誕生日の朝。目覚めると、太一はいつもと違うルーティンをこなす。
『七尾太一、誕生日を迎えました! ひとえにいつも応援してくれる皆さんのお陰です! ありがとうございます!! 今日はいっぱい食べるぞお(笑)』
皇事務所の公式アカウントから投稿したメッセージに、たちまち幾つものお祝いコメントがつく。それは全て役者・七尾太一を祝うもので、GOD座で無名の端役だった少し前の自分に言ったら絶対飛び上がって驚くだろうな、と笑った。
同室の臣の姿はない。今日はきっと朝から色々仕込んでくれているのだろうと思うと、ベッドにいるのが勿体なく思えてくる。太一は起き上がってベッドから降りると、着替えて部屋を出た。今日の服は先日天馬と万里と一緒に買いに行った、自分にしたらだいぶ奮発した一張羅だ。
談話室に行くと既に賑やかで、太一を見つけて咲也と真澄が嬉しそうに寄ってくる。
「太一くんおめでと! 今少しずつスケボーの練習してるよ。トリックまた教えてくれる?」
「太一、おめでと。あれからスケボーちょっとだけ出来るようになった。また練習付き合え」
「さっくん! 真澄クン! ありがとうッス! また一緒にスケボー練習しに行くッスよ!」
「太一、誕生日おめでとう。お祝いに今度お昼何か食べに行かない? なんでもいいよ」
「千景サン、ありがとうッス! そうッスねー……焼肉! 焼肉みんなで食べたいッス!」
「焼肉ね、了解」
そう微笑んで下がった千景は、いづみと密のいるところに行って笑った。
「太一に何を食べに行くか聞いたら、やっぱり焼肉だって。いつまでも沢山食べてほしいね」
「いいですね! 太一くんは元気いっぱい食べてる姿が似合います」
いづみの言葉に、隣にいた密が小さく頷く。
「太一は理想の大人像がありそうだけど……太一みたいな賑やかさがある大人もいいと思う」
「そうだな。ああいうのは意外と大人にこそ必要なスキルだったりするしな」
大人たちにそんな視線を向けられてるとも知らず、太一は葉星大学組との話題に移る。
「太一、おめでとう。今日は学食誕生日会もあるんだから、忘れるなよ」
「ありがとう綴クン! 覚えててくれてたんスね。もちろん楽しみッス」
春組とやり取りしている太一の元へ、九門がこそこそと近寄ってくる。そして……
「七尾先輩、おめでと! へへ、せっかく同じ大学に入ったから一度呼んでみたかったんだ!」
元気な声で叫ばれたおめでとうに、太一の顔も一層綻ぶ。
「九チャンありがと! へへ、俺っちも先輩って呼ばれるの慣れないッスから、いつでも呼んで!」
「分かった、七尾先輩!」
そう言って互いに「「へへへ」」と笑っている太一と九門。そこへ、至が両手にホットドッグを山盛り持ってやってきた。
「太一おめでと。今日は久々ジャンクフード祭りだよ」
「これ、至サンの手作りッスか?!」
「まあ、ホットドッグなら俺でも作れるし、昨日の夜仕込んでたってわけ」
「ありがとうッス! めっちゃ嬉しいッス!」
そうして朝ご飯をモリモリ食べ、太一は綴・十座・天馬・九門の葉星組と共に意気揚々と出掛けていった。大学で会う友人たちも、口々にお祝いの言葉を述べてくれる。綴が食堂のおばちゃんに誕生日会のことを相談していた為、普段話さないおばちゃんたちからも声をかけられた。
学食にはみんなからのプレゼントランチに加え、ちょっと特別なデザートが用意されていた。それは——
「赤ぽよくんの立体ケーキッスか?! めっちゃ可愛い!」
驚く太一に、綴が「ある人からのプレゼントだ」と勿体ぶって言うと、不意にパシャッと写真を撮られた。
「臣クン?!」
「はい、チーズ。はは、不意に撮られることが増えたからな。太一の笑顔も撮らせてくれ」
「こんなの、笑顔になるしかないッスよ~! ありがとう、臣クン」
そうして、OBも揃ってみんなでお祝いする。本当の意味で葉星大組が揃って、太一は本当に嬉しかった。お腹も心も満たされたところで……
「太一。この後一緒に筋トレするぞ」
「天チャン! いいッスけど……なんで筋トレ?」
「いいからついてこい」
天馬にそう言われ、太一は寮まで走って帰った。そして折角着替えた一張羅を稽古着に着替え、何故か天馬と中庭で筋トレをすることになった。そこに自然と九門や丞、椋などの体育会系が加わって、何故か誕生日の午後に心地いい汗をかくことになった。中心となった天馬が止めると、タオルで汗を拭い太一に笑いかける。
「ふう……筋トレはここまでにするか。皇事務所に所属したんだ、学食で太ってられないだろ」
「天チャン……! そうッスね! 俺っち、ちゃんと皇事務所所属の俳優として頑張るッス!」
そんな二人のやり取りを見て、丞が汗を拭きながら笑う。
「七尾は最近顔つきが変わってきたんじゃないか。より一層役者の顔になった。頼もしいな」
そんな筋トレ組にタオルを差し出してくれたのは東と紬だ。
「ワンコくんも一躍有名な俳優さんだね。この前ドラマで観かけたし、これからも頑張って」
「はいッス!」
「色んな撮影でモテ要素まで学んじゃうんだろうなあ。絶対、ボクにも再現してね……!」
「むっくんありがと! 色んなモテ要素勉強してくるから、一緒に再現してモテモテになろうね」
「俺も太一くんをテレビで観ることができて嬉しいな。舞台と映像どっちの芝居も楽しんでね」
「へへ、紬さんにそう言ってもらえると、俺っちもっと頑張って楽しむッスよー!」
テンションの上がる太一を、中庭の端で優雅にティータイムしていた誉が手招きする。
「頑張るのも楽しむのも大事だが、休息も同じくらい大事だよ。さあ太一くん、一緒にティータイムをしないかい?」
「誉サン……! 実は、天チャンに筋トレメニュー見せてもらった時に、誉さんの字で書かれた『ティータイム』の時間、めっちゃ楽しみにしてたんスよー! 一杯いただくッス」
朝から続いていた賑やかな時間が一旦落ち着き、太一は再び一張羅に着替えると、ずっと二階のバルコニーから様子を見ていた幸の元を訪ねる。
「あの……幸チャン」
「なに?」
どこか緊張しているらしい太一に、幸はいつも通りの態度で首を傾げる。
「お、俺っちと一緒に、今度夜のドライブ行かないッスか……!?」
「太一と二人で夜のドライブ……?」
目を瞬かせた幸は、次の瞬間ふっと微笑んで答えた。
「まあ行くのはいいけど、夜景が綺麗なところにしてよね」
「! もちろんッス!」
全身で歓喜を表す太一に満更でもない幸は内心笑みをこぼしながら太一の耳元で囁いた。
「……太一のエスコート、楽しみにしてるから」
「!! 任せてほしいッス! 絶対絶対、幸チャンに楽しんでもらえるプランにするから」
今日どうしても取り付けたかった約束が出来て、太一は天にも昇るようだった。その気持ちのまま、夜の誕生日パーティーに突入する。晴れてお酒が飲めるようになった太一を囲んで、既に酔った秋組メンバーが普段はなかなか素直に言わない本音を太一に零す。
「太一の芝居は日々進化してるし、学ぶところも多くある。俺もお前に負けてられねぇ」
「十座サン……! 十座サンの芝居こそ、客演とかでめっちゃ磨かれてて……俺っちも負けてらんないッスよー!」
「映像も舞台もと挑戦する七尾は間違いなくカッコいい。今後も頑張れ。応援している」
「さきょ兄ぃ! さきょ兄も、この前の舞台も声優のお仕事も、どっちも篤くて真剣でカッコ良かったッスー!! 俺っちずっとずっと、さきょ兄のファンッスからね! でも負けないッスよ!」
尊敬する二人に囲まれ褒められ、照れとお酒で顔を赤くしながら太一は喜ぶ。そんな太一を心配して、莇が「あんま太一さん飲ませんなよ」と十座と左京を追い払い、水を差し出す。
「お酒、大丈夫なの?」
「あーちゃん、心配してくれてありがと。これガイさんが作ってくれた軽いカクテルだし、そんなに飲んでないから大丈夫ッスよ」
「その割には顔赤いけど」
「これはその……へへ、十座サンとさきょ兄と……他にもみんなにいっぱい褒められて、ちょっと照れちゃっただけッス」
「ふうん……」
莇は納得しないながらも、黙って太一の隣に座って、炭酸を飲みながらぼそりと言った。
「太一さんとランウェイ歩いた時思ったんだけど、俺やっぱ太一さんの芝居好きだわ」
「あーちゃん……!」
微かに赤くなった莇の頬に、太一は嬉しくなって抱き着く。
「わっ?! 何すんだ太一さん! やっぱ酔ってるだろ!?」
「酔ってないッスよー! あーちゃんが可愛いこと言うからッスー!」
「うるせえ、くっつくな!」
わあわあと騒ぎながら、太一は心から笑った。
「最高の誕生日が毎年更新されてくッス! これも俺っちを想ってくれる皆がいるからッスね」【終】
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【愛され太一/太一BD2025】皆がいるから
初公開日: 2025年11月15日
最終更新日: 2025年10月11日
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