「はあ……ごちそうさまでした」
「お粗末さん」
満足そうに手を合わせた神田に、弓場はくすりと笑って返した。
「いやいや、本当に美味しかったですよ! 弓場さん特製のチャーシューラーメン」
神田の素直な賞賛に弓場は微かに首を傾げる。
「美味しかったか……? あんなに胡椒入れたのに?」
「それは……えーっと……あはは、ちょっとピリ辛でしたけど、ラーメンは美味しかったですよ」
神田は手が滑って胡椒を大量に入れてしまったのだ。神田の珍しい失敗に弓場は思わず目を細めた。
「作り直すっつったのに、無理やり食べやがって」
「そりゃ、弓場さんが作ってくれたものを俺の失敗で粗末に出来ませんよ」
胡椒で辛すぎるラーメンをそれでもニコニコと食べていた神田を、弓場は苦笑しながら見守ったのだ。2人で食器を下げ、神田が水洗い場に立つ。
「……じゃあ、食器は俺が洗っておきますから、弓場さんは先に風呂入って下さい」
「……そうかァ。じゃ、先に湯をもらう」
神田の厚意に素直に甘えた弓場。そのまま風呂場に消えていった弓場の背中を笑顔で見送り……神田はその場でへたり込んだ。
「はああ……俺の馬鹿」
(せっかくの弓場さんのお手製ラーメンに胡椒ぶち込むなんて……)
弓場の前だから精一杯の虚勢を張ったが、あまりにらしくない失敗に穴があったら入りたい気分だった。なんとか気を取り直して立ち上がり、神田は食器を洗いながら……再びグルグルと考え出してしまう。
(こんなんで、今日大丈夫なのか……?)
神田がこんな珍しい失敗をしてしまうくらい緊張しているのには訳がある——今夜、弓場を抱くつもりなのだ。
——弓場と付き合えるようになって数か月。とはいえ、神田は九州で大学生をしているし、弓場は三門でボーダー任務に従事しているので、会える機会は片手で足りる程度だ。それでも神田は弓場の邪魔にならない程度の頻度でメールや電話など連絡を取り、弓場もふとした瞬間に神田になんでもないメールを送るくらいには、お互いの繋がりを大切にしていた。もちろん、肉体的な繋がりも——。
(この数カ月でキスは普通に出来るようになったけど……さすがにヤるのは色々と準備がいるよな……)
付き合うようになって最初のデートで、神田は弓場から『俺が下になる』と宣言されていた。
『お前ェに負担かけさせる訳にはいかねェだろ』
そうしっとりと微笑まれてしまっては、神田は何も言えなかった。もちろん、男として好きな相手を抱きたいという気持ちは大いにあったのでとてもありがたい申し出であり……だからこそ、弓場の気持ちに最大限応えられるように事前に色々調べた。のだが……
(できるのか……? 童貞の俺に、弓場さんを満足させられることなんて……)
そう思うと、緊張で手先に動揺が走る。そもそも、男性同士のセックスは快感を覚えるようになるまで結構かかるようで、初回などは挿入をならすので精いっぱいだとネットに書いてあった。
(弓場さんも「色々準備できるようになるまで待ってくれ」って言われて……だから今までは家に泊まるのは遠慮してたけど、「今度うちに泊まってけ」ってことはつまり……)
弓場からのOKサインだと、神田は受け取った。だからこの日に向けて色々準備もしてきたし調べたりもした。が、いざ本番が近付いてくると、どうしても不安が先走ってしまう。
「はあ……」
思わずため息をつくと、横から「どうしたァ?」と声がした。
「! ゅばさんっ?!」
「? なんだァ? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔しやがって」
ドキドキと心臓が高鳴る。驚きもあるが、いつもよりラフな格好の弓場が近くに居て余計に鼓動が速くなる。濡れた髪からふわっと香ったシャンプーの匂いが妙に艶めかしかった。
「い、いえ……早かったです、ね」
「……そうかァ。いつもより時間かけちまったかと思ったが」
そう言われて時計を見ると、神田が思っているよりも時間が経っていた。慌てて残っていた洗い物を済ませる。
「お、俺もさっさと入ってきますね」
そう言ってバタバタと風呂場に向かった神田の背中を弓場は見送って小さく呟く。
「……俺も、覚悟決めるかァ」
風呂から上がり、2人はソファに並んで座って借りてきた映画を一緒に観ることにした。
弓場1人だとゆったりできるソファも、神田と並ぶとぎゅうぎゅうに座ってもはみ出さないのが精いっぱいだ。
「すみません……図体ばっかでかくて」
「俺も人のこたァ言えねェよ。つか、そう悪い気分でもねェしな」
「弓場さん……!」
弓場に小さく笑われ、神田は顔を赤くしながら遠慮がちに弓場にくっつく。
映画の内容は、荒廃した近未来で寡黙な青年と天真爛漫な記憶喪失の少女が旅をする話だ。青い鳥の話がモチーフになっていて、あまり有名ではないが2人のテンポのいいやり取りや物語のカギとなる少女の繊細な表現がよくて、神田のお気に入りの作品だ。
「……どうです?」
「面白ェ……このヒロインの表情もいいな」
「ですよね。俺もそこが好きなんです」
「主人公もあんま表情変わらねェがいい芝居する。それに……ちょっと神田に似てるなァ」
「え? そうですか?」
思いもよらぬことを弓場に言われ、神田は目を丸くする。そんな神田をくすりと笑い、弓場はこちらを向いて神田の瞳を覗き込む。
「あァ……この瞳の色が、よく似てらァ」
「……弓場さん」
至近距離に迫ってきた弓場の顔に、神田は自然と手を伸ばして自らの方に引き寄せた。2人の唇が重なる。
「ん……っ」
「ァ……っ」
テレビは物語のクライマックスに向けて盛り上がりを見せていたが、2人はもうそれどころではなかった。思い出した自らの過去を告白する少女の台詞に2人のリップ音が重なり、神田は苦笑しながらテレビを切った。
「んっ……続きは、また、明日……」
「あっ……そう、だな……んっ」
狭いソファの上で何度も深い口づけを交わす。その吐息が熱を帯びてきて、神田は堪らず弓場の手を引いた。
「……ベッド、行きましょう」
「……おゥ」
弓場も心なしか潤んだ瞳で頷く。
殆ど寝る為に借りた1DKの奥には、その理由に相応しい大きなベッドが鎮座していた。
『大学やボーダー任務で疲れて帰ってきた時にゆっくり休めるように』と弓場の家族から贈られたクイーンサイズのベッドでこれから正反対のことを行うのは少し気が引けた。が、神田ももう後には引けない。
「弓場さん……!」
ドサ、と弓場をベッドに押し倒し、神田は熱っぽい視線で弓場を見つめる。弓場もまたじっと神田を見つめ返した。しばしの間、2人の間に濃密な沈黙が漂う。
「……来ねェのか?」
ふっと笑った顔が嫣然と色っぽくて、神田は無我夢中で弓場にキスをした。唇で吐息を貪り、顎先から首筋にかけて舌を滑らせる。
「んっ……あっ……ふっ……」
「弓場さん……かわい……っ」
神田の愛撫に弓場がピク、ピク、と小さく体を震わせる。その反応が愛おしくて、神田は更に普段隠されている弓場の身体に手を伸ばす。服の裾からするりと手を侵入させると、胸元まで一気にたくし上げる。鍛えられたしなやかな身体が眼前に晒される。白い肌がしっとりと汗ばんでいて美しい。
「弓場さん……綺麗です……」
熱っぽい吐息と共に呟くと、弓場の頬がぽっと紅くなった。その反応が可愛くて、神田はそのまま頬の色と同じ胸の突起へと口づけを贈る。
「ん……っ!?」
「ここ、気持ちいいですか?」
「やっ……くすぐってェ……そんな、女相手みてェなこと……っ!」
身体をよじる弓場を軽く押さえつけ、神田は小さな赤い実を舌先で弄ぶ。
「ふふ、ここ、男も性感帯があるらしいですよ……」
そう言ってぢゅうっと強く吸い上げると、弓場が一際大きく身体を跳ねさせる。それが嬉しくて色づいたその場所を舌や指先で何度も愛撫していると、とうとう弓場に引きはがされた。
「くっ……いつまでっ……遊んでんだ……っ!」
「すみません……弓場さんが可愛くてつい……」
あはは、と頭をかくと荒い息をした弓場に睨まれたので、神田は仕切り直すことにした。どうにも理性より欲が先走ってうまくいかない。
「でも……弓場さんも、気持ちよくなってくれているみたいですね」
「……っ!」
そう言って神田が手を伸ばしたのは、スエットのズボンの布を押し上げている弓場自身だった。布越しに指先で軽く触ると、弓場の息が更に荒くなる。その荒い吐息に興奮した神田は「失礼します」とだけ告げると、スエットの裾に手をかけズボンを下した。ぶるんと立派な剛直が飛び出す。神田が思っていた以上の大きさと硬さに神田は思わずため息を零した。
「すごい……弓場さん、おっきいです……」
「……あんまジロジロ見んなァ」
紅い顔の弓場がバツが悪そうに視線を逸らす。神田は自分の愛撫にちゃんと興奮してくれていることが嬉しくて満面の笑顔で弓場の雄芯にそっと触れた。
「ん……っ?!」
「あ、そうだ……せっかくだから」
ビクッと反応した弓場に、神田は持ってきていた小さなポーチからローションの入ったボトルを取り出す。
「これ、使ってみましょう」
「それ、は……?」
「ローションです」
「!!」
満面の笑顔で告げた神田に、弓場は目を見開いて何かを言いかける。が、弓場が言葉を紡ぐ前に、神田がそのローションのふたを開け自身の指にねちゃりと纏わせた。そして素早く眼前で揺れている弓場自身にそっと触れる。
「ァ……っ!」
冷たく粘性の高い独特な感触に、思わず声が漏れる弓場。神田はそれに気を良くし、亀頭からカリ首をローションのついた指の腹で撫でるように愛撫した。
「んァ……っ! 神田……っ! そいつァ……?!」
感じたことのない直接的な快楽が弓場に襲い掛かる。
「うん? キモチイイですか? 弓場さん……ほら、ピクピク反応してる……かわい」
神田はローションを継ぎ足し、手の平全体に広げると今度は竿部分をギュッと掴んで何度も扱いた。男同士、弓場の気持ちいいところは手に取るようにわかる。
「ほら……もっと気持ちよくなって……もっと、俺で……」
「んっ……神田っ……はっ……ァ……ん……っ」
神田の手で徐々に上り詰めていく感覚に溺れながら、弓場はぐっと神田の腕を掴む。
「!」
「お前ェも……っ! 気持ちよくなけりゃァ、意味ねェだろ……!」
「弓場さん……っ!」
快楽で潤んだ薄橙の瞳に揺れる欲に、神田も体の芯が熱くなる。
「じゃあ、俺も一緒に……!!」
そう言って神田は履いていたスエットをパンツごと脱ぎ捨てた。我慢しきれないかのようにぐんと勃ち上がっている神田の剛直に、今度は弓場がため息を漏らす番だった。
「お前ェも我慢の限界じゃねェか」
「そりゃ、こんな弓場さん見てたら……」
そう言いながら、神田は自分自身と弓場自身の雄芯2本を手の中に握り込む。どちらも立派な雄の象徴で、両手でも覆いきれない。それでも神田は両手にローションを纏わせ、2人の先から零れる玉のような先走りを混ぜ、ぐちゃぐちゃと一緒に合わせて扱く。
「はっ……はっ……んっ……はっ……ぁは…………っ!」
「あっ……ァっ……あぅっ……はっ……んっ…………!!」
いわゆる兜合わせの状態で神田は徐々に扱くスピードを上げる。もちろん二人ともこんな経験は初めてであり、その非日常感と直接的な快感に一気に高みへと上り詰めていく。
互いの荒い呼吸とぬちゃぬちゃといやらしい粘性の水音だけ狭い寝室に響き、互いにこの果てを望み始める。
「弓場さん……っ! 俺、もう……っ!!」
「神田ァ……ッ! イくぞ……っ!!」
弓場が苦しそうに眉を寄せ絞り出すように言われた言葉で、2人は同時に達した。ドプっと鈴口から溢れた白濁色の欲望が神田の両手を濡らし、辺りには青臭い匂いが漂う。しかし、それが2人が感じた何よりの証拠なのだと思えばなにも気にならなかった。
「はあ……やば……これだけで、こんなキモチイイとか……聞いてないっす」
愛する人と一緒にイけただけで、体が崩れ落ちそうになるほどの充足感が溢れてくる。我知らず微笑んでいた神田に、弓場もベッドに倒れ込みながら小さく笑った。
「本当にな……なにもかも全部、放り出しちまいたい気分だ……」
ボーダーのこともネイバーのことも、今だけは忘れて、ただこの幸福な虚無感に浸っていたい——自分でも初めて感じる感情に、弓場はゆっくりと目を閉じた。
「いいですね、それ……でも、まだ終われません……」
神田の瞳に、欲望の炎が灯る。今しがた放ったばかりの情欲がむくむくと腹の底から湧いてきて、再び神田の剛直が硬さを取り戻す。
「……弓場さんを、抱くまでは」
「……ったく……頑固なヤツだ」
そう言うと、弓場はゆっくりと両足を広げ、神田に己の秘部を晒した。
「……準備は出来てある。好きにしろ」
「弓場さん……っ!」
神田は嬉しさのあまり、弓場に抱き着く。そして、耳元で決意を込めて囁いた。
「——絶対、気持ちよくしますから」
そう宣言して、神田は改めてベッドに仰向けになりこちらを見つめている弓場の全身を見た。中途半端に脱げている服もそれはそれでいやらしいが、折角ならお互いに生まれたままの姿で向き合いたい。
「……弓場さん、脱がしますよ」
「おゥ」
神田は弓場の服に手をかけ、抜き取った。そして自分の服も脱ぎ、裸のまま肌を合わせた。
「弓場さんの肌、気持ちいい……」
「お前ェがだよ」
「弓場さんがですよ」
意味のない言い争いすら愛おしい。神田は密着したまま、ゆっくりとローションと精液で汚れた手に更にローションを追加し、弓場の菊座へと手を伸ばした。
「んっ……! 慣らしてあるからっ……さっさと挿れろ……っ!」
「ダメですよ……万が一にでも、弓場さんにケガさせたらコトですから。俺も手伝います」
神田が調べたところによると、やはり一番の難関は入口の部分らしい。慣らしが足りなければ切れて出血したりすることもあるそうで、そうなればセックスどころではなくなる。そうでなくても挿入される側を受け入れてくれた弓場には、快感以外感じてほしくない。
「弓場さん、力抜いて……」
そう囁きながら弓場にキスをする神田。弓場もそれに応え、2人はすぐに舌を絡めた深いキスに夢中になる。そうしながら、神田は菊座を何度も何度も円を描くようにゆっくり解した。
「んっ……ァっ……かん、だっ……あっ……やっ……」
「ふっ……んっ……ゆば、さん……もっと……力、抜いて……」
入口が解れてくると、神田はゆっくりと指を弓場の体内に侵入させる。弓場の体内は想像以上に熱く、とろけるような柔らかさがあった。本当に自分の為に用意してくれたのだと思うと、神田の興奮が一気に最高潮に達する。
「弓場さん……っ! 俺、そろそろ……っ!」
「あァ……来い」
ふっと男前に微笑む弓場に、神田は辛抱堪らず小さなポーチに入れてきたコンドームを噛みちぎるように開封し、先程よりも更に勃起している自分自身に被せようとした。一応練習してきたのだが、べたべたの手で思うようにできない。と、神田の手に弓場の手が重なった。
「え?」
「俺が着けてやる」
そう言って起き上がった弓場が神田の剛直に触れる。神田の手から付いたねばねばと共に手を滑らせ、ゴムで熱を覆ってもらうだけで神田はくらくらするほど昂った。
「やばっ……それだけで、イキそう、です……!」
「まだ早ェよ、ばか」
からかうように笑った弓場の笑顔に心臓を撃ち抜かれ、神田は再び弓場をベッドに押し倒す。弓場の瞳に自分と同じ興奮が宿っているのを見つけると、矢も楯もたまらずゴムで覆われた雄芯の根元を掴んだ。
「じゃあ……挿れますよ」
「あァ」
弓場が返事と共に深く息を吐くのと同時に、神田もゆっくりと息を吐きながらローションで摩擦を減らしながら弓場の体内に押し入った。
「うっ!? ぐ……ゥっ……!!」
覚悟はしていたが、想像以上の異物感と圧迫感に弓場は歯を食いしばりそうになる。しかし、それを何とか我慢してただひたすら体の力が抜けるように息を吐くことを意識した。
「くっ……! キツッ……! すげ……!」
一方の神田も、初めての圧迫感に目の前がチカチカする。自分で行う自慰など比べ物にならないくらいの快感が背骨から能天まで一気に駆け抜けた。ゴム越しにでも伝わる弓場の体内の熱が全身を興奮で炙っていく。
「弓場さん、大丈夫ですか……? すげ、締まる……」
「はァ……大、丈夫、だ……くっ……テメェ……デカ、すぎんだろォ……」
「はは、誉め言葉だと思っておきます……あーやべ」
神田は性急に進めたい衝動を何とか抑えながら、弓場の様子を見つつゆっくりと腰を進める。同時に、挿入の違和感で萎えてしまっていた弓場の逸物も優しく扱いた。
「んァ……やめっ……そりゃ……くっ!」
「一緒だと気持ちいいですか? 後ろだけだと痛いですもんね……こっちで、気持ちよくなりましょう」
ローションを使って扱きながら更に奥に侵入していくと、不意にビクンと弓場の腰が跳ねた個所があった。
「? もしかして、ここが前立腺ってヤツか?」
「あゥ……っ! 神田……っ! そこは……っ!?」
「ここ、ですよね?」
「ァんっ……あっ……!」
神田は弓場が反応した個所を正しく刺激する。ぬちゃ、ぬちゃ、と緩く粘ついた水音とともに、弓場の噛み殺したような嬌声が上がる。その甘い響きに、神田はとうとう我慢の限界を超えた。
「弓場さん……! すみません……!!」
弓場の腰を掴み、ゆっくり動かしていた腰をガツンぶつける。
「あああっ!」
一際高く弓場が啼いたのをきっかけに、神田はガツガツと夢中になって腰を振った。
「あっ……やばっ……! 弓場さん、サイコーです……! はっ……すげー……キモチイイ」
「あっ……はっ……あっ……かん、だ……っ! はっ……んァ……うっ……!!」
ぐちゅぐちゅと結合部からいやらしい音が響き、2人の荒い呼吸音に交じっていく。恍惚とした神田を見ていると、弓場も異物感や痛みより快感が勝っていく。パンパンと肉体がぶつかり合う音がする度、2人の視界はチカチカと瞬いた。
「ゆばさん……っ! やばい……イキそ……あぁ……まだ、イキ、たく、ね……!」
「かん、だァ……はっ……あっ……まだ、何度でも……」
弓場の言葉に、神田は自分だけが欲に溺れているわけじゃないと知る。初めて交わるのに、これが永遠に続けばいいと思えるほどの悦楽だ。
「ゆばさん、好きです……! 何百回もっ……何千回も……あなたをっ……抱きたい……っ!!」
「んっ……ふっ……俺も、だ……かん、だ……っ!」
飽きるくらい何度でも、2人でどろどろになって溶けて混ざってしまうまで何度でも交われる……それは何よりも甘美な約束だった。
「ゆばさん、イキましょう……あっ……一緒に……!!」
「あァ……! イく……っ!!」
最後は二人抱き合って、同時に果てた。弓場の白濁液が神田の腹を汚し、弓場の体内で神田の熱がどくどくと脈を打って放出される。その心地よさに、2人は抱き合ったまま意識を手放した。
神田が目を覚ますと、弓場の姿はなかった。ベッドシーツには昨夜の情事の跡がくっきりと残っていて、神田は思い返して顔を赤くする。
(俺、初めてなのになんて宣言したんだ……っ?!)
何千回でも抱きたいなんて……けれど、偽らざる神田の本音に弓場は頷いてくれた。
「ああ……幸せだな……」
思わず裸のまま悦に浸った神田だったが、微かに開いた扉の向こうから珈琲のいい匂いが漂ってくるのに気付いて、慌てて服を着て部屋を出る。
「おゥ、起きたか」
「弓場さん……!」
そこには、いつもと変わらない様子で珈琲を淹れる弓場の姿があった。
「すみません、俺、寝坊しちゃて……」
「いや、まだ朝早ェ……俺もさっき起きたとこだ」
そう言って神田に目の前の珈琲を示しながら「飲むか?」と尋ねた。
「いただきます」
微笑んだ神田は、それじゃあともう1つのカップを取ろうとした弓場を背後から抱き締める。
「……そうされてると、珈琲が淹れれねェんだがなァ」
「分かってますけど……もうちょっと、このまま……」
抱き締めた弓場の背中はとても広く、温かい。珈琲の香りと共にひたひたと幸福感が満ちていく。
自分を抱き締めたまま動かなくなってしまった神田に、弓場はくすりと笑ってその頬にキスをした。
「仕方のねェヤツだ」
幸福な朝に、近くで鳥の鳴き声が響いた。【終】
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【かんゆばR18初夜】青い鳥の鳴く朝へ ★
初公開日: 2025年11月15日
最終更新日: 2025年10月24日
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