うんうんと頭を悩ませながらソフィは本のページをめくっていた。
開いているのはぶ厚い料理の本、たくさんの料理が載っているその本の中から探しているのは、週末に迫ったパーティーのための料理だった。普段の食卓の料理は慣れたものだが、特別な日の料理はまだレパートリーが少ない。
「……辛いものは、苦手な人もいるし、あまりかたいものもちょっと」
そうはいっても、普段の料理とは違う感じのものを作りたいという気持ちがある、美味しく皆に食べてもらいたいし、それに――すごいですねと言われたい。誰にというわけではないけど。
一人のイメージがわく頭の中から軽く首を振ってそれを追い出し、ソフィは料理の本に目を戻した。
と――机の前に影が差し、視線を上に上げる。
「あ、すみません、影になりますね」
「……あ」
追い出したはずのイメージがそのまま具現化したひとと目が合い、ひゅっと息を飲む。
ヒースはそんなことは知らないので、机の横に移動し、ソフィの肩越しに本を覗き込んできた、とても、近い。
「料理の本ですか、どれも美味しそうですね」
「は、はぁ、そうです、ね」
「今日の夕飯ですか?」
耳に息がかかり、緊張が最高潮に達する、待って、少し、離れて、というソフィの思いは通じるはずもないのだが、それでも念を送ってしまう。
「週末のパーティーの料理で、その、何にしようかなって」
「へぇ、さすが勉強熱心ですね」
「な、何か好きな食材とかありますかヒースさまは」
ううん、と考える音が耳元でするのが、心臓に悪い。
「ソフィ殿の料理なら、なんでも……好きです」
料理のことだ。
分かっていても脈拍が早くなり本から目が離せない、ヒースの方を向くなんてとんでもない、顔が全てを語ってしまう。
「楽しみにしてますね!」
本から目を離さないソフィを見て、ヒースは話を切り上げ部屋から出て行き。
ソフィは扉がしまった後、ぺたりと冷たいページに顔を落とし、インクの匂いを吸い込んだ。
おわり。