ゴーゴンの多重装甲は、ネグザルツの太陽剣に対して重ね合わせでの防御が間に合わなかったのではない。複数の装甲を組み合わせ、剣閃に対して正面から防御するのではなくその軌道をずらすことで、接触による攻撃回避(・・・・・・・・・)を行ったのだ。
 絶大な威力を誇る大太陽剣ですら、「受け流し」と呼ばれるこの技法の前には完全な「効き」を失い、十全なダメージを与えることができない。加えて聖鎧との接続を解除した今のネグザルツは、単純な火力の上ではゴーゴンの半分にも満たない。このままでは有効なダメージを与えられず、火力で押し切られてしまう。
 圧倒的な火力と防御力を誇るゴーゴンは、その場に鎮座したまま回避すらせずに空間を押しつぶすかのような弾幕を放ってくる。かと思えば、その弾幕の隙間を縫って回避機動を行うネグザルツの未来位置を的確に予測して穴を穿つような光撃を放ってくる。遥かに小型であるネグザルツの優位性である機動力をも封じ込める戦術。
 その戦術が、ネグザルツに向けられる殺気が、容赦なく狙い撃ちしてくる光撃が、雄弁に語っている。
 ――ここで果てるようなら、この先に行く資格はない。
 ならば、乗り越えるしかない。この強大な試練を。
 ゴーゴンの装甲が大きく展開し、その全長と同様の弾幕が放たれた。視界のほとんどを制圧するその弾幕は遅延弾だ。単体もしくは少数なら高速で飛来する光弾に比べて回避は容易だが、これだけの量が同時に放たれれば、それはもはや巨大な壁が押し寄せてきているも同然だ。回避も、防御も意味を成さない。
 故に――ネグザルツは第三の選択肢を選んだ。
 大太陽剣、顕現(アクティベート)。
 文字通り身の裡(うち)から灼かれるかの如き苦痛(アラート)を意識の埒外へ(キャンセル)。太陽剣で迫る弾幕をかき消す。かき消された弾幕の向こうに、ゴーゴンの巨体が露出した。しかし、間断なく放たれる弾幕は再びその巨体を覆い隠そうとする。
 瞬間、ネグザルツは大太陽剣を展開したまま超加速。機肺(ラング)が過負荷に軋みを上げるのにも構わず、弾幕に空いた穴に飛び込んだ。
 その時にはすでに、ゴーゴンもネグザルツの意図を読んでいた。攻撃よりも防御を選択、多重装甲をスライドさせ、ネグザルツの構える太陽剣の切っ先を――
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