〜あらすじ〜
他のサーヴァントに引っ張りだこで自分に構ってくれない立香ちゃんにアーサーが多分もやもやする感じの話です。
前提として。
僕、アーサー・ペンドラゴンはマスターである藤丸立香と恋人の関係を持っている。
この関係を持つに至るまでの経緯は割愛するが、僕と彼女の関係は至って順調だ。
順調なのだが。
「主殿〜! 次は何をして遊びましょうか!」
「ま、す、たぁ♡ 今日こそこの清姫と、あつ〜い時間を過ごしましょう♡」
「ねぇおかーさん! 今度ナーサリーたちとピクニックしたいねって話してるんだけど」
「ええ、ええ。美味しいサンドウィッチとパンケーキ、熱々の紅茶も持って行こうと思っているのよ!」
「マスター、バレンタインの時みたいに私がいっぱいパンケーキ焼くから一緒に行こうよぉ」
それ以外にもあらゆる女性サーヴァントたちが次々に、彼女の元を入れ替わり立ち替わり訪れる。
「わ、わ、ちょっと待って。みんな、順番に来て! 順番に!」
彼女の号令に女性陣たちは元気よく「はーい」と答えて、これまた律儀に一列に並んで各自順番を待ち始める。待つ間にお互い何をマスターとしたいのか、自分はこれをしたくて。一方では、自分は彼女でこれを試したくて、と手に持った小物類を見せ始め。
…………僕も、この列に並んだ方がいいのだろうか。
そう思うほどに彼女の前の列は長く、一人ひとりの用事もまぁ、それなりに長い。気軽に彼女に話しかけられる雰囲気ではない。
もしこの列に横入りするように彼女に声をかけてみたらどうなるだろうか。
「雑種! 今日は我の機嫌がすこぶる良い。なのでこれから物見遊山に我とで、」
「だめデース! 今マスターは私のお話を聞いてくれていマース! 横入りなんて、いけずなことしちゃだめデース!」
ぐきっ。
「あ、ああああ、ここコアトルさん! ストップ! プロレス技ストップ! 王様泡吹いてる‼︎」
つまり、こうなる。
今、キャスタークラスの方のギルガメッシュ王は、水着……じゃなくてサンタ姿の女神、ケツァルコアトルに四の地固めを食らっている。
「ウフフ、大丈夫よマスター。こんな程度じゃ英霊は死にまセーン! そうよね、ウルクの王様?」
「ぐっ……げ、ほ…………」
「死にかけてる死にかけてる! 王様! しっかり‼︎」
太陽の様に明るく笑う女神と、その下で顔面蒼白、泡まで吹いて気絶しかけている一国の王。
こんな様を見ればさすがの僕も命が惜しい。それ以前に、順番を待っている女性陣に申し訳が立たない。
ああ、ギルガメッシュ王に向けられている視線の痛さと言ったらそれは、もう。誰かが弓を引く音も聞こえる。おそらくかの女神エウリュアレか、女神アルテミスのどっちかだ。男性特効の名は伊達じゃない。
一旦出直そう。ここにいては何か巻き込まれそうだ。
まぁ、そういう訳で。ここ最近僕はめっきり彼女と触れ合える時間を失っている。
このカルデアにはなぜか女性のサーヴァントが多く召喚されている。男性のサーヴァントが全くいないという訳ではないのだが、割合としては女性の方が多い。戦線に立つサーヴァントもどちらかと言えば女性の方が多い気がする。
それぞれが一騎当千の力を持つサーヴァントだ。戦闘において性別などあって無いようなものではあるが、カルデアでの生活となるとまた違ってくる。
マスターの国には「尻に敷かれる」って言葉があるんだろう?
つまり、そういうことだ。
女性陣の方が何かと強いのだ、このカルデアでは。そもそも男女比関係なくマスターが女性である時点で、ここの力関係はほとんど決まったようなものだったのかもしれないが。
更に召喚された英霊の中には生前夫婦同士だった者もいる。そうなれば必然と、夫は妻の方に傾くというもの。良い例が項羽と虞美人の夫婦だ。
「虞よ、次はどこへ向かおうか」
「い、いえ、私はその……項羽様と一緒ならどこへでも……」
なんて光景を目にして、僕自身立香とデートが出来たらどれだけ良いだろうかと羨ましくなったことは記憶に新しい。
話しかけることすらままならないのに、デートというかどこかへ連れ立つことなど困難を極めている。
かと言って、他のサーヴァントたちが彼女に構うのを止めるのも違う気がする。
戦闘では一瞬の駆け引きで戦況が大きく変わる。そこに一瞬でも将と兵の間に疑心があれば、勝てるものも勝てなくなる。普段から皆と触れ合い、仲を深めるのは良いことだと思っている。
思ってはいるが……
「…………マスターとしての彼女の行動は間違っていない。間違っては、いない」
しかしそれでも、だ。
英霊となった身とはいえ、今現在の自分には心というものが一応宿っていて。その自分自身が願い続けてしまうのだ。彼女と一緒に過ごしたいと。
「……青二才じゃあるまいし」
自分に向けて放つ言葉も、何だか空虚なものになる。
一人の騎士として振る舞うならば、自分の欲など封じて一つの駒に徹するべきなのだ。しかし自分は今、彼女と恋仲にまでなってしまった挙句彼女に触れられないから、と何とも俗物的な理由で心を掻き乱している。
こんなはずじゃなかったのにな。
「……あら、珍しく浮かない顔なのね。それじゃあはい」
「あ、あな」
「はいチーズ」
パシャリ。
小さな機械音が廊下に響く。目の前には四角い機械と、それから伸びるハンドルというか棒というか。長い棒を持って立つ、真っ白なロシアの皇女。
「……アナスタシア、君」
「ええ、こんにちは。アーサー」
ふふふ、と笑いつつ機械の画面を指ですいすいと動かして何やら確かめている。
「珍しい顔ね、貴方らしくもない。おかげで私の自撮りコレクションが増えたというもの。ありがとうと言っておくわ」
そう言って機械の画面を見せられると、そこにはにっこりポーズを取る皇女と、振り向きざまに陰鬱な顔を貼り付けた自分自身。
「……これ」
「ふふ、到底マスターには見せられない顔ね。騎士王様の名が泣いてしまうわ」
「消してくれ、と頼んだら君は消してくれるのかい?」
「まさか。普段から凛々しい騎士王様の鬱々とした顔なんてレア中のレアよ。消すなんてもったいないわ」
「………………… 」
消してはもらえなさそうだ。
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省略
(完成版は後日pixivに投稿)
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赤みの差す頬に手を添えれば、また一段と彼女の頬は赤くなる。
「今日の君もとても可愛いね」
「か、かわっ……あ、そのっあ、ありがとう」
久しぶりに正面から見た。やはりいつ見ても可愛らしいことに変わりはない。
「あ、あの、あのっ、いいい椅子をどうぞ……」
「……ああ、そうだったね。失礼した。では遠慮なく」
「う、うん……な、なんか久しぶりな気がするね? 今日はどうしたの?」
彼女と向き合うように座る。さっきまではあんなに自分らしくなく緊張していたのに、彼女を一目見てからは自然と落ち着いている。
目の前に、立香がいる。
それだけでこうも満たされてしまうのだから、自分はかなり単純だなとさえ。
「今日は君にお願いがあって」
「お願い? どんな?」
私に出来ることならいいんだけど、と姿勢を正している。