ミチルより先に目を覚ましたのは、随分久しぶりのような気がする。ふだんはミチルが起こしに来てくれるから、それに起きられない振りをして(本当に起きるのが辛いこともあるけど)構ってもらうう。
昨日、この子と、ついに繋がった。
ミチルの感情に気づいていながらそれに気付かないふりをしていた。何せまだミチルは子供だ。南の魔法使いである俺が、善良な判断を出来ないっていうのはいけないだろう?なんて、建前のような言い訳を作るけど、本当のところはまた別だ。......俺が、この子に本気になろうと思ったから。愛には誠実であるべきだ。だから、俺はこの子供が大人になるのを待とうと、そう密かに決めた。そんな時期をようやく過ぎたのだから、許されたい。もう何年何千年と生きてきて、こんなに忍耐を強いられる数年はなかった。褒めてほしいくらいだ。
頬杖をついて、未だ眠っているミチルを見つめる。まだまろい頬はこどもの名残を残している。もしかしたらミチルはずっとこのかわいいほっぺたのままかもな、そうだと嬉しいんだけどな。つい目元が緩む。かわいいかわいい俺のミチル、いつまでも美味しそうなままでいて。
「......美味しそうだ」
俺の右側でミチルは眠っているから、右頬が近くになる。その頬に、ただ触れるだけのキスと言えるのかとも思ってしまうくらいのキスを落とす。柔らかいし、サラサラすべすべで、温かい。そのまま角度を変えて、何度かキスをしていると、ミチルの吐息のような声がする。昨日の今日だから、きっとまだ体は敏感なのかもしれない。今はいやらしい気持ちなく触れてるんだけどな~!期待されちゃうと答えてしまいそうになるな!ニヤニヤしながらも、そのまま、また頬に唇をつける。今度は唇でやわく食むようにして触れた。よく比喩表現で食べちゃいたいとは言うけど、この食感はたまらないな、確かに食べたくなるのもわかるなと微笑ましく感じる。
さて、頬は堪能したから、今度は小さな鼻を食べてやろう。鼻のてっぺんに自分の鼻を擦り付けて、親愛の鼻キス。よく猫たちがしてるアレを人がすると、距離の近さとか視線の交わりとかいろいろ考えてしり込みしてしまうな。自分の鼻を離して、今度は唇で触れる。すこし音を立てて、ちゅ、と響かせてみたけどミチルはまだ起きない。かなりぐっすり寝てるなあ。当たり前だ、普段が大きかったんだろう。受け入れる側はどうしたって負担が大きく痛みや圧迫感を感じてしまう。そうしてまで受け入れたいと思ってくれることに本当に感謝だ。ありがとう、と意味を込めてもう一度鼻にキスをした。
その後は額。いつもは前髪で隠れている額は白くて滑らかだ。額にも唇で触れる。少し長めに触れた後、少しだけ舌先で撫でた。ミチルの体はそれに反応してビクリと体を揺らす。......もしかして、起きてる?
「なかなか起きないなあ」
わざとらしく声に出してもミチルはまだ目を開けなかった。寝てる?いや起きてると思うんだけどな。そのまま何度か額にキスしてはちろりと舐めていたら、額が少し濡れてしまった。着ていたパジャマの袖で少し拭う。
ミチルはまだ目を開けない。これはもう意地になっているんだろうな。人差し指の腹でミチルの唇を優しく撫でる。顔を寄せて、額をくっつける。
「......さて、そろそろ起きないとな」
言いながらベッドから降りて、着替える。俺がいつもの格好に着替え終わってベッドを振り返ると、少し恨めしそうな顔をして、頬を赤らめているミチルと目が合う。
「おはよう、ミチル」
「おはようございます!」
ニッコリ微笑むと、ミチルは少し頬をふくらませてから、体を起こした。痛みがあったのか、少し眉を顰める。
「どこか痛む?」
「あ、いえ、大丈夫です......それより」
「ん?」
キッと俺を見上げてミチルは拗ねたような声を出す。
「どうしてくちびるにはキスしてくれないんですか」
その言葉に、つい笑ってしまった。やっぱり起きてたな。きっと、途中で起きたけど恥ずかしくて目を開けられなかったんだろう。そのかわいさに免じて、ご褒美をあげなくては。
「どうぞ、お望みのままに」
ミチルの肩に手を置いて顔を近づけると、ミチルは大人しく目を閉じた。淡いピンク色の唇を少しだけ舐めてから、そっとその唇にキスをした。
おわり