でどばの単語につられて来てしまう人のために説明しますが、わたくしはとある実況者さんのでどばキラーが好きなのでその人を知らないとわからないことを書く予定です。名前の頭文字さえ出てきませんが、その前提で書いておりますゆえ、悪しからずご了承お願い致します。
ああ、神様!
どうして自分なのか、と何十回目にもなる疑問を頭に巡らす。ただ運が悪かった、それだけならばあんまりな仕打ちだ。ふらりとバスを降りてしまったこと、植物につられて山の中へ足を踏み入れたこと、霧が出てきたのに足を止めなかったこと、全てに対してなぜやってしまったのかと唇を噛む。後悔したところで時間が巻き戻ることはないが、現実から目を逸らさなければ頭がどうにかなりそうだ。後ろから迫る恐怖と向き合いたくない。またヒュ、と耳の横をかすめて斧が飛んでいく。ああ、斧!斧!斧なんて実際に見るのは初めてだ!この空間で常識が通用しないのは今自分の後ろに迫る彼女のおかげでよくよく理解させられた。欠けた兎の仮面をつけ、2メートル以上あろうかという背丈に重たそうな斧を持ち、鼻歌さえ歌ってこちらを追い立てる。そういうものなのだ、と教えられた。ただ生き延びることを考えろ、と念を押された。前後不覚の霧の中、辿り着いたその先にいた焚き火を囲む彼ら3人に。だが彼らはもうどこにもいない!
脱出する方法を教えてくれた眼鏡の彼も、持っていけと救急箱を渡してくれた音もなく窓枠を乗り越える彼女も、負傷した自分を救ってくれた老人も、一様に蜘蛛の足に似た何かに突き刺され真っ暗な空へと連れ去られてしまった。
同じ人間かも定かでない殺人鬼に斧で斬り付けられあろうことか大きなフックに吊り下げられる。あれはまるで生贄の儀式のようだ。体に穴が開くと自分はこんな声を出すのだと初めて知った。斧で裂けた皮膚の痛みも抉れて見えた骨の色も流れる血の生暖かさも、時間の経過で張り付く服の不快さも。今までもこれからも知りたくもなかったことの数々が自分を狂気へと陥れようとする。
まだ脱出の扉は開かない。まだ直さなきゃいけない発電機がある。だがもうそれも叶わない。今、自分は逃げている途中なのだ。
跳ねる泥水、痛む腹、軋む体、喉から血の味がせりあがってくる。霧の立ち込める、鬱蒼とした森。自分にこんな力があったのかとまだ動く足に驚きを隠せない。自分の他に響く足音。忙しなく慌ただしくぐちゃぐちゃとぬかるんだ地面を蹴り飛ばす自分の足音に比べ、一歩一歩踏み締めるような優雅にさえ聞こえるそれは、一定の距離を保ったままけれど決して遠ざからずに自分の耳に届く。自分の息はこんなにも切れているというのに耳に聞こえる歌声は終始変わらない。
「どこへ行こうというのかね?」
突然、低い男の声が聞こえた。思わず後ろを振り返る。月明かりの指す中、兎の耳が逆光によってよく見えた。変わらない姿だ。逞しい腕が振り上げられその先に握られた斧の切っ先が光った。
思わず左によければ頭があった位置を、回転する斧が通り過ぎる。怖い、怖い、後ろから迫る殺気が、先の見えない孤独が、鼻歌に混じる低く轟く笑い声が。神様、どうか、と願えばそれを嘲笑うかのように投げられた手斧が自分の足元に突き刺さる。少しでも掠れば、途端に自分は糸の切れた人形のように動けなくなってしまうだろう。
だが彼女の持つ3人もの血が染み込んだ斧が、自分の背中に食い込むのも時間の問題だ。何か、何かと探すその先にほとんど外枠だけ、なんとか雨風だけ凌げるような小屋が見える。あそこに立てかけられた木の板を倒せば、少しは時間稼ぎになるかもしれない。
あと少し、もう少しだけとつまずきそうになる足を叱咤する。小屋と地面の境を跨いで何のためか立てかけてある木の板を倒す。蹴り飛ばされたら終わりだ。でも少しでも時間が稼げれば、と迫る殺人鬼を見上げた。
そして見た。
兎の仮面の隙間から覗く赤い瞳。ぎらぎらと輝くそれの下に覗く口元は歪んだ笑みを称え、真っ直ぐに掲げられた赤茶けた刃物が、足を止めた自分の元へと飛んできた。
肩に受けた衝撃そのままに視界が逆さまになって地面に叩きつけられた。全身がじんじんと痛み振動が脳髄まで響く。自分の体がどうなっているかがわからない。肩から先がなくなったかもしれない。目だけが落ち着かず動かせる範囲を見渡すが、頭はまだ痺れているのか何も情報が掴めない。木が割られる音が聞こえた。血の気がひいてくのを感じていると体が浮いた。鼻歌が嫌というほど大きく聞こえる。
嫌だ。これを自分は知っている。この次に何をされるのか、デジャヴのように思い出されるそれは数分前に自分の身に降りかかった現実だ。あらん限りの力を振り絞ってもがくが逞しい腕がそれを許さない。嫌だ、嫌だ。先に連れて行かれた仲間たちの最期、必死の抵抗も虚しく体を貫かれだらりと垂れ下がった腕、見開かれた目、だらしなく開いた口。自分ももうすぐそうなるのだ。ここで死んだら天国へ行けるのだろうか。一生暗闇を彷徨うことになるのだろうか。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
涙で全てがぼやけ始めた瞬間また浮遊感を感じ、体に衝撃が走る。びちゃ、と顔面を強かに打ち付け、眼鏡が歪んだ。湿った土の匂いから降ろされたのだ、と理解する。目の前には蓋の空いた入り口があった。どす黒いもやが立ち込めおぞましい音が響いている。顔を上げると自分をここまで運んできた当人と目があった。未だ瞳はぎらぎらと輝いているが、何かをしてくる様子はない。ここに入れ、ということだろうか。ここに入ったら、何が起こるというのだろうか。
「君は特別だ」
上からまた低い男の声がした。驚いて顔を上げても微動だにせずこちらを見やる兎の仮面しか見えない。呆けて見ていれば口角が上がり、白い歯が覗く。
「また仲間を連れて遊びにおいで」
低く脳にまで響く声が、その口から発せられた。女、ではない。この男は、一体なんだというのだ。またとは一体どういう意味だ。赤い瞳がまたぎらぎらと輝きを増すのを感じる。酷く楽しそうに、まるでゲームに誘うこどものように、またおいで、とこの男は言うのだ。怖い。動く片腕、足をなんとかずり動かし目の前のもやへと近づいていく。これは夢だ。全部夢だ。きっと目を閉じれば全部終わる。ただの悪夢としていつか忘れられる。きっと、きっと。
軋む体も肩に走る痛みも地面の冷たさも全てがこれは現実だと物語っているのにそれらを無視して体を動かした。そうでなければこんな恐ろしい穴に飛び込めやしないから。これで終わり、おしまい、大丈夫。穴に飛び込むその瞬間、聞こえた言葉に頭をひねった。
「またな!」
先程と同じ男の声。
だというのに、どうしてこんなにも安心して、勇気づけられてしまったのだろう。
はいおしまい、おねんね。
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でどばもどきの実況者もどき(終)
初公開日: 2020年04月11日
最終更新日: 2020年04月12日
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テキストライブという新境地の繁栄を願って。楽しいことがしたいねえ。
墓場にて
タイトルはおいおい考えよう。 初めてスキ!なんてされてしまって今日は記念日にしようと思ってたのに日付…
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