首を絞められる。抵抗したいのになぜだか力が入りきらず、必死に胸のあたりを掻くばかり。
あの人の、あの人たちが鬼のような形相で迫ってくる。
真っ暗な目の奥に怒りが揺れ、殺意を隠しきれずに私の喉を潰そうと力を込めていた。
あなたたちがそんなに怒るのは見当違いだろう。
死を覚悟して心臓が必死に脈打つ中でも、どこか冷静にそう思った。
自業自得、自業自得だよ。自分たちの行いでそうなったんじゃない。
私は悪くない。だってああしなきゃ、もっと早くに殺されていた。私は悪くない、だから二度とその顔を見せないで。お願いだから許してください。
次の瞬間、突然口から空気を吸い込むことができた。
胸のあたりを強く掻き毟るように押さえて浅い呼吸を繰り返し、涙の滲んだ目を開ける。
すぐに胃の内容物が逆流してくる感覚に襲われ、両手で口を押えて体を横向きにした。
せりあがってくるものを抑えようと、カラカラの喉は空虚を何度も飲みこんだ。
私、美唯は薄暗い部屋に一人でいた。
それもそのはず、昨日は仕事を終えて帰ってくると、この部屋で一人倒れ込むようにして眠ったのだ。
疲れている日はもちろん、楽しいことがあった日も決まってあの夢を見る。
美唯を見当違いに憎んだあの家族が、恐ろしい顔をして美唯を殺しに来る夢だ。
直接見たわけじゃないのに、あの人たちの怒りで醜く歪んだ無責任な表情が頭を離れない。
殺される。
このままだといつか、近いうちにきっと殺される。
縋るものがない美唯は、両手で顔面を剥がすように力を込めて覆った。
顔と手のひらの間にできた僅かな隙間を涙が伝う。
殺さなきゃ。
あの人たちを殺さなきゃ。
カット
Latest / 16:09
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
豚を殺したい 序章
初公開日: 2024年08月29日
最終更新日: 2024年08月29日
ブックマーク
スキ!
コメント
前回序章のつもりで書いたものなんか違いそうで…改めて序章を書きます。あれは序章の後に入れ込みます。