夢主がないていた
本を読んで変な妄想をして泣いていた
はあ……
めんどくさいけどなぐさめる
^^になる夢主、単純だなぁ…かわいいな…
おわり
「キングさん、いなくならないでっ!」
「はぁ!?」
出会い頭にそう言って泣きついてきた女を見下ろし、キングは思わず素っ頓狂な声を上げた。
『いなくならないで』とは……?
前後の文脈もなく、考えたところでさっぱりわからない。
とりあえず、ひぐっ……! うぐっ……!としゃくり上げている女の頭をなでてやった。女が泣いた時なぐさめる手段としてよく用いる手だった。大抵はそれで落ち着くのだが、今回はいつもと違うらしくなかなか泣き止まない。
キングは大きなため息を吐きそうになったのをなんとか飲み込んで、なるべくいつも通りの声色で言った。
「何があった? 泣いてる訳を話せ」
女が泣きながら言うことをまとめるとこうだ。
今ウェイターズの間で流行っている恋愛小説がある。そのタイトルを『流れ星の落ちる先に』と言う。航海の最中に生き別れになった男女が流れ星に願いを送り、海の果てで再会するというドラマチックな筋書きだ。
「なんでまた本なんか……そういうの興味ねェだろ」
「と、友達が、貸してくれて……」
「読んだのか。それで?」
評判通り、それはもう感動的な話だったらしい。百ページ余りの物語を一気に読み終えて、運命の恋に涙した。そこまではなんとなくキングにも理解できた。だが、それだけでここまでひどい泣き方をするだろうか。
先を言うよう促して、彼女の突拍子もない言葉に度肝を抜かれる。
女はこの世の終わりのような悲痛な声色で言った。
「この本みたいにキングさんと離れ離れになっちゃったらどうしよう!」
「はぁ……なるほど……」
どうやったら思考がそこまで飛躍するんだ。全く理解できない。
キングは女に聞いた物語のあらすじを思い出しながら言った。
「でも、離れ離れになったとして、いずれ再会できるんなら良いじゃねェか」
「そ、それはっ……本の話で……!」
そこは物語と現実の区別がついてるのかよ。めんどくせぇ……。
キングの胸の内はつゆ知らず、女はキングに抱きついたまま、ぼそぼそと話す。
「キングさん……少しも離れたくない……ずっとそばにいてほしい……」
この女の自分への執着は目を見張る物がある。このように面倒くさい時もあるが、そういうところが愛しくてたまらない。
キングは女の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「何勝手に離れようとしてんだ。離れないようにしがみついとけ」
女は泣きはらした赤い目でそっとキングを見上げた。
「おれも絶対に離さねェ」
みるみるうちに女の表情が変わる。さっきまで物憂く泣いていたのは何だったのか、女はにんまりとほほ笑みキングを見つめた。
「わかったか?」
「はい!」
女がぎゅうと抱きつく力を強めたので、キングも彼女の背をそっと抱いた。
なんとか泣き止んで良かった……今まで何度も泣かせてきたが、意図せず泣かれると少し困る。それにしても、くだらねェもん見せやがって。全部燃やしてやる……。
とキングの逆鱗に触れたので、件の本はすべて回収され燃やされて、ある意味伝説になった。
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