2025年3月29日(土)
おはようございます。いつもは平日しか働いていないのだけれど、〆切が近いので、今日は仕事デーにしています。この後のお休みはしっかり取る予定。書くよ~。
今日は、久しぶりに読んだ本の紹介をしたいと思います。久しぶりだね、こういうの。昔は一日一冊読むのとかやってたんだけどなあ。
でも不思議なもんで、一日一冊読むときには「一日一冊単位で読める本」しか読めない。今月読んだのは6冊なんだけど、一日一冊のときには読めなかった本が結構ありました。そういう違いを感じたね。
それじゃ、さっそく。
今さらですけれど、ネタバレはガンガンしていく方針なので、踏みたくない方は読まないことをおすすめします。
書こうと思っているのは以下の本の話です。
・齋藤塔子『傷の声 絡まった糸をほどこうとした人の物語』
齋藤塔子『傷の声 絡まった糸をほどこうとした人の物語』を読んだ
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3月の半ばに買って、一気に読み切ってしまった。ヘビーな本。
わたしは本を買う時に、著者の略歴を調べてから踏み込むことが多いです。新刊であれば特に。その人の過去の興味関心分野が多少なりとも反映されていることが多いし、どのような勉強をしてきた人なのか、どの立場にいた人なのかを理解してから読むと読書がスムーズになると思うので、必ずそうしています。
が、この「齋藤塔子」さんという方は、調べても調べても『傷の声』の本の情報しか出てこない。しかもこれ、新刊なんですよ。だから、本にまつわるごく新しい情報しか出てこない。
その現象がとても不思議でしたけど、わたしの信頼している精神科医・松本俊彦先生が推薦文を書いていたのと、ほかに今月読んだ本の著者でもある心理士・伊藤絵美さんが読まれていたということもあって、思い切って手に取ってみました。
それでね、届いて表紙と裏表紙を見て、分かったんですよ。
この著者の齋藤塔子さんは、この本を書かれたすぐ後に亡くなられているんです。この方が書かれた、最初で最後の本だったというわけです。しかも享年26歳。そりゃあ、略歴も何もない。「まだこれから」と言われることの多い歳ですから。
内容にも踏み込みます。
松本俊彦先生の推薦文にあるとおり、これは「自傷に関する最高水準の教科書であり、同時に、精神医療サバイバーが命懸けで綴った挑戦状」、それはそのとおりだと思います。
だけど、字面通り「教科書」だと思って読んだら驚くんじゃないかしら。特にこの「シリーズ ケアをひらく」を読んだことがない人たちは面食らうかもしれない。中身はほとんどエッセイだからね。
だけど、学ぶことが多すぎる本という意味で、これは「教科書」であると、わたしも思います。
著者の齋藤塔子さんは、1999年生まれ。幼少期から不眠に悩み、高校生のときにはうつ状態になります。本文から読み取れるのは、激しい家庭内不和があったこと。教育虐待を受けていた(と思われる)兄を見て塾に通わせてもらえないながらも必死に勉強し、ストレートで東大へ。大学時代は酒を知ったこともあって、何度も精神科への入退院を繰り返すようになります。2020年(と書かれていたと思う)に入院した際に身体拘束を受け、その経験を雑誌「精神看護」に寄稿。それが今回の書籍化へと繋がったのでしょう。
彼女の診断名は「複雑性PTSD」。病人として扱われると、その人間は「拘束していい人」、「人権のない存在」となる。こうしてわたしが書くとあまりにも薄っぺらい―― 塔子さんの書いているそれを経験していないから、かな。
彼女の人生は、ずっと「人権」を探して彷徨っていたのだと思います。自分よりもまず母、自分よりもまず父。ふたりの機嫌を損ねないように、小さく縮こまって勉強を頑張っていた「とうこちゃん」の姿が見えるようです。
そして、大きくなり、結婚して「齋藤塔子」となった塔子さんは、両親の協議離婚をきっかけに自分のルーツを探し始めます。母、兄へと長時間インタビューをし、父にもメールを送るのです。
そのなんたる苦しさよ。わたしも――そう書いたら塔子さんに怒られてしまうかもしれない――両親のもとで苦しい思いをして育ってきて、それをまだ引きずっているところがあります。母とは一人暮らしを始めた8年前から会っていないし、父とも1月に葬式で会った以外は会っていない。母は着信拒否/LINEもブロックしているし、父からの連絡も葬式関連のそれ以外はスルーしています。わたしにはつい一昨年そうだと分かった異父兄弟がおり、彼とはもう何年も会えていません。20年、同じ家に暮らしてきたのに。
というわけだから、境遇は違えど、難しい家に育ったという点で、塔子さんの苦しみがほんの少しだけ分かる気がするのです。
一四歳未満だと人を殺しても刑事責任が問われないことを知っていたので、一四歳になる前に家族を殺しておこうかとずっと迷っていた。(p.95) 
ここ、本当に同意です。わたしも全く同じことを迷っていて、少年院のご飯を調べたりして検討してました。 そしてわたしも結局塔子さんと同じように、なあなあにしてその機会を逸してしまった・・・・・・・。大人になってから、母に対して「あの頃、あんな思いを子どもたちにさせるくらいなら、さっさと離婚して生活保護を受けてくれ。子どもたちは養護施設に送ったっていいんだから」と思い返したのも、全く同じ。わたしもそのほうがよほど元気な生活を送れていたんじゃないかと思っています、それは今も。
そして、子どもたちが巣立ってから、スッと別居して離婚に踏み込んだのも、うちと全く同じ。なんで子どもがいるときにそれをやってくれなかったんだろうね? 本当にね。
というわけで、わたしは読みながら自分の成育歴とあまりに被るところがあるのに驚かずにはいられなかったし、だからこそ「塔子さん」がここにいたことを今知って、もう亡くなっておられるのを今知って、すごくすごく悲しかった。そして、憧憬の意もあるのです。彼女が死んだ26歳は、わたしもちょうど親が離婚しようとしていて(!)、ものすごくつらい時期だった。その時にこれだけの文量のものを書き出せて、本にできたのは、本当にすごいことだと思うのです。
「塔子さん」と一回、会ってみたかったなあ。
そして、大人になった「塔子さん」の書くものも、もっと読んでみたかった。
看護師として働かれ、看護についても病理についても当事者の心理についても深く理解をしている彼女だからこそ、書けるもの、見えるものがあったでしょう。読みながらも読み終えても、悔やむばかりです。
もうひとつ、これは「わたし」だから書ける感想をひとつ書きます。
ちょっとだけ、塔子さんが同性の恋人を作っていた話が触れられます。そのあと彼女は大学時代からの付き合いの男性をパートナーとし、結婚され「齋藤塔子」になられるわけです。『傷の声』は彼女が「〇〇塔子(旧姓)」であったときには書けなかった、そりゃそうです、原家族と成育歴の話ですから。だから、彼女は新しい名「齋藤塔子」としてこの本を書きました。
同性の恋人だったら、この救い方はしてあげられないのよな、日本では。そんなことをやっぱり、考えざるを得ませんでした。
また、彼女は最後、弁護士を挟んで離婚協議をしている両親のところへ赴き「父がしていたことはDVだと思います」と述べます。それがきっかけとなり、結果的に母が勝つ形となって離婚が進んだそうです。それをしたきっかけは、父と兄がマチズモのスクラムを組んでいるように見えたから、とのこと。
セクシャリティやフェミニズムへの視座も育っていた彼女にこれから先見渡せるものって、どれだけあったんだろう、やっぱりそう考えてしまいます。その疑問は持っていても、自分の名前で書ける人は少ない。でも、だからこそ、その「重い石」が彼女にのしかかっていたのかな。
人と人との境界線が「点線」である彼女。いろんなことを考え、行き抜き、書いてきた彼女。
この本からは読み取れない面白いところもいっぱいあったでしょう。
その「ひとりの人間」の重さを痛感した、すばらしい読書になりました。

書いたねえ。想定していたよりもかなりのボリュームになったので、ちゃんとnoteで書きたいですね。
清書したらnoteに投稿しようと思います。
他にも以下の感想を書こうと思っていたんですが、書けませんでした。😨ガーン
・伊藤絵美『自分にやさしくする生き方』
・渡辺範雄『自分でできる「不眠」克服ワークブック』
・岡島義/井上雄一『薬を手放し、再発を防ぐ 認知行動療法で改善する不眠症』
・水谷緑『被害者姫 彼女は受動的攻撃をしている』
・K.M.ワイランド『アウトラインから書く小説再入門 なぜ、自由に書いたら行き詰まるのか?』
上記の感想は、月報で触れられたら触れようかな。
それじゃあ、今日はこのあたりで。
読んでくださった方々、どうもありがとうございました!
『傷の声』、とても刺激的な本ですが、途中で読むのを止めるのはおすすめしません。
ひとつの糸が絡まっている様子をちゃんと見届けてあげるのが、この本の読者のつとめだと思います。
みなさんの今日の一日が素敵なものになりますよう。
またね。
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2025/03/29 田村真夏のフリーライティング
初公開日: 2025年03月29日
最終更新日: 2025年03月29日
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内容:齋藤塔子『傷の声 絡まった糸をほどこうとした人の物語』を読んだ