赤い岩陰からじっと見ていると、落ちてきたそれは金属で出来ているらしいことがわかった。金属といえば「彼女」が知っているのはこの星のコアを形成する液状のもので、固体のものは見たことがない。
 さらに興味をそそられた「彼女」は、その金属の塊の様子をじっと観察していた。やがて金属の塊が割れ――「彼女」は思わず声を上げそうになった。
 生き物だ。金属の塊の中から、生き物が現れた。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。金属の塊から現れたのは、3体の生き物だった。
 「彼女」と比べるとずいぶん単純な形をしていた。肢が2対4本しかない。しかもそのうち2対は体の上の方からぶら下がったままで地面に着いていない。
「へんなのー」
 あんな生き物はこの火星では見たことがない。そもそも火星では生き物自体が――。
 「彼女」はどのくらいぶりかで心のなかに湧いてきた「面白そう」という感情がくすぐったく、第5肢で前頭部を掻いた。
 その日から、「彼女」の生活に新しいルーティーンが加わった。朝が来ると住処にしているバレーネットワークの側面の穴から這い出し、金属の塊のところへ行く。
カット
Latest / 35:46
カットモードOFF