ハロウィンネタのプサぐだ♀です。
赤ずきんの仮装をするアーサー(スカートではない)と狼の仮装をするぐだこちゃん(デンジャラスビーストではない)
今年のハロウィンに滑り込み…という問題ではなくなってきたので、これは来年のハロウィンに間に合わせるために今書きます。(?)
11/24 書き終わりました。来年のハロウィンに無事間にあいました。こちら加筆修正の上、支部に投稿済みです。
「アーサー!」
 お菓子といたずらを求めてあっちへこっちへ。
 いつもはシンプルとしか言いようがないこのカルデアの廊下も、今日ばかりは控えめながらかぼちゃやこうもりのオーナメントやら何やらで彩られる。真っ白な管のようなこの空間が僅かばかりの色を灯したことに、自分でも気づかぬうちに心が躍ってしまう。
 そしてそんな廊下の先で見つけた、長くて赤いローブをまとった人影に向けて私は走り出す。
 普段の恰好とは百八十度違うけれど、きらりと輝く髪の毛と頭のてっぺんから覗くちょこんとした毛先に見覚えがないはずがない。
「おや、マスター。こんにちは」
「こんにちは、アーサー! ……あ、ハッピーハロウィン!」
「ああ、ハッピーハロウィン」
 今日だけの挨拶を交わして、二人で笑い合う。二人分の笑い声が静かに廊下に響く。
「立香は……狼の仮装、なのかな? よく似合っているよ」
 アーサーは私の頭の上と、手元にちらりと視線をやると、そう聞いてきた。
「ありがとう! そうなんだ、今年もどんな衣装にしようか迷ったんだけど……ダ・ヴィンチちゃんやマシュに勧められて。今年は狼にしてみました」
 そう言って自分の頭上に右手をもっていく。多分この辺かなという部位をふわふわと触る。
「もう少し左だよ」
「えっ、この辺かな」
 すると何かにぶつかったような感覚。多分これが耳かな。
 今日の私はどうしても自分の頭上を探るだけで手間取ってしまう。どうしてそうなのかと言えば。
「耳だけならともかく、手まで狼を再現しているのはすごいね。凝った衣装なんだというのがすぐ分かったよ」
「えへへ……まぁちょっとこういう風に細かい動作が難しくなっちゃうんだけどね。今日ぐらいはいいかなって」
 自分の両手を見つめる。私の手はふわふわで覆われていた。ふわふわ、というか狼の手を模した手袋みたいな。自分の手が通常の何倍の大きさにもなっていて、見た目は確かにかわいいんだけど物を掴むとかそういうのは大変だ。
「見て。ちゃぁんと爪まであるんだから」
「へぇ、こんな細かいところまで」
 ふわふわの地から伸びる、プラスチックでできた爪をアーサーに見えるよう構える。なんというかこう、「がおー」ってする感じ。
 この頭の耳と手袋が、私が狼の仮装をしているとはたから見ても分かりやすい部分。あとはフリルのついたシャツと同じくフリルのついたタイ、花の刺繍が施されたコルセット、そしてそこから濃いめの茶色のスカートがふんわりと広がっていく。上着ももこもこした生地で作られているから、そこも狼らしい部分かな?
「あっ、ちゃんと尻尾もついてるんだよ」
 思い出したように後ろに身体を翻す。これでアーサーには、背中側のコルセットについたフェイクファーの尻尾が見えているはず。
「……本当だ。リボンもついて、可愛らしいね」
「ふふっ、でしょ? 私もこの衣装が可愛くて気に入ってるんだ」
「さっきも言ったけれど、よく似合っているよ」
「ありがとう、アーサー」
 身体を戻して再びアーサーと向かい合う。そういえば、と思って彼の仮装に上から下まで視線を向ける。
「アーサーの衣装は何だか意外だね。普段青系の服だから、赤って新鮮」
「そうだね。僕も普段着ない色だから、何だか新鮮な気がするよ」
 そう言ってアーサーは両腕を広げてみせる。深みのある真っ赤なローブの下からは、胸元にフリルがついた七分丈のシャツと茶色のリボンタイがちらりと覗く。昔の貴族の人が着てそうなデザインで、フリルのついたシャツなんて人を選びそうなのにばっちり着こなしている。下は茶色のパンツで、それもまた普段の彼が着ないような。あとお菓子が入った籠も持っていて、さながら赤ずきんを男の子にしたような衣装だ。
 まぁ実際、彼の仮装は「赤ずきん」だとダ・ヴィンチちゃんから聞いていたんだけど。
「赤ずきんの仮装をするって聞いてたから、どうなるのかと思ったけど……」
「僕もまさか女の子の仮装をするのかと驚いたけど、女史が上手くアレンジしてくれて助かったよ」
「アーサーは元々参加する予定じゃなかったもんね。急に決まったし、ダ・ヴィンチちゃんも悪いと思ったのかな」
「他の男性陣の仮装も、女性のキャラクター基に衣装をデザインしていたね」
「へぇ! 面白そう、あとでみんなのところに見に行かないとだね」
「まだ他のサーヴァントたちには会っていないのかい?」
「ううん、バニヤンとジャンヌ・リリィとナーサリー、ジャックと会ってきたよ。みんなで三匹のこぶたごっこしてたの」
「三匹のこぶた……というと、確か家を壊されるこぶたたちの話……だったかな?」
「そうそう。私は狼の仮装だし、ジャンヌ・リリィとナーサリー、ジャックがこぶたの仮装してたから。運良くキャラクターが揃ってたんだよね」
「あれ、バニヤンは? 彼女も一緒に遊んでいたんだろう?」
「バニヤンはね、家の仮装をしてたよ」
「……家」
「うん、家」
「家、というと」
「三匹目のこぶたが住むれんがの家の仮装。頑丈で私なら吹き飛ばされないもんって言ってた」
「……確かに、彼女ほど強固な家はそうないだろうね」
「ふふっ強そうな家だったよ〜」
 さっきまでの四人とのやりとりを思い出して、つい笑いがこぼれる。「がおー!」と家なのに四つん這いになって唸りを上げる大きくなったバニヤンと、その後ろに隠れるようにして「家」に逃げ込んだ三匹のこぶたの姿。その光景の微笑ましいことといったら! 自分は母親などではないけれど、こう……その愛らしさは自分が守らなければ、という気にさせるものがあった。いや、守ってもらうのはただの人間である私の方なんだけど、それは置いておいて。
「それにしてもアーサー、童話のことよく知ってるね。勉強したの?」
 聖杯からの知識があるとはいえ、作家でもないアーサーが童話の内容までよく知っていることに少し驚いた。
「ああ、図書館で少しね。さすがに何も知らないまま仮装をするのは、衣装を作る女史に申し訳ない。それに、どんな物語なのか知っておいた方がより楽しめると思ってね」
「なるほど〜」
「最初は『赤ずきん』だけの予定だったのだけど、途中から紫式部にいろいろおすすめされてね。ある程度の童話については内容を知っているつもりだよ」
「遊びのためとはいえ、勉強熱心だねぇ」
 何となく、物語に興味を持ったアーサーに対して感激のあまりいろんな本を山のように勧める式部ちゃんの姿が頭に思い浮かぶ。式部ちゃんはやはりというか何というか、物語全般に対して興味を持たれるとすごく嬉しそうにするから。先日の夏にあったホラーな事件で彼女の物語に対する造詣の深さに改めて触れたのだ、想像に難くない。そしてそれに対して真面目なアーサーは勧められた本全てに目を通したのだろう。
「まぁ最初はこのイベントのため、とは思っていたけれど……読んでみると案外面白くてね。つい一通り読んでしまった、というところかな」
「式部ちゃんおすすめの童話かぁ……それは面白そうだなぁ」
「他にもまだまだおすすめがあるようだったから、今度一緒に彼女のところへ行こうか?」
「本当⁉ それはぜひご一緒したいかも!」
 今日はハロウィンが一大イベントではあるけれど、その先にできた新たな予定に私はさらに心を躍らせる。
「でもそっか、アーサーが童話に詳しいのも納得。いい先生に教わってたんだね」
「そうだね。紫式部には改めてお礼を言わないといけないな」
「『赤ずきん』のアーサーに、『狼』の私……あと『おばあさん』と『猟師』がいたら赤ずきんできるね」
 指折り数えてそんなことを言うと、アーサーはきょとんとした表情になる。少し考えるような沈黙のあと、何かひらめいたように口を開く。
「……ああ、バニヤンたちの時のように劇でもしようか、というのかな?」
「まぁ劇っていうよりも、せっかくだからキャラクター勢ぞろい~ってなってたら面白いかなって」
 少し照れ臭くなって、えへへ……と笑う私にアーサーもにっこりと微笑む。
「『赤ずきん』の話は確か……赤いずきんを被った少女が、おばあさんに化けた狼に食べられてしまうんだよね」
「そうそう。で、それに気づいた猟師が狼を撃ってお腹の中の赤ずきんとおばあさんを助け出して、最後は二人が出てきたお腹の裂け目から石をいっぱい詰め込んで、糸で縫い閉じて、川に捨てるっていう……結構終わり方は残酷だけどね」
 今日は自分が狼の仮装をしているせいか、何となくお腹の辺りが寒くなって両手でさする。それを見たアーサーは「大丈夫だよ」と私の考えを汲み取ったように笑いかける。
「さすがに君にそんなことをする者がいたら、それこそ一大事だ」
「そ、それはそうだけどさぁ……」
「もしそんなことがあったとしても、僕が守るから」
 ね? と同意を求めるように見つめられる。しかも、思っていた以上に真剣な眼差しで。
 予想外の返しに、ドクン! とつい心臓の動きが早くなる。例え向こうが赤ずきんの仮装をしていようと、その中身はかっこいいかっこいい騎士王様なのだ。照れないわけがない。
「……ッ、アーサーはさ、そういうとこ、ずるい」
「? 何か変なことを言ったかい?」
「……気にしなくていいです」
 そしてこの人の性質が悪いところは、意識して行った発言ではないというところだ。本当、私の心臓がもたない。
 でも何となく悔しくて。だって今日は私が『狼』で、アーサーが『赤ずきん』なのだから。
 キャラクターの立場から言ったら、強いのって私の方じゃない?
 実力とかを持ちだしたら議論にもならないけど、キャラクターの立場だけで言ったら襲われる側はアーサーの方なのになぁ。
 せっかくのハロウィンなのだし、ここは一発……
「アーサー」
「? なにか、」
「とうっ!」
「ッ⁉」
 私のとっさの動きに倒れず踏ん張ったのはさすがというか、なんというか。まぁ代わりに彼が持っていた籠は地面に落ちてしまったけど、仕方ない。
「……立香」
「…………えへ」
 今の私とアーサーを一言でいうなら、おんぶに抱っこ状態、と言えるのかな。私はアーサーの名前を呼んだ後、踏み出した一歩に体重を乗せて思い切り彼の首元に向けて飛びついた。さすがのアーサーも、まさかいきなり私がこんなことをすると思っていなかっただろう。一瞬焦ったような声が聞こえて、私は「やったぜ」と言わんばかりに気持ちがいい。でも彼がさすがなのはいきなり私が飛びついたにも関わらず受け止め、さらにその後私の背中と膝裏からお尻にかけて腕を回し抱きかかえるように体勢を整えたところだろうか。結果的に彼の腕に腰かけているような状態になったが、おかげで首にぶら下がるよりも随分楽な姿勢がとれている。
 まぁ、そのおかげで今少し冷たい視線を向けられてしまったけど。
「ほら……今日はハロウィンだし、いたずら、とかね?」
「……でも、いきなり飛びかかるのは危ないから。次は」
「………………」
「……立香?」
「……あんまりアーサーを上から見ることがないから、ちょっと新鮮だなと思って」
「……誤魔化されないよ」
「びっくりした?」
「……ああ、驚いたよ。まさか君からそんな大胆なアプローチをされるなんて思わなかった」
「ふふっ私だって、たまにはそういうことも出来るんだから」
「でも次は、もう少し安全な方法で頼むよ。僕の心臓に悪い」
「うーん、考えてはみるかな」
「お願いするよ」
「……あ、そうだ」
「? 他に何か?」
 ハロウィンのいたずらついでにもう一つ。今飛びかかったことに比べたら大したことはないいたずらを思いつく。
 まぁこの姿だし、アーサーもいることだし。せっかくならやっておかなきゃ。
「ふふふ」
「立香?」
「アーサー」
「何だい?」
「食べちゃうぞー!」
 さっきよりは控えめに、彼に抱きかかえられたままガバッ! という音がしそうな勢いでアーサーの首元を引き寄せる。
「…………」
「ふっふっふ……アーサーは今日は『赤ずきん』なんだから。油断してたら私に食べられちゃうよ!」
 いたずら再度、大成功! やった!
 その嬉しさに私の心はまた踊りだしたのだが、いくら待ってもアーサーからの反応がない。
 あれ……?
「……アーサー?」
 さすがに何か反応が返ってくると思ってたんだけど……ここまで反応が無いと、何だかこっちが少し恥ずかしくなってくる。
「ねぇ、アーサー。アーサーってば」
 引き寄せていた腕から解放して、彼の顔を覗き見る。するとすぐさまエメラルドのような緑色の瞳と目が合う。
「あ、あの……?」
「立香、気を付けなければいけないのは君の方だよ」
「えっ」
 ……あれ、何か怒らせてしまった?
 さっきまでと違う彼の表情と雰囲気に少し怖気づく。どうしよう、何か地雷を踏んでしまっただろうかとぐるぐる考えても正解かどうかは分からない。そんな私が二の次の言葉を発せられるわけもなく、アーサーは更に言葉を畳みかける。
「確かに今日の僕は『赤ずきん』だけど、同時に君は『狼』で狩られる側なのだから」
「……?」
「僕としては……こんなに可愛らしい『狼』を誰かに殺されてしまうというのは、許しがたい」
「は、はあ」
「だから猟師に……いや、誰にも見つからないようにどこかに隠してしまわないと」
「え……えっと……」
 ……何だろう、心なしか話の展開が怪しくなってきた気がする。あれ、私、今少し危ない状況なのかな……?
 逃げ出そうにも、彼が私の身体を支えているのだから脱出など出来るわけもなく。冷や汗が頬を滑り落ちていく。
 そんな私に、彼はただにっこりと微笑みかけるだけ。
「……あの、アーサーさん?」
「君からせっかくいたずらをもらったんだ。僕もそれなりのものを返すべきだよね」
「……ううん、返さなくていい。いいから、私、ほ、他の場所行ってこようかな~なんて……」
「せっかくのハロウィンだけど、こんなに可愛らしい君を独占できるのも今だけだから……他の皆には悪いけど、今日は僕といてほしいかな」
「………………い、今それを言う⁉」
 なんかやばい。これやばい。そう思ってもっと反論しようとするけれど、既にアーサーは落ちた籠を拾いどこかへ向けて歩み始めていた。
「えっ、待って。アーサーどこ行くの?」
「どこって……僕の部屋だよ」
 さも当然のように。しれっと言い放つ。
「確かに今日の君は食べる側だけど……本当に食べられるのはどちらだろうね?」
 その一言は、もはや私にとっては死刑宣告に近かった。一方でアーサーの表情は大変にこやかで、事情を知らなかったらすごく良いことがあったんだなと思ってしまうほど。
 一歩ずつ近づくたびに私の心臓が早鐘を打つ。そのスピードが徐々に上がっていくような錯覚すら覚える。
 ………………どうやら私は、アーサーの「何か」を踏み抜いてしまったらしい。
 部屋のドアが開いて、ベッドに下ろされた私はもう全てを諦めたように、近づく彼の唇を受け入れた。
~おしまい~
食べられちゃいましたね。続きは多分、そのうち書きます。
来年のハロウィンに間に合いそうで安心しました。
Latest / 225:17
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プサぐだ♀:狼さんは赤ずきんさんに食べられてしまいました
初公開日: 2020年11月04日
最終更新日: 2020年11月25日
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ハロウィンネタです。一週間以内だからせふせふ。
クロスオーバー「聖杯のレヴュー」
私が楽しいクロスオーバー2つ目。少女歌劇レヴュー☆スタァライトとFGOです。
リュックでか子
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