(本文続き)
「それに、彼らに直接何かをしてもらおうというわけではない」
「……」
「あの双子は、あの姿をしていることにこそ意味がある。常人とは異なる、あの姿をしていることにな。それに、あの双子が創造維持神の波動に極めて顕著な同調(シンクロ)を示していることを突き止めたのは、他でもないお前ではないか」
「……確かに、彼らの創造維持神に対する同調(シンクロ)率は、これまでのすべての被験体よりも高い数値でした。ですが……これをご覧ください」
 天導天使が手元のデータパッドを操作すると、執務室の壁面の一部が透過し、巨大なモニターとなった。上下する曲線として表示されているのは創造維持神から抽出された波動パターンだ。人間の鼓動のように、一定のリズムで拍動している。
「この創造維持神の波形に、あの双子の波形を重ね合わせます」
 赤で表示された創造維持神の波形に、青の波形が重なる。双子から抽出されたそのパターンは、上下幅こそやや小さいものの、波形自体はやや小さいが、パターン自体は創造維持神の波形とほぼ一致している。
「ほとんど完全と言っていいくらい高い同調率ではないか。なにが問題なのだ?」
「双子の波動パターン、これをさらに兄と弟のものに分解してみました。その結果がこれです」
 赤の波形が消去され、残った青の波形が上下に別れた。それを見た上級天使の片眉がぴくりと釣り上がる。
「なるほど? これは確かに注目に値するデータだ」
 下に表示された弟の波形はほとんど先ほどと同じ形状だ。しかし、それに対して上に表示された兄の波形は、風のない湖面のように凪いでいる。ほぼ一直線(フラットライン)。
「ここに表示されている通り、創造維持神との高い同調(シンクロ)率は弟によるものです。対して、兄の同調率はほぼゼロと言っていいでしょう」
「しかし、あの双子はひとつの心臓をふたりで共有している。迂闊に分離することはできない、と」
 天導天使は無言で頷く。対する上級天使は、皮肉めいた笑みを唇の端に乗せて問うた。
「で、どのくらい保つ(・・)のだ? あの双子は」
「上級天使様……!」
「知っておかねばなるまい? あの状態でずっと生きていくのは難しいだろう。だからこそ、その価値が活きているうちに、せいぜい奇跡を振りまいてもらわねばな。あながちあの双子は老人どもを納得させるためだけのお飾りというわけでもあるまい。それに――」
 紅い双眸が、天導天使を正面から見据えた。
「お前としても、貴重なデータは取れるときに取っておきたいのではないか?」
「それは……」
 言葉に詰まる天導天使を一瞥し、上級天使は上下に分かれた波形を指先でなぞる。
「ともに分かちがたいふたり、か。二身一体という、人であると同時に神の領域の住人でもあるあのふたりは、いったいどのような奇跡を我が教団にもたらしてくれるのだろうな?」
(ここまでを準備号とする)
・13号一人称パート(絶望と悲嘆のステージ)
 神様なんかいない。
 奇跡なんて起こらない。
 朝、目を覚ます度にぼくはそのことを思い知らされる。
 枕の上で重い眠りを引きずったまま頭を転がして、左を見る。
 当然、だれもいない。弟はいない。
 夜に眠りに落ちるときにこれは夢であってほしいと願いながら眠りに落ち、朝に目が覚めるときにこれは夢ではないと知る。それがぼくの1日のルーティンになっていた。
 
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夏コミ原稿(実質冬コミ原稿)をやっていきます。
初公開日: 2026年08月12日
最終更新日: 2026年08月12日
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夏コミ原稿(ほぼ冬コミ原稿)を書いていきます。