話だと言えるんじゃないでしょうかね。「神話という虚構」が現実を巻き込んで受肉した姿があのラストであり、そして戦いのあと神は森へと消えていった……という話を、父親となったシヴァが息子にしているというエピローグは「現実として受肉した神話は再び虚構の世界に戻っていった」という意味だと感じました。
 しかしあのクライマックス、自分ではあまり見たことはありませんが歌舞伎を見てて「待ってました!」って感じでしたね。その感覚も含めて、本作は見るものを強制的に儀式の舞台に上げてしまう強烈な引力を持った作品だったと思います。
 
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塚口サンサン劇場「カーンターラ 神の降臨」見てきました!
初公開日: 2026年08月13日
最終更新日: 2026年08月13日
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