自分に死期が近づいていることは自覚していた。今日が月の劔の夜だ。
大きく息を吸い込んでも、空気が肺に入ってこないような息苦しさ。胸を詰まらせ、壁に手をつき、なんとか体を支えながら、空を見上げた。遠い空が徐々に藍色を帯び、地平線から染まり出した茜色と混ざって、その境界線に桃色を滲ませる。自分の影も赤くぼやけるのを見つめながら、俺はやはり、黄昏時は嫌いだと思った。
「恋罪人!」
鋭い声に続き、見覚えのある影が二つ近付いてくる。人の多い場所で、それも大声でそう呼ばれるのは嫌だったが、もはやそれを止めることもしなかった。
俺はただ蹲って、地面に顔を向けていた。影が視界に飛び込み、黒光りする靴が目の前までやって来て、立ち止まる。
顔を上げると、リデアの、落ち窪んだ目が悲しげにこちらを窺っていた。
「どうして?」
咄嗟に声が出ず、あらぬ方向に顔を背けた。どうして――それはまるでこれまでの自分の行い全てに対して問いかけられているような気がした。なぜこうなったのか、思い返せば長すぎて、一言も言いたくなかった。ただ、唇を無理やり動かす。
「死にたいんだ、死なせてくれよ」
いつのまにかソメルが隣にしゃがみ込んで、俺の腕を強く引こうとする。それを振り払って、組んだ腕の中に顔を沈めた。
「死ぬな」
「なんで止めるんだ。どうせ俺の友達でも仲間でもないくせに。どうせ俺のことを心配してるわけでもないくせに」
言い返すと、ソメルは押し黙って、それ以上何も言わなかった。リデアが胸の前で手を組んだ。
「まだ希望はあるじゃない。まだ夜じゃないわ。めげずに頑張ればきっと」
「めげずに頑張ったって何もいいことなんてなかったじゃないか」
そう言い終わるか終わらないか、頬に強い衝撃が走った。右の頬が燃えるように痛む――右? 左ではなくて?
手で頬を抑え、目の前を見て、はっとする。リデアが平手で打ったのだ、俺を。
「嫌なのよ」
彼女は泣いていた。泣きたいのは俺のほうであるはずなのに。立ち上がろうとしたが、それは叶わなかった。視界がぐにゃりと歪み、次の瞬間、平衡感覚を失って地面に仰向けに倒れた。それを誰か――恐らくはソメルが――受け止めたのを感じた。全身に力が入らない。ただ、目線の先で、暮れていく空の一番星と、リデアの涙が悲しげに煌めいている。
「私には恋はわからない。あんたのこと、異性として好きなわけじゃないわ。でも、大切だって思うのよ。だから、死んじゃ嫌よ」
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荒瀧古
はいkamさん早かった
01:07
荒瀧古
ご参加ありがとうございます!
02:02
kam
あらたきさん、ありがとうございますー!書けるところまでクライマックス執筆します!笑
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向き
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いきなり主人公が死ぬ場面
初公開日: 2019年07月14日
最終更新日: 2019年07月14日
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最後のシーンをいきなり書きます