悪夢を見たわけでもなく目が覚めて、少ししてその理由に気付いた。
 開け放しにした東側の窓のすぐそばに、ちかちかと星が浮いている。本当に星だと思ったわけではないが、火ではない。ゆっくりとやや不規則に揺らめく様は、虫のようでもなかった。
「あ」
 窓に近づくと、ばつの悪そうな声がした。
 見ると、螢火をまとわせたアベリオンが、こちらと一枚隔てた壁に身を預けるように立っている。
「……起こした?」
 早朝というにもまだ早い。格好も寝る前に見かけたのと大差なく、これと定めて外に出たようには見えなかった。
「いや別に、……何してんだよ」
 そこまで気になっていたわけでもなかったが、窓に片肘付いてそう言うと、しばらく間があった。
「……眠れなくて?」
「こっちに聞くやつがあるか」
「うーん……」
 要領を得ない様子を尻目に、シーフォンはアベリオンの周りで揺れる……もうあまり揺れず、きもち光量も弱めつつある螢火を見るともなく見た。
 探索中のアベリオンが自分の顔ほどの高さを照らすところは、あまり見たことがなかった。杖先やランタンに仕込んでいたこともあるが、本当に人目を憚らぬとき、足元に転がした魔法の灯りを、玉遊びのように行く先へ転がしていたのを覚えている。なんだか可笑しく思っていたのだが、シーフォンが人工精霊を随行させる様を真似たのだと打ち明けるように言われたのは、いつだったか。
 ……とにかくそんな風だから、窓から見えるような位置にあった灯りは、多分家の外を見るためのものではないのだろう。シーフォンも自分の寝床からそれが見えたということを、なんとなく意識して、逆もしかりだろうと考え及びはした。
(……何してんだ)
 そうして出てくるのは、言葉にしたよりも一回り呆れが強くなった感情だ。
 
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