鐘田(かねだ)健太郎の特技は、夢を共有できることだった。
 それは他人の夢に入りこむことができること。
「お母さん、今日空を飛ぶ夢見たよ!」
「あら、偶然ね!」
「お母さん、今日、イチゴケーキ食べた夢だったね!」
「お母さん、今日、」
「ごめん。健太郎。今日から一人で寝てくれる?」
 他人の夢に入りこむことができる。
 それは入り込まれた人からすると気味が悪い。
 健太郎の母親はそう思ったらしく、わずか三歳で健太郎はベッドで一人で寝ることになった。
 もちろん、寝る前の読み聞かせなどは続けてくれる。
 だけど、母親は眠らないように必死に本を読んでいた。
 その状態がおかしい、夢に入りこむなどありえないと父は思い、健太郎とある日一緒に寝た。
 父親と一緒に眠るのは初めて、健太郎は嬉しかった。
 彼が四歳の時だった。
 父親は母親ではない女の人と一緒にいた。
 そして、
 健太郎が目覚めて、泣き出した。
 そして父親は悟った。
 自分の夢を健太郎が共有したのだと。
 母親は専業主婦で、健太郎と一緒にいることが多い。
 夢のことを話されるかもしれないと、父親は疑心暗鬼に問われ、とうとう離婚してしまった。
 母親は荒れ、健太郎に当たるようになった。
 そういう環境で健太郎は育ち、自立するのは早かった。
 高校を卒業すると一人立ちした。 
 彼は顔が整っていて、高校生から隠れてバーで働いていた。
 そこから、ホストとしてお店に立つのも早かった。
 そうなると店以外でも営業することになり、彼は夜の遊びを覚えた。
 そして、うっかり寝てしまって、女性の酷い夢を共有してしまうこともあった。
 かといって、彼は仕事を辞めることなく、女性たちと夜の遊びも続けた。
 そうしてお金を稼ぎ、いいマンションに住み、いい生活を手に入れた。しかし母親とは縁を切った状態で、彼が実家に戻ることはなかった。
 二十五歳になり、彼は店の経営も任されるようになった。
 そうなると忙しく、眠る時間も削られる。
 女性の側で寝ると夢を共有して酷い目にある。
 また電車で寝て、隣の人の夢を共有してしまって吐きそうになったこともあった。
 だから、彼は公共の場で寝ることは決してなかった。
 しかし、その日、彼は徹夜明けで、気が付くと船を漕いでいた。
 そしてそのまま眠りに落ちてしまった。
 
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