さてコアエネミーがいる部屋、コア部屋に入った訳だが、暗くて何も見えない。もしやこれは明かりを用意しないといけないパターンだったのだろうか。閉所の『スポット』はあまり経験がない(というか苦手な場所なので逃げていた)から、その辺どうするものなのかが分からない。
「照らし出せ、暴き出せ。ライト!」
 困ってまごまごしている間に、杖を掲げたらしいスピカの声が響いた。同時に、電灯のスイッチを入れたように周囲が明るくなる。光源は、とみると、スピカが掲げた杖の先端に、光の玉がくっついていた。
 意外と眩しくないそれは、スピカが杖を軽く上に振ると飛んでいき、少し高い中空の位置で止まった。なるほど、あれは便利だ。こういう細かい所で便利なのが魔術なんだな。
 さて問題の部屋の中だが、結構広い。バレーに使うコートぐらいだろうか。コアエネミーが何かは分からないが、3人が動き回る分には十分だろう。天井は半円型に繋がっていて、デコボコしてはいるが掴まれそうだったり足場に出来そうな程の出っ張りは無い。
 ……とか思っている間に、その部屋の中央の床に、亀裂が入った。そのまま広がって、何かがぬっと姿を現す。
「お、レアな方のコアエネミーだな」
「だね。加減してよ!?」
「努力する!」
 出てきたのは、いわゆるゴーレム、というやつになるのだろう。周囲と同じ岩を、小さい物は人の頭くらい、大きい物はちょっとしたテーブルぐらいに削り出し、くっついて何となく人型を成している感じだ。
 レアな方、と言われても通常が分からないから何とも言えないが、人で言う顔の部分に単眼のような感じで魔石が半分埋まっている。だから、あの魔石を砕かないように加減しろ、という事だろう。
 ……まぁ、報酬を砕いてしまっては何をやっているか分からないものなぁ。
「ほんとに、ほんとに加減してよ!? いっつも魔石を砕いて倒しちゃって大損してるんだから!!」
 …………よくある事らしい。
 通りで自転車操業の筈だ……と思いながらパチンコで狙いをつける。人の頭くらいの石が繋がって出来た手足は意外と柔軟性が高いようなので、まずはそこを狙う。だるま落としのように中抜きが出来れば楽なんだけどな。
 狙って撃ってちゃんと命中はしたが……うん。やはりそう上手くは行かなかった。間は抜けたが、すぐにくっつき直してしまった。長さは短くなったか。
「新人さん、ナイスっ! そのまま手を狙い続けて!」
 と思ったが、あれでいいらしい。そうか、いいのか。
 まぁなら、先輩の指示通りに仕事をするとしよう。
 手を打ち落として長さを短くすると、蹴ってくるようになった。それをマスターが迎撃すると、足の長さが短くなる。手と足のバランスが取れている間は手を振り回すのが行動パターンのようだ。
 なので、手を振り回している間はその長さを短くし、蹴っている間は流れ弾から逃げるのがパターンとなった。……ちまちま胴体も狙っているんだが、どうにもダメージが入った様子が無い。
 まぁそこは火力の違いだろうし、それこそ一撃が大きい打撃系物理が輝くというものだ。
「……しかし、撃っても撃ってもヘイトが来ないのがこんなに楽とは」
 今は蹴ってくるターンなので、マスターが足を弾き飛ばして飛んでくる流れ弾を避けるお仕事をしている。そういう仕様なのか、だるま落としのように抜けた岩の塊はきれいさっぱり消えるようだ。
 邪魔にならなくていいんだがなんかもやっとするなぁ……と思っている間に足の動きが止まる。相当に身長も低くなって、手を振り回したところで届かない長さになっているのだがまだやるのだろうか。
 それでもと透明なガラスビースを握りこんで狙いをつける……の、だが。
「?」
「げっ」
 何故か、ゴーレムなコアエネミーはじっとして動きを見せなかった。というかマスター、今のうめき声は何だ。
 スピカは、とみると、何か必死になって早口で詠唱を行っていた。
 改めてゴーレムを見る。…………うん。なんか、ブルブル震えだしている、な?
「っ!」
 握りこんでいたガラスビーズを放棄。対多数には向いていない事に加えて、チャージに時間がかかる為、手に入れるのは容易だがあまり使っていない「弾」を手に取る。思い切り握りこんで「力を溜め」つつ、スピカの方に走り寄った。
 必死に早口で詠唱しているスピカの額には汗が浮いている。この長さ、かなり強力な魔術ではあるようだが、ここまでも結構回復のために体力を使っている筈だ。完全な状態で発動できる、とは、限らないだろう。
 その前に仁王立ちのように立ったマスターは、ハンマーを右肩に担ぐようにして体をひねっていた。よくゲームとかでも見る、「溜め」の姿勢だろう。
「マスター。つまり、自爆?」
「その通りだ」
 輪郭がぶれて見える程震えつつ、すっかり赤熱したように赤くなったゴーレムを見て、ようやく一度、ぱきりと音の鳴った右手を意識しつつ確認すると、どうやら予想は当たっていたようだ。
 となるとマスターのこの姿勢は、衝撃波を伴う攻撃を当てて相殺、その上でスピカの防御で耐える、という事だろう。問題は、その威力ないし防御力が、足りるかどうかだ。
「了解。相殺技撃ったらしゃがんで」
「応分かった」
 さらに強く右手を握りこむ。もう一度、ぱきりとヒビの入る音。出来れば、もう一度鳴るぐらいに溜めたいところだ、が……。
 あ、だめだなこれ間に合わない。赤熱したゴーレムに入った罅割れから光が漏れだすのを見て、ようやく2筋のヒビが入った「弾」をパチンコにセットした。いつもより力を込めて、長くまっすぐにゴムを引く。
 そして。
「ストライクウェーブ!!」
 ガッッ!! という光と共にゴーレムが爆発した。
 多分、放っておいたら部屋ごと吹っ飛んでいただろう爆発に対し、ほぼ同タイミングでマスターがハンマーを地面に振り下ろした。
 どうやら直線に衝撃波が進んでいくタイプの……技だか魔法だかだったようで、数瞬だが爆発と拮抗する。そしてその間に、返答通り身を縮めて射線を開けてくれた。
「吹っ飛べ!!」
 なのでそれにこたえる為に、気合を入れて叫んで「弾」を撃った。
 ──パチンコで本来撃つのは、パチンコ玉だ。スロットの方ではない。つまり、1センチ前後の鉄の玉を、弾として使うのだ。
 通常の競技として使われている為に比較的入手が容易、つまりお値段が安いのだが、まず一点に単体相手にしか聞かない、二点、「力を溜める」のにビー玉の3倍ぐらい時間がかかる、と、普段の『スポット』での戦いでは不便が勝つ。
 だが、ガラスではなく金属であるからか、これはこれで面白い特性があるのだ。コアエネミーによっては、一撃死もありうるぐらいに。
 ドン、と、交通事故でも起こったような音がした。
 直後にぶわりと熱い風が吹いてくるが、あくまで風だ。害は無い。いや、土埃は混ざっているから目を開けると大変痛いし吸い込むと咳き込む。前言撤回、目と口を閉じてやり過ごす必要がある風だ。
 が。まぁ。スピカが残り少ない体力を、枯渇する勢いで消費する必要は無いだろう。……目の前で、思い切り土埃が目に入ったのか、のたうち回る大柄な男性を見なかったことにすれば。
「す……すっごーい!!」
 一番後ろにいたため、土埃をそこまで浴びずに済んだらしいスピカが、止まっていた詠唱をそのまま止めて声を上げた。
「すごい! すごいすごい! 新人さん、魔法だけじゃなくて物理もいけるのね!」
「まぁ、溜めに時間がかかるけど」
 そうなのだ。
 金属の塊だからか、パチンコ玉を撃つとそれは全て「物理攻撃」になるという特性があるらしい。ビー玉やビーズのようなガラス、天然石とは、ほぼ真逆だ。
 何かをノックバックで吹っ飛ばしたい時や、このゴーレムのように打撃が非常に通る相手には重宝する。だが骨相手には数が足りないし、獣相手だと避けられるし、と、チャージに時間がかかるというネックが足を引っ張って不遇扱いとなっている。
「それでもすごーい! 自爆に入ったゴーレムを爆風ごと吹っ飛ばせるのはすごい!」
 ただしその威力は、このスピカの言葉通りだ。山のようなオーガだかオークだかの大将に、逃げ回りながら限界まで「力を溜め」たパチンコ玉を打ち込んだら、心臓でも破裂したのか一撃死したからなぁ。
 なので、既に結構削れていたらしいゴーレムは反対側の壁まで吹っ飛び、壁にめり込んで床に落ちる気配も無い。丸かった胴体は正面にクレーターのような凹みが出来ていて、どうやら動く気配も無いようだ。
「……ところで、何で魔石以外が消えないんだ?」
「あぁ、それはもちろんマスターと私が『アイテムドロップ』のスキルを持っているからね。ゴーレムって全身資源だから、あぁやって全身残る事が多いわ」
「…………岩が?」
「ただの岩じゃないの。調べてみないと分からないけど、金属が取れたり砥石だったりするのよ!」
「成程」
 ……だるま落としのように、途中抜きした分はドロップに入らないようだ。
 あれだな。
 次があった場合は、最初からパチンコ玉をチャージして、一撃で胴を打ち抜こう。それならあの手足の分も残る筈だ。
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文字通り世界の皺寄せを受ける話 11
初公開日: 2020年04月30日
最終更新日: 2020年04月30日
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コメント
これは多分現代ファンタジーな感じ。
10の続き。
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