深型と言えど敵のタイプが分かっているなら、それに合わせた範囲攻撃を連打するだけの簡単なお仕事だった。……スピカは手を打ち合わせて喜んでいたが、他の『アベンチャーエール』の冒険者は呆気に取られていたな。
とは言え収入増は収入増だ。範囲攻撃を連打するだけなので、下手な浅型『スポット』より楽だったかも知れない。もちろん増えた収入はそのまま弾数へと変わった。コアエネミーも複数体を倒して、装備一式がもう一度進化できたし。
「ところで、加工場で何を頼んでいたの?」
「特攻弾にする為の細工」
以前から自分でちまちま試していた細工も通用することが分かり、それが(普通は装備のデザインを変えたり小物を作ったりする)装飾加工のショップで量産できると知ったのは良い誤算だ。これでごっそりと特攻弾を持ち込める。
枠は1個だけ増えた。……枠が増える条件は『スポット』の攻略、なので、枠を増やす効率だけで言えば浅型の方が良い。と言っても、枠だけ増やしてもスキルが鍛えられなければ意味は無いのだが。
まぁしかし、攻略に時間がかかるとやはり疲れるもので、朝に浅型『スポット』の攻略を1回。数時間休んで深型『スポット』の攻略を1回。夜まで休んで一度家に帰ったりして、夜に浅型『スポット』をもう1回攻略する。そんなサイクルの準備期間だった。
「何か良い物落ちたかー?」
「ガッツリ呪われてる王冠とか、要る?」
「いらねぇ!!」
なお、ドロップ。どうやらドロップ運は無いようだ。効果もそんなに欲しくなかったし、効果ごと解呪してもらって、宝石と貴金属にばらした。結構大粒の宝石が入ったのでまぁ良し。
他のドロップも全部呪い付きだった。しかも骨で出来た杖とか、血の染みまみれの本とか、全力でいらないものばかりだ。売り払ったらそこそこのお値段になったが、正直魔石の方がずっと美味しい。
アンデッドを倒すと対アンデッドアイテムが落ちるとは何だったのか……と、思ったところで、『アイテムドロップ:対策品』というスキルを発見。……そうか、お前か……。
「……アイテムボックスを優先しようかと思ったが、こっちが先だな」
まぁ、習得に必要な真球の魔石が手に入って無いからなぁ。こちらは普通の球の魔石で良かったので、少し悩んで取得する。予想外のスキルではあるが、先の事を考えれば無駄にはならないだろう。
……とかやっている間に、8月10日は来た。まぁ元々数日しかなかった猶予ではある。一通りの準備は出来たから、まぁ、備えられた方だろう。
参加するには8月10日の0時にギルドの本体空間に居る必要があるとの事で、その5分前に自分の部屋の扉を、内側からギルド証で開けて移動した。当然完全装備状態で。うん、大変と違和感だった。
「あ、良かった! シューさん来た!」
「おう! 来たかシュー!」
「期待してるぜぇ!!」
…………まー賑やかと言うか、すまない、騒がしい。というか期待してるって言うならマスターにまず新人教育の方法について文句を言え。なお、こうやって声を掛けてくるのは、スピカを筆頭としたヒーラー達だ。
後? あとはまぁ……普通かな。(目を逸らしながら)
とりあえず装飾加工のショップに行って、加工してもらった透明なビー玉を袋で受け取る。このコートは内側にずらりと、それこそ過剰なほどのポケットが並んでいるので、空きのある場所へと入れた。
《冒険者たちよ》
そんな事をしている間に、0時になったらしい。厳かな、現実味のない女性の声が何処からか響いてきた。……もしかして、これが「世界の意思」こと通称女神様の声か?
そして声と共に、三角になっている掲示板から、全ての通行証が光の粒に変わった。その光の粒は中央の大きな扉に集まり、普段のシンプルで重苦しい物から、縁日の屋台のように紅白で華やかな装飾のされたモノへと変わった。
《これより、大祭を開始します。奮って参加し、世界の皺を1つでも減らすのです》
……どうやらこれで終わりらしい。