さて、例大祭新刊レビューもあと3冊となりましたが、ここでコミティア新刊も入手したのでさっそく書いていきます。まあ7月中には読んだ同人誌のレビューは全部終わるだろう……。
・おうちの魔法少女②、③(北国もやし製造所)
 「あたいとげんそーきょー」シリーズで有名なサークルさんのオリジナル魔法少女マンガ。コミティア新刊は③ですが②もこのタイミングで入手したのでここでレビューします。
 ②、一家の最年少の小学生にして魔法少女を目指すしろのお話。こないだ書いた「あたいとげんそーきょー」シリーズの感想でも書きましたが、このサークルさんは子供の言動を描くのが本当にうまいんですよね。今回のしろの魔法少女に憧れて家のお手伝い頑張ったり、着せ替え人形にされたりといった様子が、実に「可愛がられてる末っ子」といった感じでたいへんかわいらしい。
 特にお手製の魔法少女コスをもらって大喜びしてるのがまたかわいい。こんなかわいい妹がいたらユーラシア大陸すら買い与えてしまう。
 ……しかし、その理由がただ単にもも姉くろ姉と同じように魔法少女になりたいからというだけでなく「よその子って思われるの嫌なんだもん」なのが……。
 ①でも示唆されている通り、本作の三人は名字が全員違うので血のつながった姉妹ではありません。そして彼女らは、この段階ではまだ詳細ははっきりしないもののそれぞれに事情があって元の家族からは距離をおいている様子が伺えます。
 この匂わせ方がうまい。こういうのって直接的に描くとただの説明になってしまったり白けてしまったりするものですが、本作はメインストーリーの邪魔にならないようにさりげなーく描写されています。これは演出としてうまいだけでなく、あえて表に出さない・キャラに説明させないことで、そういった事情がそれぞれのキャラの心の奥底に沈んでいることを示しているとも感じました。
 特にしろの「よその子って思われるの嫌なんだもん」のあとに、夕日が沈む公園から見知らぬ嫌子が一緒に帰っていく様子を誰が見ているともない感じで入れてるのがいい。なんの説明がなくても、これがしろが憧れているもの(=失った、あるいは得られなかったもの)であることがダイレクトに理解できます。省略の美ですよ。
 後半は一家の長女にして国家機関所属のプロ魔法少女であるくろが主役。新キャラも登場だ!
 本作はタイトル通りの魔法少女ものなんですが、「魔法少女」が社会的に認知されて職業になっているという世界観です。で、職業であるならそこには必然的に格差が生じるわけで。
 こういう設定だと凡百の発想ではランキングがどうたら組織がどうたらという方向性に進んでしまうと思うんですが、本作の魔法少女観では、くろのような犯罪への対処など危険行為をも行うプロ、もものようなご近所トラブルを解決する程度の民間業者という立場の違いによる明確な差異が描かれています。あくまで彼女らにカメラを据えて、「魔法少女が職業化した社会の中で暮らす三人」からピントがずれない。とともに、このプロアマの差異は絵柄やそこから感じられる柔らかな雰囲気とは裏腹に、ここは明らかに本作におけるシビアなラインとして設定されているのを感じます。
 そして、「大いなる力には大いなる責任が伴う」ですよ。無理をして怪我をしてしまったしろを諌めるくろ姉。回想シーンからも察せるとおり、くろ姉もまた過去に力に傾倒するあまり失敗した経験があるんでしょう。
 もも姉もくろ姉も同じようにしろをかわいがって家族の一員として見ていますが、そのスタンスの違いが感じ取れるエピソードでした。
 そして③、だんだんとキャラの掘り下げが進んでいっている感じです。
 前半、ももくろしろのそれぞれの生活。前述の通り本作には三人にカメラが据えられていますが、その関係性は三人の間だけで閉じてはいません。
 なんだかんだで小学校の友だちと仲良くやっているしろ、そしてたまの休息にデートするももとくろ。
 ももがこぼした「私たちが魔法少女じゃなく普通の女の子として出会っていたら」という言葉に対するくろの返答が実にいい。互いに互いを肯定し合える仲なんですよね。
 ただ、要所要所の描写を見るに、ももが深い欠落を抱えているであろうことは明らか。「歌のレッスンを受けていた」発言や、②での実家と絶縁しているらしい発言からするといいとこのお嬢様だったりするんでしょうかね。
 また本作は一貫してフルカラーなんですが、だからこそ1日の終わりであり「ホームへ帰り道」である夕焼けが実に映える!
 「あたいとげんそーきょー」シリーズの感想でもさんざん言ってますが、フルカラーであるという点をさまざまなところに活かしているのが本サークルさんの大きな魅力だと思います。
 あと猫背でプニキュアを熱唱するくろ好き。
 後半、②で顔出ししてきた新キャラ、くろの後輩の最年少プロ魔法少女あかねが本格参戦。
 こういうトゲトゲしたキャラはどっかしらに可愛げがないとヘイトだけが偏ってしまうと思うんですが、のっけからももに撫でくり回されたり嫉妬しまくってたりであまりにも可愛すぎる。永久にこの調子で嫉妬してて欲しい。
 そして今回、くろの過去の一端、そしてしろやももとの出会いが少しだけ明かされます。
 今回のキーである「あかねの理想としてのくろ」と「本当のくろ」のギャップはここでこそ効いてると思います。そして、間接的に落ち込んでいた状態の後押しして支えてくれたというももの「魔法」がこの三人を今もつなげているであろうことが察せられます。
 劇中の描写からして魔法少女としての能力はくろが圧倒的に高いと思われますが、ももはなんというか「関わるのが上手い」んだなあと感じました。コミュ強とは違う。人の心のやわらかい部分をいち早く捉えて、そこにそっと触れることができるという。
 しかしそうなると、でもじゃあもも本人は……?という話になるんですよね。今はしろとくろといっしょに暮らしていて「私の家はここ以外ない」と断言するほどこの暮らしを自分のホームとしているももですが、それ以前は……?
 このあたり、今後の掘り下げが楽しみです。
 今日はここまで。
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コミティア156新刊レビュー「おうちの魔法少女」②、③
初公開日: 2026年07月18日
最終更新日: 2026年07月18日
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