この人のことを好きだと思ってたけど、本当にそうなのだろうか。
ずっと陰で見ていたあこがれの人、キングさん。漆黒の翼、黒いスーツ、轟々とうなる背中の炎。そして、顔をすっぽり覆っている黒いマスク。私が知っているのはそんな彼だった。
だから、初めてキングさんの素顔を拝んだ時、突然現れた知らない人に押し倒されて肝が冷えた。
白い髪の毛、褐色の肌、じとりとこちらを見る切れ長の瞳。厚ぼったい唇が私のそれに噛みついた時、ずっと願っていた瞬間だったのにどうしてか怖かった。
口づけを交わしながら目を閉じる。厚い唇がしばらく私の唇を食み、やがて離れていった後も目が開けられなかった。
「おい、こっちを見ろ」
降ってきた声だけは、私の知るあの人の物で。
「嫌か?」
そっとまぶたを開ける。こちらを慮るような声色だったが、目の前にいる美丈夫はどんと構えた無愛想な表情で私を見下ろしていた。その尊大な態度が、マスク姿のキングさんと重なって、私はなぜだか安心したのだった。
「嫌じゃありません。続き、お願いします」
そっと、彼の頬に触れる。マスクとは違う、温かくて柔らかな人肌に触れ、そっと輪郭をなぞる。
キングさんはにやりと笑って私の手を取ると、もう一度、静かにキスをしてくれた。
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