今日は所用で梅田に行ってきました。夕方から天気が崩れ気味な感じでしたが、せっかく梅田まで出てきたので大阪ステーションシティシネマへ。
そして今回見てきたのはこの作品!
予告でじわじわ系不穏さを感じ取ったので見てみることに。例によって例のごとく前情報はなし。
結論から言うとかなり難解な作品でした。
舞台は北ドイツの農場、そして4つの時代。それぞれの時代の出来事を、4人の少女の視点で描きます。
1910年代、自分と同じ名前を持つ死んだ少女の気配を感じ取る少女、アルマ。
1940年代、戦争の影響がまだ残る中、片足を失った叔父に道ならぬ欲望を抱く少女、エリカ。
1980年代、常に自分にまとわりつく何者かの視線に怯える少女、アンゲリカ。
そして現代、家族とともに農場に引っ越してきたが、その生活の中でどうしようもない孤独感に苛まれる少女、レンカ。
彼女らが紡ぐ100年に渡る歴史の中に浮かび上がる存在の正体とは……。
本作のジャンルはホラーですが、明確に怪物やスプラッター描写、超常現象がメインで出てくる作品はありません。そういう意味では「わかりやすい恐怖」がない作品ではあります。
しかし本作、おそらく意図的だとは思いますがそのわかりにくさがかなり分厚く、まさに水を隔てたように詳細がわからないまま、155分の上映時間のあいだただひたすら「なんだか厭な空気」の中に押し込められる、そんな作品でした。たぶんこれ、起承転結的な明確なストーリーもないような気がする。
そもそも本作、トレーラーやチラシで「4つの時代を描く作品」ということはわかってたんですが、本編ではそれらの時代が順番に展開されるのではなく常にシャッフルされているうえに「〇〇年」といったようなテロップもないので今がどの時代かが非常に分かりづらい。なので、見てて「今がいつなのか」を把握しようとするのに意識が割かれて話の展開があんまり頭に入ってこなかったですね。
加えて本作は北ドイツの農場にカメラが固定されているので、これまた「今がいつなのか」という情報を背景から読み取るのが難しい。特に現代編なんか、スマホが出てきてようやく現代とわかったくらい。
なので本作、多分「意図された分かりづらさ」と「意図しない分かりづらさ」が重なってすごく分かりづらい作品になってるように思いました。
とりあえず見ててわかったこと思ったこと感じたことを書いていきましょうか。
まず本作が「生と死」を巡る物語だということは明白でしょう。4つのどの時代にも直接的、あるいは間接的に「死」の影があります。
直接的な遺体、葬儀に加えて、死体にたかる昆虫であるハエも印象的なアイコンとして使われていたと思います。
そしてこの「生と死」というテーマをもっとも端的に表しているのが「川」ですよね。
レテの川、三途の川と、川は洋の東西を問わずあの世とこの世の境目を示すアイコンとなっています。そして本作では、多くの登場人物がこの川を訪れます。
川に来た登場人物たちは、そこで泳いだり、川辺で語り合ったり、あるいは入水自殺したり。その誰もが共通して、この川を越えることができません。唯一、アンゲリカだけが川をわたって西ドイツへと渡った可能性が示唆されますが、彼女は写真撮影の際にいきなり姿を消しており、写真に残されたその姿もブレて幽霊にようになっていること、そしてこの川はドイツの国境線であることからも、まあ生きているとは思えません。
今思い返すと、自発的かどうかは疑問が残りますが、本作に登場する4人の少女たちはいずれも死を志向してるんですよね。ラストシーンでもアルマは納屋のニ階から飛び降りてますし。文脈的にこれらの行動にどういう意味があるのかは正直良くわかりませんが、これらの行動によって作中に蔓延する「死の臭い」が深く色濃くなっていると感じました。
あともうひとつ、本作に漂う「死の臭い」を色濃くしている要素があります。それは「不妊処理」。1910年代パートに登場する女中ベルタ、トゥルーディは、直接的な描写はないものの下女として働き始める前に妊娠できないよう処置を施されていることが示唆されています。これはもちろん、万が一下女という身分が低い地位の者が主人の子を宿すという形での下剋上が発生しないようにするための処置だと思いますが、同時に本作にはびこる「死」の臭いのカウンターとなる「新しい生命の誕生」を打ち消すための処置でもあると感じました。これによって本作には全編に渡って「死の臭い」で埋め尽くされた作品になっています。
そして本作の最大の謎である、要所要所でスクリーンの中でなくスクリーンの外に向けられる少女たちの視線、その先には誰が、あるいはなにがいるのか。
これ、「死」そのものだと解釈しました。そして、彼女らの視線がスクリーンの外にいる我々に向けられている以上、その「死」のポジションに立っているのは我々観客なんですよね。しかし、その「死」たる我々は命を刈り取る神などではなく、ただの傍観者として4つの時代を見ていくしかないという。変わりやすい怪異や怪物はどこにもおらず、ただ淡々と死が列挙されていく淡白さ。
それがこの作品の分厚い分かりづらさの奥に潜む本当の恐怖なのかもしれません。しらんけど。