創作キャラクターのマスターとリリスの小話です。
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――すっかり何かが抜け落ちてしまったようだ。
どっとのし掛かる疲労感に苛まれながらソファに埋もれ、蝋燭の火をぼんやりと眺めて物思いに耽る。
かつてはこういう時に死にたいほどの虚脱感も感じていたが、今ではそれも薄れてしまった。
あるのは、ただひたすらに重い重力と、指先一本動かしたくなくなるほどの脱力感。
それだけだった。
こんな事に、慣れてはいけなかったのだ。
本来なら生業としていない限り慣れるべき事ではないだろうし、日に日に自分が道徳というものから踏み外れていき、その事でさえ忘れてしまいそうになっている。
右腕に残る火傷痕を撫でながら、それでもこの道を選んだのは自分自身なのだと、改めて戒める。
何度も何度も、足を洗おうと考えはしたのだ。
もうこんなふざけた事は止めて、月並みではあるが、清く正しく誠実に生きていこうと反抗した事があった――今では懐かしい、苦い思い出だ。
身勝手な自分の気持ちを尊重し、反抗した結果、制御しきれずに傷つけた。
自分も、他人も。
その戒めとして残したこの火傷痕は、言うならば枷であり、十字架だ。
こうして生きていくことを選んだ自分の浅はかさを顧みる為の、一つのシンボルとも言えるだろう。
あの時ああしていれば、こうしていれば。
そんな後悔が尽きないのは誰もがきっと同じだろう。
一つの選択で、こうまで人生が一変してしまうだなんて誰が思うだろうか。
あの瞬間まで、自分は善良な一般人だったのだ。
彼女が現れるまでは。
視線を落としていた蝋燭の火が風を受けて細く揺らぐ。
顔を上げると、ドアを薄く開いて中を覗き込んでいるリリスと視線がかち合った。
目が合った彼女が、しまったという顔をしたのはほんの一瞬だった。
彼女はドアの向こうで姿勢を正すと、まさに今来たのだという顔をしてドアを開け、堂々たる足取りでソファの傍へと歩み寄ると、俺の顔を覗き込んでくる。
「あら、もう済んだのね」
白々しい、済んだ事などとっくに分かっていた癖に。
ニヤニヤと嫌らしく笑いながら言ってくるのは別段いつもと変わらないはずなのに、それすら鬱陶しく感じてしまう。
「ああ……」
流石に疲労の色を隠せずにただ一言返事をすると、その表情からサッと笑みが引いた。
同時に、揶揄うような声音が、気遣ってのものに一変する。
「……つらい?」
つらくない訳がない。
昔よりは数が減ったとはいえ、根こそぎ搾り取られるこちらの身にもなってくれ。
――これも、何度も繰り返し伝え、ぶつかった事のある言葉の一つだ。
これを言った時、散々揶揄われたものだ。
言う割に良い反応をするだなんて言われた時は、本気で消息を絶ってやろうかと思った。
それも半共同体として存在している以上叶わないのだと気が付き、心底幻滅したものだ。
「どうだろう、よく分からないな」
「そう……」
リリスは神妙な面持ちのままベッドに腰掛けると、同じように蝋燭の火に視線を落とした。
――ここ最近の彼女は、よくこういう顔をするようになった。
ようやく人の人生を振り回したことに気が付いたのかと、どこか胸がすくような気持ちにもなるが、その反面、どこか危うげな彼女を心配している自分もいた。
昔は恨んだ事もあったが、今は。
今は……どうなのだろう。
果たして自分は、心の底から彼女を恨んでいないと言い切れるのだろうか。
少しだけ目を閉じて今まであった事を振り返ってみるが、次々に思い出されるのは、とてもじゃないが良い想い出とは言えないものばかりで――自分は今も、どこか彼女を恨んでいるのかもしれない。
「ごめんなさい」
目を開けて顔を上げると、その目に涙を湛えて表情に影を落とす彼女の姿があった。
流石にそれは、ずるいと思う。
どうしたって心が痛むし、恨みたくても、怒りたくても、これじゃあどうしようもないじゃないか。
このやり場のない気持ちを、俺はどこにぶつければいい?
――などと喚いたところで過去は変えられないし、彼女に出会わなければ成し遂げられなかっただろうことだって、沢山あるのだ。
お陰で普通とは言い難い身の上となってしまった訳だが、お互いしたくてした訳ではなかったのだ。
そう言い聞かせながら、俺はただ一言こう言うしかないのだった。
「……いいんだ」
もう、全ては過ぎたことで、どうせ後戻りなんて出来ないのだから。
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読み返して、全力で改訂していきます。
一週目終了、二週目いきます。
まぁ、これでいいでしょう!
お試し終了になります、お疲れ様でした!
後ほどTwitter、サイトの方にも転載しようと思います。
前回作った小話は、文庫メーカー、ですか?だらだら全文画像にしてしまったので、今回は一部抜粋にしてみようと思うの。
良いアピール方法が分かりません、迷走。
…アピールする程の大作ではありませんが…。
ありがとうございました!
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短編1
初公開日: 2020年04月17日
最終更新日: 2020年04月18日
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