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以下メモ
直哉体調不良系ネタ
夏油離反なし生存、灰原生存、甚爾生存
夏油東京高専教師、灰原東京高専所属呪術師、甚爾東京高専体育教師(秘匿死刑延長措置)
「禪院さんが、ッスか?」
「はい……」
ここは東京高専補助監督室
- 直哉が自分に対して当たりが強い、と感じる伊地知
- 新田と答え合わせするが、返事が基本「ん」なのは同じなようだ。
- ただ、新田の時は、基本的に何らかの書類に目を通しているという。
    - 「多分家の仕事なんじゃないっスかね?」
- 新田曰く、話はちゃんと聞いているという。それは伊地知も同様の感想だ
    - 新「あまりにも適当に返事されるんで、適当なこと言ったら『仕事せんのやったら降りるで』って言われたっス」
    同僚補助監督「勇者過ぎるだろ」
- 伊地知の時は、基本的にどこかを睨みつけている。バックミラー越しに睨みつけられることもある。声も例えば五条と煽り合いをしているときなどと比べると幾分か低かった。
- 伊「嫌われているんでしょうか?」
新「あの人に『好意』ってあるんスかね?」
好意を向ける相手しかり、相手から好意を向けられることしかり。失礼ながら伊地知も思いつかなかった
- ある日、高専から禪院家へと依頼した案件に帯同することになる伊地知。担当は直哉だ。
- 上座に座り、いつも通り、ルームミラーを睨みつけている。「ん」という短い返事が遅れたタイミングがあった。
- 伊地知が「?」と思いバックミラー越しに見ると、顔の下半分を手で覆っている直哉が見えた。眼帯で隠れていない左目が細められる。遅れて、「ん」と返事があった。
- 伊地知はあれ、と思う。注意深く観察すると、組んだ腕の上を指先でトントンと叩いたかと思ったら、頬杖をするようにし、こめかみをトントンと叩き、軽くぐっと押しているようだ。更に、手がドア付近を彷徨って、また、腕組みの位置に戻った。これは……。
- (窓を開けようとして、やめた?)と伊地知は思った。さっきの返事の遅れも、あくびをかみ殺したのでは? と。そして何より、これだけつぶさに観察しているのに、気付く様子がない。
- 怪我がないのは確認している。お変わりないか、と聞き「あるわけないやろあんな呪霊ごときに」と吐き捨てるように言われたのは車に乗る前で、恐らくそれも嘘ではないだろう
- 「禪院特別一級術師」伊地知は直哉に呼びかけた。ふっとルームミラー越しに目が合う。「ん?」「少し、お休みになられますか?」「あ?」
- 「ん」以外の返事を久しぶりに聞いたきがする、と伊地知は思った。ルームミラー越しに目線を送り、直哉の返答を待った。「……仕事せんのやったら、降ろし。自分で帰るわ」術式を使って帰る、と言いたいらしい。
- 「失礼しました。出過ぎた真似を」と伊地知は下がった。多分、そこまで信用されていない、ってことだろう。お疲れのご様子なのに、ここで押し問答して車を降りられても本末転倒だ。
ちなみにこれが七海だったらゴリゴリにごり押しているし、五条だったら通達事項の途中で遮って「着いたら起こして」と言われている(通達事項などを伝えられないのは困るが、こうなるのはよっぽど限界なので、少し遠回りして帰る)
- 直哉がふと逡巡するように目を逸らした。「伊地知君」「はい」「……5分、黙ってや」は、という驚きが吐息と顔に出てしまった。伊地知が(しまった)と思った瞬間には、「なんでもない、はよ続きを」と視線を下に逸らされてしまった。
- 伊地知は黙ったが、「もう終わりなんやったら、自分で帰るわ」と静止も効かず、赤信号で止まった瞬間に逃げられてしまった。術式を使われてしまったので、伊地知では追いつくことはできない。白昼堂々の犯行ではあるが、車内からふっと消えたということは、ドアを開け、走り去るところから術式の範疇だ。誰にも目撃されていないだろう。恐らく帰る先は禪院家だ。1人になった車内で、伊地知ははあ、とハンドルに項垂れた。後ろからクラクションを鳴らされ、慌ててアクセルを踏む。(やってしまった……)
- 新田や他の補助監督と違い、眠気なのか体調不良なのかに耐える姿を僅かでも見せてくれた、というのは、比較して信用されている、と思うのは伊地知の自惚れではないだろう。本当に一瞬の隙すら許されないとは、手負いの野良猫のようだ(と本人に言ったら二度と見せてくれないだろう、とも思うが)
- 彼と同じ苗字を持つ、高専の生徒の話をふと思い出す。家での気の抜けなさは、押して図るべし、か。
- 一応、五条にも報告する。怒らせてしまったかもしれない、と。「いつも怒ってんじゃん、アイツ」と五条はつれないが、一方的に報告する。「ふーん」と興味無さそうに返事をした。
- 「アイツ、伊地知より1個上だよ? いい大人なんだし、ほっとけばいいのに」
「その同じくらい、いい大人である貴方や七海さんがときおり無理をするので、つい」
「は? 僕とソイツらを一緒にすんなよ」
これは事実、五条は昔と比べるとこの辺りの匙加減はかなりうまくなっていた。
夏油と殴り合いの喧嘩をして背中を預けられるようになったこと、灰原が高専所属であること、七海が戻ってきたこと、(秘匿死刑延期中の身とは言え)甚爾が戦力となっていること(悩みの種でもあるが)。どんなやっかみを受けようとも、自分のやるべき仕事を割り切って、必要なリソースを必要な分だけ注ぐようにしている。それが「手抜き」と映り、やっかみをうけることもあるが、それもまあ受け流し……。
- 最強の自負=倒れられない、になっていると思う。その辺りは絶対に最後の一線を越えないように自己管理ができていると思う。反転が使える、と言うのも大きいが。
- 「そういえば」と、五条が切り出す。「御三家関連のアレコレとか、アイツがやってたな」どうなってんだろ、今、と他人事のように言う。
- 「……五条さん、貴方は御三家のご当主様では?」「まあそうなんだけど」
- 五条曰く、いち次期当主候補、にしては越権行為であるようなことを、直哉はふりかざしているらしい。現当主直毘人が何も言わずにやにや見ていることと、直哉が権力を振りかざすことに周りはむかつきはするものの、実力で黙らせている、と。
- これは、御三家関連も同様で、次期当主候補ごときでと言われれば「ほな、そちらさんもご当主出さんかい」と五条家を煽り(これは五条がやらなくて良い仕事、と割り切っているから割りを食っているのであるが)、これは当主の仕事と言われれば「次期当主と先代でやって何の問題が」と加茂家次期当主を引っ張り出し御三家のパワーバランスを調整し、「五条悟がおらんと何もできん腑抜けたお家ちゃうよなあ?」と煽って五条無しで仕事をさせ、「特級と聞けば五条悟、五条悟って……馬鹿の一つ覚えも大概にしい。雑魚は足手纏いやから消え」と煽って一人で特級呪霊討伐案件へと向い。
- 五条悟の価値は無下限と六眼しかない、と言い切り、五条家当主がやるべき仕事は五条悟じゃないとできない仕事ではないと切り捨て(五条家当主は五条悟なのだから無茶苦茶だが)、御三家のどこでもいいならうちがやると言い、バランスが崩れるからと五条家からも加茂家からも禪院家の内部からもやっかみをうけているがそれを黙らせて、傍若無人に振る舞っていると。
- 「ムカつくけどまあ助かってるから、そのままにしてあるんだけど」今もそうなのかな、と五条。多分、今もそうなんだろう、と思う伊地知。
- 「そもそも、東京高専から禪院家への協力依頼については、ほぼ必ず禪院……直哉さんがいらっしゃいます」「あ、やっぱり?」薄々気付いていた五条。「甚爾かな」
- 甚爾はそれはもう大立ち回りをして禪院家を出奔している。甚爾の名前は禪院家ではタブーだという。みんな会いたがらないから、必然的に慕っていた直哉に白羽の矢が立つんだろう。
- 「伊地知の話が本当なら、伊地知が相当信頼されているか、伊地知に隠せないほど体調が悪いか、かな」と五条。「僕や甚爾相手に隠せっこないって分かってるはずなのに、表面上は何にもないかのように振る舞うからね、アイツ」
- 眠そう、疲れていそう、と五条や甚爾が思ったことは実際あったそうだ。でも、本人が何も言わないし、おくびにもださないし、仕事に影響はないからそのままにしておいた、と。「まあ一応、僕も見ておくよ。他ならぬ、伊地知の勘だしね」と思ってもなかった信頼を寄せられてたじろいでしまう伊地知。
- 一方直哉に自覚はあった。昔から寝るのが苦手だった子、だと伝え聞いている。
家に気が休まる場所など無い。寝つけたとしても、些細な物音や気配で目が覚めてしまう。家は人が多いため、本当に気が休まらなかった。
成長し仕事が増え、なまじっか仕事ができたためにもっと増え、自分でも周りの不手際にいらいらする質なのでもっともっと増え、更に眠れなくなった。
そんなことを繰り返しているうちに、ふっと気が抜けると意識を失うようになってしまった。一度、呪霊を倒したその現場で、本当に一瞬だが気を失うように眠ってしまって肝を冷やしてからは、気合で気を抜かないようにしている。
- 泥のように重たい眠気が、身体を覆っている。これが日常となっていた。
しかし、東京高専の仕事を受けるようになって暫く、抗えないほどの強烈な眠気に襲われることになった。
きっかけは、とうじか五条を見かけたとき、だ。
ここで倒れるわけにはいかないと、気合で踏ん張ったが、泥に飲み込まれないように必死だった。彼らは野生の勘とご自慢の六眼で、きっと様子がおかしいと気付いたと思うが、何も言わなかったのには助かった。
気のゆるみ、がトリガーなんだとしたら、強者相手になんて体たらくだろう。
内心舌打ちした。というか、部屋に帰って壁を殴って盛大に舌打ちした。
この欠陥品の身体は、強者である2人を、倒し隣に立つ相手ではなく、”守ってくれる”人だと認識し、シャットダウンしようとしているらしい。もしくは、死ぬのであればこの2人の手でしかありえない空間で、それでもいいと思っているか。
本気で拳を交えた上での結果であればそれは本望だが、敵前逃亡に等しいこの状況は、本当に不快で仕方が無かった。絶対に、絶対に意識を狩られてはならない、と今まで以上に気を張った。
- 家の自室に飛び込み、結界を張り落ちる。20分から30分、長くても2時間ほど。それが常となっていた。
- その対象が、2人だけではなく、夏油、七海、灰原、更には彼らと良く仕事をするため、彼らの残穢をまとっていることがある伊地知にまで及んだ。伊地知に関してはそもそも補助監督だ。勘付かれて声まで掛けられてしまった。自身に反吐が出そうだ。
- 他の補助監督の前、生徒の前では気を張ったままでいられるのはまだありがたかった。
生徒の帯同で合同任務のときも、問題は無かったのはまだよかった。と内心ほっとする自分がいて、それにもイライラする。
- ある日、任務を終え、補助監督室に入ると、伊地知と七海と灰原がいた。七海と灰原もちょうど任務を終え、報告を行ったところらしい。ぐら、と揺れそうになる身体を叱責し、目をギュッと細めて睨んだ。
- 「直哉もお昼まだ? 一緒に食べない?」
「買い過ぎてしまって」と七海が広げた袋には、所狭しとパンが入っていた。
「いらへん」
「遠慮しないでいいよ!」
「してへん」
そもそもパンは余り食べない、というと、灰原がにんまりと笑った。笑った顔を見て、灰原の後ろにも袋があることに気づいた。
「じゃーん!」こちらはところせましとおにぎりが入っている。
「いらへん」
「そう遠慮せず」
「してへん」
- 押し切られる形で、2人に連れられてきたのは、職員寮の談話室であった。お昼時をとうに過ぎていたため、補助監督室を騒がすのは、と場所を移動したのである(伊地知はお気になさらず、と言っていたが七海と灰原が固辞した)
- 入った瞬間、失敗したと思った。五条と夏油の残穢を感じ取ったからである。職員寮なのだからそりゃそうなのだが。
- 二対のソファーに対面になるように、七海と灰原が座る。ちょっと迷って七海の隣に座った。七海が右側(眼帯側)に来るからである。
- 柔らかいソファに沈み、五条と夏油の残穢を感じ、七海と灰原がいる。今日はそれに加えて街中での案件だったため、書生服は目立つからと洋服であった。スニーカー、細身のパンツ、シンプルなTシャツ、ジャケット。一般的な部屋着などと比べると全然窮屈であったが、書生服よりはゆるかった。いつもならそのぴしっとした感覚で背筋を伸ばせるのだが、どんどん泥に足をとられる感覚がする。
- 「大丈夫?」と灰原が聞く声で、七海はふと横を見た。確かに、口数が少ない気がする。
「……何が?」直哉は七海を見て、灰原を見て、ようやく自分が声をかけられているのだと分かり、返答したようだった。
「なんか、食欲が無さそうだから」
「元から言うとるやろ、いらへんって」
実際、食欲など無かった。泥のような眠気がぐるぐると渦巻いて、吐き気すらあった。
だるそうにおにぎりをはみ、咀嚼する。
「すみません、そこまでとは。無理せず残してもいいですよ」
「ん」
顔を顰めながら、嫌そうにおにぎりを食べる直哉。嫌い、とかではないような? と灰原と七海は顔を見合わせる。とうとう直哉は、おにぎりを机に置いてしまった。ふー、と息をつく様子は、たくさん食べた後だったら分かるが、おにぎりはまだ半分残っている。「はい」灰原はペットボトルのお茶を渡すが、それもだるそうに受け取ると、力の入っていない手でキャップを捻った。思わず七海がペットボトルに手を出すと、何の文句も言われずに、抵抗もされずに受け取ることができた。こんなことではあるが、施しを受けるようなこと、直哉の性格で許すと思わなかった。キャップを開けてから渡す。
「大丈夫……じゃないですよね」七海が大丈夫ですかと聞きそうになり、さきほど灰原が交わされたのを思い出した。お茶を飲む直哉から返答はない。
「んん……」と唸るような返事だけ返して、キャップを閉め、お茶を置いた。普段の直哉と比較して、とかではなく、明らかに様子がおかしい。
- 七海はソファを降りしゃがみソファと机の間にしゃがみ込み、直哉の顔を覗き込んだ。その瞬間、かくん、と糸が切れたように直哉の身体がかしいだ。落ちる、と思って七海が支えようと手を出すが、その前に意識が浮上したようだった。
「~~っ……」
めまいなのか頭痛なのか分からないが、頭を抑え、顔を顰める直哉。
本当に一瞬、1秒も無かったが、あれは失神では? と思う七海。
灰原も駆け寄って来て、ソファの横から直哉の身体にそっと触れ、支えた。
「動ける? 硝子さん呼んでこようか?」
「……なんでもあらへん」
「なんでもないわけないでしょう」
「帰る」
と、立ち上がろうとするが、やはりめまいがするようで、そのままソファに逆戻りに沈んだ。
「動けなそう、だね。硝子さん呼んでくる」灰原はパッと駆けていく。
直哉は止めようとしたが間に合わず、大きく息をついた。
- 「じっとしていてください。先ほど、ほんの一瞬ですが、気を失っていましたよ」強く窘めるようでいて、心配の顔で七海が言う。
「……うるさい」
「すみません、音が響きますか?」
先ほどより抑えた声で言われる。実際声は頭に響くのだが、そういう意味じゃない、と睨んだ。
- 直哉は舌打ちをした。とんでもない体たらくだ。舌打ちしたところでソファに縫い留められたように体は動かなかった。座っているのにぐるぐると目が回り、耳鳴りがして、頭が割れるように痛く、気持ちが悪い。そのすべてが意識を刈り取ろうとしてくる。
- 「どのような症状がありますか?」と七海が聞いてくる。
「……なにも」
「めまい、はありそうですね」瞳が揺れている、と目を合わせた七海に言われる。
直哉は目を閉じようとしたが、目を閉じたら最後、意識を刈り取られそうなので、ぐっと細めるにとどまる。
「頭は痛いですか?」
「別に」
「痛いんですね?」
分かっているなら聞くな、という思いを込めて、七海を睨みつける。
「めまいがあるなら、吐き気もありますかね」
「……分かってんなら聞くなや」
- バタバタと廊下を駆ける音がして、扉が開いた。灰原が硝子を伴ってきたらしい。
「どうしたの? 今日は怪我の報告無かったけど」
「家入さん、すみません。お忙しいところを」
七海が家入に場所を譲る。家入が七海がいたところに立ち、かがむように直哉を見た。
「あーあー、眼振出てる。めまい?」
「頭痛と吐き気もあるようです」と七海。
「頭打ったりはしてないよね?」
「任務では分かりませんが、少なくともここではしてません」
「直哉?」
「……してへん」
「意識はあるね」
硝子は遠慮なく直哉の頭を触診した。直哉はされるがままだ。
「うん、腫れてるとかもないし、頭を打ってないっていうのは、ほんとっぽい」
されるがままの状態を見て、七海の眉根に皺が寄り、灰原もぎゅっと眉を下げた。彼がこんなことを許すぐらい、体調が悪いということである。
血圧を測って低いこと、脈を軽く測って不整脈があること、顔を見て青白くクマがあることを確認する硝子。はた、と思いつく。
- 「あんまり他人のこと言えないんだけど、直哉、お前寝てる?」
「……まあ」
「ふーん、毎日? 平均睡眠時間は?」
ぐるぐるして痛い頭では、一般的にどんくらい眠ればいいのか、思い出すことができず、黙る直哉。硝子はため息をつく。
「ま、いいや後で聞くから。とりあえず医者としては、寝ないと帰せないけど」
直哉も正直、今のままだと立ち上がることも難しいのは分かった。そのまま何も言わず、ソファに倒れこむ。
「わ、ちょ、ベッドの方が良いんじゃない?」運ぶよ、と灰原が言うが、「いい」と短く答えた。本当に大変不本意ながら、医務室よりもこちらの方が寝られそうなので。
「寝れるんならどこでもいいよ。またしばらくしたら様子見に来るから。七海か灰原か、コイツの面倒見られる?」
「私は、緊急要請が無い限りは」
「俺もです!」
「じゃあちょっとよろしく」と硝子は去っていった。
「とりあえず、足も上げましょうか」
というと、器用に靴を脱いで足を立ててソファの上に置いた。まだ寝ていないようだ。
灰原と七海で、クッションを頭の下に敷いたり、足の下に敷いたりした。タオルを渡すと目元を隠すようにして顔に被せた。終始無言だ。
- 灰原が座っていた方のソファに、灰原と七海で隣同士で座り、お昼を食べる。
20~30分すると、直哉が起きた。上半身を起こすが、頭を抱えて止まってしまった。
「おはよう、直哉」
「まだ寝ていた方がいいんじゃないですか」
そのまま倒れこむように、また寝る姿勢になった。すごく小さな声だった。
「……寝れたら寝てる」
灰原と七海は目くばせをして、七海が小さく頷いた。
「こちら、片づけてきますね」
「ありがとう、よろしく。あ、なんか飲み物買ってきてくれない?」
「分かりました。お茶で良いですか?」
「あー……自販機の写真送ってよ。そっから選ぶから」
「はあ、まあいいでしょう」
七海が出て行く。
- 七海はごみを捨てると、補助監督室まで向かった。一応、補助監督室近くの自販機の写真を撮って灰原に送る。
中に入ると伊地知がいた。
「七海さん?」あのまま帰るかと思っていた七海が来て、伊地知は手を止めた。
「忙しいところすみません。伊地知君に折り入って頼みが」
「何でしょう?」
「直哉さんの……そうですね、とりあえず向こう1週間くらいのスケジュール、教えていただけますか? できれば、彼から案件をはがしたいのですが」リスケが難しいものは私と灰原に振ってもらえれば、と七海が言う。
「良い、ですが……何かありましたか?」
「さきほど直哉さんが倒れまして」
「えっ!?」
「大丈夫です。どうやら寝不足、というか、慢性的な不眠症のようで」今は職員寮の談話室で休んでいます、と七海は言う。
「20~30分で起きてきてしまって、回復の兆しが無いので、とりあえず休んでもらおうかと」
「そう、だったんですね」
伊地知が落ち込むような様子を見せたため、不思議に思う七海。
「どうかしましたか、伊地知君」
「い、いえ! ただその、私は気付いていたので」こうなる前に、休んでもらうよう、取り計らえば良かったのに、と後悔をにじませる。
「……どうせ、何言っても聞かなかったんでしょう? 彼」
「まあ、そうではあるのですが……」
「ああいうタイプは、一回痛い目に合わないと理解しませんよ」どちらにせよこのタイミングになってたと思います。伊地知君が気に病む必要はありませんよ、と言う七海
「……実体験ですか?」
「……伊地知君、スケジュールを」
「はい」クスリと笑ってスケジュール調整を行う伊地知。
できるだけリスケして、後は灰原と七海に連絡する、と取り着ける。
(後で、談話室に行こう)お見舞いをしよう、と思う伊地知。
- 七海が出て行って20~30分後。職員寮の談話室を訪れる影があった。「や、灰原」「夏油さん」
「落とし物をしてしまってね、あ、あったあった」美々子、奈々子からもらったヘアピンだ。いつの間にか落としてしまったらしい。
床を這って拾い上げて、灰原に掲げて、向かいのソファに横たわる人を見る。
「えっ」近づいてタオルに隠れた顔を覗き込む。金髪とピアス。見慣れぬ洋服姿だがこれは「直哉?」「です」
起きているだろうが、反応しない直哉。
「え、大丈夫なのかい?」
「俺と七海と直哉で飯食ってたんですけど、寝不足だったみたいで途中で倒れちゃって」
「え」
硝子さんには見てもらいました。とにかく休め、寝ろ、と言われました、と灰原。
「そうなのか。灰原は看病?」
「はい、七海と俺で見といて、って硝子さんが」
「もしあれだったら、私が代わるよ?」
「いえ、大丈夫です! 特に用事無いので」
とやり取りをしていると、直哉が起き上がる。
「おや、すまない。起こしてしまったかい?」
「いや、寝てへん」
眠れないので、起き上がることにしたようだ。座る体制になって、目元を抑えている。顔色は相変わらず悪い。
「眠れなくても、横になっていた方がいいと思うけどな」
「いい。余計寝られへんようになる」と、ため息をついた。
- (多分これは、もう寝られへんな)と思い起きてきた直哉。
寝れるもんなら寝たい、は泥に足を取られてしまった直哉の本音だった。
ここで、こんなに泥に足を取られそうなここで寝られなかったら、もう寝れないんじゃ、とぐるぐる考える直哉。
- 七海と伊地知があーでも、こーでもしてる頃。五条がやってくる。
「お疲れサマ……なんかあった?」
七海と伊地知の会話を聞き、七海が伊地知に報告しているわけではなさそうなのを察知した。
開かれているスケジュールは直哉のものだ。
「あ、もしかしてアイツ倒れた?」
「ご存じだったのですか?」
「以前、伊地知から報告受けてる」ま、六眼で見えてたし、とこともなげに言う。
「気付いてたならどうにかしてください」
「アイツが言うこと聞くと思う? あと、東京高専(うち)の案件ならまだしも、京都とか禪院家の仕事はどうにもならないしね」御三家関連はまあ、良いんじゃない、ほっといてもと適当だ。
あ、と言う顔を七海と伊地知がする。五条は苦笑した。
「お前ら焦りすぎだろ。そんな仲良かったっけ? アイツと」
「いや、すみません。常にないご様子だったので」
「京都、は歌姫に話付けてみるかー。調整できるかわかんないけど」
硝子生贄にしよ、と五条は言う。
生贄というが、硝子と歌姫はちゃんと仲良しだ。
こうやって倒れたものが出た以上、その芽を摘み取ろう、という算段でもあるのだろう。
伊地知と七海は素直に感心した。こういうところだけは。
「あとは禪院家、だけど……。うーん」と難しい顔で腕を組む五条。
「東京高専(うち)や京都の仕事を減らしたこと、伝わらないようにした方が良いんじゃないかなあ。ってかできれば倒れたことも言わない方がいい気がする」余計高度な案件捩じ込まれて終わりだと思う、と五条。
「それは、嫌がらせ、ということですか?」
「そうだね。あとは倒れるなんて情けないーみたいな?」アイツ、40℃近い熱で働かされてんのみたことあるわ、と苦虫を潰したような顔をする。
「……クソですね」
「クソだよ、御三家なんか」と五条は吐き捨てる。
「東京高専の案件を
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